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高齢者の養子縁組、相続対策の一つだが注意すべきことがある 100歳時代の歩き方

産経ニュース / 2025年1月5日 9時0分

子供のいない高齢者の相続対策の一つとして「養子縁組」がある。親子関係のない人同士が法律上の親子関係になることで、扶養義務や法定相続人として相続権が生じる。一方、法定相続人を増やすことで相続税負担を減らす「節税」を狙って養子を選択するケースもある。金銭が絡むだけに、いずれもトラブルを防ぐためには、事前に関係者や家族で話し合っておく必要がある。

80代の男性は3年前、50代のおいと普通養子縁組をした。1人息子を交通事故で亡くし、妻と2人暮らしになったが、「自分が死んだ後の遺産や事業などを考えると、養子がいたほうが心強いと考えた」。今は男性が所有するマンションにおいが住み、夫婦は都内の老人ホームで暮らしている。

養子縁組には、家庭環境に恵まれない子供の利益を守るための「特別養子縁組」のほか、相続人の確保や家の存続などを目的とした「普通養子縁組」がある。普通養子縁組は実親との親子関係も継続する。冒頭の男性のように、高齢者の相続対策としての養子縁組は後者に当たる。

特別養子縁組は家庭裁判所が決定するのに対し、普通養子縁組は一定の条件以外では養親と養子の合意によって成立する。所定の養子縁組届に記入し、本人確認のできる証明書などとともに、養親もしくは養子の本籍地または所在地の市区町村役場に提出すると手続きは完了となる。

普通養子縁組の手続きは決して難しいものではないが、武内優宏弁護士は「慎重に考えてから決めたほうがいい」とアドバイスする。養子縁組の解消は簡単ではないからだ。

武内氏によると、離縁には養親と養子の合意が必要で、合意できない場合、家庭裁判所の調停手続きとなり、調停が不成立となったら離縁裁判を起こす流れとなる。訴訟で離縁が許される事由は「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」などとされており、「期待していたほど面倒を見てもらえなかった」といった理由では認められないことが多く、長期化するケースもあるという。

武内氏は「養子縁組をした後で、自分が考えていた親子像と養子の対応にギャップを感じる高齢者は少なくない。不安が生じないよう、十分に考えておくべきだ」と話す。

節税のために用いるケースも

普通養子縁組は相続人の確保が目的とされるが、節税対策としても利用されている。養子縁組で法定相続人の数を増やすことで、相続税の基礎控除額を増額するのだ。

例えば法定相続人が子供1人で相続遺産が5000万円の場合、そのままなら基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)は3600万円で、課税対象は1400万円だ。1人と養子縁組し、法定相続人が2人になれば、基礎控除額は4200万円で、課税対象は800万円と600万円減る。

相続税法上、法定相続人としてカウントできる養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までに制限されている。また、養子となった孫は相続税が2割加算される。

ただ、養子縁組によって法定相続人が増えるということは、もともとの法定相続人の相続分が減ることになる。ベンチャーサポート相続税理士法人(東京都中央区)の桑原弾税理士は「『養子縁組をしなければ、自分がもっと遺産を多くもらえたのに』と、家族間でもめるリスクがある」と話す。

相続対策の一つである生前贈与で昨年1月から、相続税の課税対象となる生前贈与加算が従来の相続3年前以降から7年前以降に延長され、節税効果が薄れたとされる。今後、養子縁組に関心が集まる可能性もある。

桑原氏は「養親となる人は、もともとの法定相続人にもしっかりと説明し、関係者すべてが納得した上で養子縁組を行えば相続トラブルを回避できる」と指摘する。(本江希望)

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