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栗は笑顔をつなげる秋の実り、シェフをも魅了する東京産 彩時記~10月・神無月

産経ニュース / 2024年10月4日 8時0分

まん丸の愛らしい形の菓子「栗好き 」

栗ご飯を炊きました-。実りの季節を迎え、時候のあいさつよろしく、メールが届いた。画像の〝おすそ分け〟付き。いい香りが漂ってきそうで、思わず笑みがこぼれる。

《栗飯の まつたき栗に めぐりあふ》(日野草城)

まつたき栗(全き栗)は、欠けのない完全な形の栗。茶碗(ちゃわん)に盛られたご飯に大きな実を見つけると、妙にうれしくて、ついほくそ笑んでしまうものだ。

丹沢、石鎚など山の名がついた品種名が多い中、「内藤栗」の愛称で、プロの料理人にもファンが多い東京産の栗がある。23区内で本格的に栗が栽培されていることを知る人は、意外と少ないのではないだろうか。

杉並区の閑静な住宅地に広がる約1・5ヘクタールの栗畑。大きな葉を揺らしながら心地よい風が吹き抜ける。生産者の内藤雅一さん(44)が、木々の間を縫うように飛ぶトンボを目で追いながら、こう教えてくれた。

「農薬を使わないので、トンボやカマキリが益虫になっています。栗の木が好むのは風通し、日当たりの良い環境。中までちゃんと光が当たるように、剪定(せんてい)管理も大切です」

枝に鈴なりになっているイガが十文字に割れて、艶やかな実が3つ、顔をのぞかせている。「笑み栗」と呼ばれるその姿に、こちらもほおが緩む。完熟したものから自然に落下する。毎朝、イガごと拾い、分厚いゴム手袋をはめて一つ一つ手でむいて実を取り出す。この作業は、暑い盛りの8月から続く。

収穫した実は、凍る寸前の零度の冷蔵庫に3週間貯蔵し、追熟させる。でんぷん質が糖に変わって、「糖度が倍くらいには上がります」(内藤さん)。

温暖化やゲリラ豪雨といった異常気象の影響で異変も。「昨年は収穫が2回でき、11月まで続きました。異常事態で木が疲れているところに今夏の猛暑で10本ほどが枯れてしまった」

でも、「栗は適応能力が高く、進化している」とも。「いい子孫を残すべく、種を作ろうとしているのでは?」

栗は木に実る「果物」に分類される。実と呼ばれ、食べている黄色っぽい部分は種で、かたい鬼皮が果肉に当たるという。

都市部で営む農業は、住民の暮らしに寄り添った配慮が不可欠。制約が多く、手間暇がかかる。だが、食べる人の顔が見えるのは何ものにも代えがたい。「おいしいと言って、幸せを感じてもらえるのが一番のやりがい。栗を通じて人と人がつながり、コミュニケーションが広がっていく実感があります」

そう語る内藤さんも、笑顔がはじけた。(榊聡美)

名産地ならではの菓子「栗好き」

西日本で最も栗の収穫量が多い熊本県。名産地ならではの栗菓子も多彩だ。

菓子メーカーの福田屋(熊本市)は地元産和栗にこだわり、「熊本和栗庵」というブランドを展開している。中でも、「栗好き」は人気ナンバーワンを誇る。

ころんとしたまん丸の形が愛らしく、口に入れるとほろりとした食感の後に栗の豊かな風味が広がる。

取れたての熊本和栗をペーストにし、砂糖と水あめだけを加えて独自の製法で栗の風味を生かし切る。「『栗そのものを食べているみたい』『栗より栗っぽい』というお声をよくいただきます」と広報担当者。

リピーターにとっては待ちに待った新栗の季節。「お菓子を通して熊本の栗のおいしさを味わっていただけたら」。6個入り、1361円。

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