1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

ニホンコウノトリの保全に貢献 大阪・天王寺動物園の取り組み 園長は獣医さん

産経ニュース / 2024年9月28日 13時0分

兵庫県豊岡市で育つコウノトリ(兵庫県立コウノトリの郷公園提供)

厳しい残暑が続きましたが、ようやく秋風が涼しくなってきました。

今回は、ニホンコウノトリのお話をしたいと思います。以前シュバシコウを紹介した際に、ヨーロッパのコウノトリであるこの鳥の繁殖に成功したことがニホンコウノトリの繁殖に生かされたと記しました。

天王寺動物園では、シュバシコウが飛ぶことができる大きなケージで飛翔(ひしょう)運動をさせ、冷凍のアジ、オキアミなどのほか、生きたドジョウを与えることで繁殖に成功しました。この取り組みが、後に実際のコウノトリの繁殖に生かされてきました。

大正14年9月に1羽のニホンコウノトリの飼育を開始し5年後に死亡、その後しばらくは飼育の記録がなく、昭和53、58、62年と上海動物園から3回ペアが入園しています。自然界では昭和46年には国内で絶滅してしまい、絶滅する前に「特別天然記念物こうのとり飼育場」(兵庫県豊岡市)やいくつかの動物園で生息域外繁殖が試みられましたが、日本の個体群での繁殖は成功しませんでした。

しかし63年、東京都多摩動物公園で、中国由来のコウノトリを使った繁殖に成功し、その後「こうのとり飼育場」や他の動物園でも繁殖に成功するようになりました。当園でも62年、上海動物園から寄贈された雄の『コウ』と平成3年、ハルピン動物園生れの雌の『リコ』を多摩動物公園から譲り受けてペアリングに成功。5年から合計10回も繁殖に成功し、雄16羽、雌9羽、不明2羽のひなが産まれ、他の施設で繁殖に供されてきました。

飼育下繁殖個体数が増加したため、17年には域内(野外)個体群の復活を目的に、兵庫県立コウノトリの郷公園により再導入(放鳥)が開始されました。19年には野外で初めて繁殖が確認され、国内の野外個体数は徐々に増加しています。

25年、コウノトリの保全における全国的な課題を共有し連携して課題解決にあたることを目的に、兵庫県立コウノトリの郷公園、東京都多摩動物公園、日本動物園水族館協会の生物多様性委員会が中心となり「コウノトリの個体群管理に関する機関・施設間パネル」(IPPM-OWS)が設立されました。

当園も同パネルのメンバーとして、今後もニホンコウノトリの保全に貢献をしていきたいと考えています。(天王寺動物園園長・理事兼務・獣医師 向井猛)

むかい・たけし 神奈川県藤沢市出身。北海道大大学院獣医学研究科修士課程修了後、札幌市の円山動物園で獣医や職員として勤務した。令和3年4月から天王寺動物園園長。漫画『動物のお医者さん』に「M山動物園の向田獣医」として登場した。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください