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アルバイトと写真、両立に悩んだ日々 日芸のぶっ飛んだキャンパスに衝撃の連続 話の肖像画 報道カメラマン・宮嶋茂樹<12>

産経ニュース / 2024年7月12日 10時0分

大学の寮の暗室で。印画紙などの写真材料を買うためアルバイトにも明け暮れた

《期待に胸を膨らませて臨んだ大学の入学式。会場、同期生のファッション、歓迎イベント…すべてが驚きだった》

日大の入学式会場は、東京・北の丸公園の日本武道館で、確か2回に分けられていました。新入生のほとんどがスーツ姿でしたね。私は詰め襟の学生服で出ました。恐らく他に何も服がなかったんだと思います。高校は校則が厳しく外出時も詰め襟でした。だから、私服はほとんど持っていませんでした。

当時はカラー(襟)ピンがはやっていました。ピンホールシャツのカラーの穴に、カラーピンを通してネクタイの結び目を持ち上げるやつです。ほとんどの学生がつけていた印象があります。「これがファッションなんだ…」って、気後れして周囲をながめていましたね。

日本武道館も初めてですから「ここがビートルズが演奏した場所か」って。まさに「お上りさん」です。田舎から初めて来ているのだから当たり前なんですけど、完全に1人だけ浮いていました。

その後、江古田キャンパスで芸術学部の入学式がありました。歓迎イベントもあって、音楽学科の先生だったと思うんですが、詩を朗読したんです。宮沢賢治の「雨ニモマケズ」なんですけど、それがオペラ調だったんです。もう衝撃です。「とんでもないところに来た」と思いました。それ以前は受験で2回、来ただけですから。休憩時間には初めて会った級友たちに「よろしくね」と、東京弁であいさつされました。

そのとき、さらなる衝撃が。いきなりたばこを勧められたんです。「ええ~っ、たばこ吸ってんの?」って、びっくりですよ。当時は高校を卒業したら、みんな普通にたばこを吸ってました。しかも、どこで喫煙しても平気な時代でした。学内はもちろん、教室でも吸ってたり。ハイライトとかセブンスターでしたね。自分は喫煙が見つかったら「即、退学」の厳しい高校に、3月まで通っていた学生でしたから、本当に驚きでした。

芸術学部は全体的にぶっ飛んでましたね。俳優の真田広之さんや、漫画家の手塚治虫さんの息子でクリエーターの手塚眞さんがいたり。キャンパスでロケをやっていて、加山雄三さんがスケートボードに乗っているのを見たこともありました。少し前まで田舎で丸刈りにしていたヤツが、こんなことばかり目の当たりにするんですからショックですよ。

《アルバイトに明け暮れ、写真が撮れず焦りを感じたことも》

苦学生だったので入学後すぐにアルバイトを始めました。仕送りだけでは、どうしようもなくて。月3万円か5万円だったかなあ。フィルムも買えないから自分で稼ぐしかありません。

最初は池袋の高層ビル「サンシャイン60」の展望台で記念写真の撮影でした。写真関係の仕事を探していたときに、アルバイト募集のビラで見つけました。観光客を撮るんですが、全て撮り方が決まっていました。写真学科の学生じゃなくてもできたと思います。結婚式のスナップカメラマンなどもやりました。

写真関係以外では引っ越しの力仕事とか。大学が西武池袋線沿線にあったので、西武球場(現・ベルーナドーム)の中国料理店で、ウエーターをやったこともあります。制服にちょうネクタイで、すごく厳しい職場でした。

アルバイトばかりしていると、写真を撮る時間がなくなるというジレンマがありました。でも、お金がなければ印画紙もフィルムも買えません。悩んでいるうちに課題もたまって「何とかしないと」と、いつもイライラしていました。

クラブ活動をやっていた同期はたくさんいましたが、自分は一度も入ったことがありません。余裕がなくて無理でした。常に動き回っていた感じです。大学に入ってもまじめな生活を続けていました。(聞き手 芹沢伸生)

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