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全国紙は地方に行けば小新聞、それぞれ商品特性が異なる 渡辺恒雄さん(7) アーカイブ「活字文化考」

産経ニュース / 2024年12月29日 13時0分

読売新聞の渡辺恒雄社長=平成7年9月21日

――販売正常化に関連して、地方紙に言及されましたが、全国紙と地方紙との関係について、どう考えますか。

渡辺 地方紙というのはかなり寡占状態にある。全国紙が三大紙とか五大紙とかいったって、地方に行けばほんとの小新聞です。シェアが十分の一とかいった非常な小新聞ですよ。競争力が非常に弱いんです。販売店の数も少ないし。そういうところでは戦いようがないんですよね。どんどん地方紙に食われている。ある地域では地方紙がどんどん増えて、全国紙がどんどん減っているんですよ。

僕らは健全なる地方紙の存在は必要だと思うんです。ローカルニュース、地域住民の声、これを細かく報道する。愛郷心のようなものを育てる。これもたいへん結構なことですよ。東京への一極集中を打破していかなきゃいかんときに、地方分権を進めるならば、健全な地方紙の存在は必要だと思う。けれども、地方紙は地域エゴを主張する面がある。国際政治や国内政治より、その県の県議会のニュースの方がトップに置かれて、国家的な大きな問題が二面に回ってしまうというようなこともある。そういう商品特性がある。

――地方紙は商品特性として地域色を打ち出す。

渡辺 公正取引委員会は、地方紙と全国紙は競争関係でない、部分的、補完的な関係にしかないんだという認識ですよ。これは間違った認識です。

しかし、部分的、補完的ではないけれど、全国紙は全国紙、地方紙は地方紙としての特色がある。たとえば整備新幹線の問題で、「この地域の整備新幹線は第二の赤字国鉄を生むだけだから、これはフル規格の新幹線を整備すべきではない」と、われわれ全国紙はいいますね。しかし、地元の新聞は「東海道新幹線並みのフル規格で新幹線を通せ」と、主張しますよ。

それが国家的に見ていいのか悪いのか。国民の税負担も増えその地域の赤字の再生産をする、その負担はその地域あるいは地域住民および自治体に降りかかってくるかもしれないよ、ということを知ってもらわなきゃならない。そういうことを書けるのは全国紙ですよ。そのために、その地域では新聞が売れなくなることもあり得る。だけど、良識ある読者は、そういう情報も入手しなきゃいけないなと考えるでしょうね。

そういう意味で、地方紙と全国紙とは共存してしかるべきだと思う。しかし、一般的な傾向としては、いま地方紙が伸びて収益率はよくなり、全国紙は減り収益率は下がる一方だというのは事実ですよね。

――中央と地方の関係でいえば、再販制度がなくなったら、新聞社の経営が悪化して、効率の悪い山間部の戸別配達が切り捨てられる恐れが指摘されている。再販制度がなくなると、宅配はなくなっちゃうんでしょうか。

渡辺 再販がなくなっても宅配は一挙になくならないが、徐々に崩壊していきますよ。これは間違いない。

いま、小泉純一郎君(元郵政相)が郵政事業の民営化を主張しているけど、郵政省の反論は、われわれと同じようなこと言っているんだな。郵便は公共事業だから全国同一料金だというんですね。 (文化部長 小林静雄)

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