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「キーン」とならないかき氷や味わい深いコーヒー 観光客潤す「塩釜の冷泉」 西日本の水

産経ニュース / 2024年8月18日 10時0分

塩釜の冷泉の水を凍らせてつくったかき氷は大人気だ

岡山県北部、真庭市の「蒜山(ひるぜん)高原」エリアにある名水百選の一つ「塩釜の冷泉」。年間を通して水温が11度前後の冷たさを保ち、毎秒300リットルと湧水量が豊富。冷泉の水で作ったかき氷、水くみ場など、涼を求める観光客らでにぎわう。

総選挙2位

塩釜の冷泉は昭和60年、環境省により名水百選に選定された。平成27年3月に選定30周年を記念し、191市町村の名水200カ所を対象に実施された国民投票「名水百選選抜総選挙」の観光地部門で第2位に輝いた。

大山隠岐国立公園の指定地域で、中蒜山の麓に位置する「ひるぜん塩釜キャンピングヴィレッジ」のエリア内にあり、東西12メートル、南北5メートル、面積約60平方メートル、最深部1・9メートルのひょうたん形の泉だ。

同ヴィレッジの森岡裕治副支配人は「今は見られなくなったが、水底の数カ所から水が湧く際に周囲の砂を巻き上げる様子が塩釜に似ていることから命名されたという説もある」と説明する。

冷泉には蓋のない巻き貝「モノアラガイ」や、寒冷地に育つ藻類「アツシキノリ」「ネンジュノリ」などが生息し、豊かな自然に恵まれている。

岡山市から訪れた少女は水面に手を触れてはすぐに引っ込め、「冷たい、冷たい」を連発していた。

かき氷人気

茶屋「塩釜堂」は冷泉の水を使ったかき氷やコーヒーが自慢だ。店内の業務冷凍庫で円筒状の容器に入れて氷をつくる。

塩釜堂の女性スタッフは「若い男性スタッフが『食べても頭がキーンとならない』と言っていた。不純物がないので早く凍りやすい」とおいしさをアピール。「学校が夏休みに入ると忙しくなってくる。お盆には長い行列ができ、多いときは1日350杯以上売れる。木陰で涼みながらリラックスして味わってもらえたら」とPRする。

同県津山市の田中千彩(ちさ)ちゃん(4)は「冷たくておいしい」と、かき氷に夢中。父親の会社員、優寛(ゆうかん)さん(43)は「津山もとても暑かったので、涼しい場所を求めて2人で日帰りドライブで来た。20歳代の頃から仲間や1人でツーリングでよく訪れていた思い出の場所に娘を初めて連れてきた」と話した。

グランピング施設も備える同ヴィレッジでは蛇口、トイレ、シャワーなどの用水を全て冷泉でまかなっている。宿泊客は年間4千~5千人。新型コロナウイルス感染拡大の時期に密を避けられることからキャンプブームとなり客が増えた。森岡副支配人は「昔はもっと涼しくて訪れる人がすごく多かった」と話す。

生活に利用

水くみ場は冷泉から200メートルほど離れたロッジのそばにあり、ポリタンクなどで水をくむ人が引きも切らない。

同県倉敷市から高速道路を利用し片道約2時間かけて訪れていた馬生(ばしょう)泉さん(75)夫妻。50年ぐらい通っていて、今も月に1回以上訪れ、水くみ目的だけで来ることもあるという。

今回は鉄道写真旅行を兼ねて前日から泊まりがけで訪れ、帰りがけに寄った。泉さんは「お茶や炊飯などに使う。まじりけがなく味が全然違うように感じる。1回十数リットルも持ち帰っても1週間ぐらいで使い切る」と話した。

冷泉は地区住民約600世帯が生活用水として利用。塩釜奉賛会が祭事を年1回執り行い、感謝をささげている。

奉賛会の植木裕之会長(36)は「小さい頃から飲んでいて、市販のミネラルウオーターよりもおいしく感じる。大学時代に県外に住み社会人になって実家に戻ってきた。実家の水道水を飲むとなぜか落ち着く。地域外に一度出たからこそ、ありがたみが分かった」と話している。(和田基宏)

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