富士山登山鉄道構想の「中間報告」、専門家検討会の了承なし、県取りまとめに批判懸念も
産経ニュース / 2024年11月6日 15時25分
山梨県が推進する富士山登山鉄道構想で、先月末に公表した「中間報告」が、専門家による第三者の事業化検討会の了承を得ていなかったことが6日、分かった。検討会の協議途中の議論を基に県が「中間報告」としてまとめたという。これまで検討会による中間報告で県民の疑問に応えるとしていただけに、同構想の反対派からは県の姿勢に批判や反発が強まりそうだ。
6分間隔で1日10時間
富士山の麓と5合目を結ぶ有料道路「富士スバルライン」上に次世代型路面電車(LRT)の軌道を整備する同構想は、巨額な設備投資額に対する採算や、急勾配がある中で、LRTの実現可能性などが疑問視されたことから、専門家による「富士山登山鉄道構想事業化検討会」を昨年10月に発足し、実現可能性の根拠を協議してきた。今年3月末に中間報告を公表予定だったが、再三延期され、10月28日に県が公表した。
この中では前提条件として利用者数を年300万人とし、複線軌道の6分間隔、1日10時間運行で年間336万人の利用が可能と試算した。さらに雨天時の急勾配でも砂などで摩擦を高めれば加速できるとし、課題も一定程度解決できると判断した。長崎幸太郎知事は「いくつかの課題はあるが、LRTは実現可能」と評価した。
だが、検討会のある委員は産経新聞の取材に「(報告書に)検討会でオーサライズされていないものを含んでいる」と話す。報道向け説明会でも県側は「3月以降検討会は開いておらず、今回の報告は検討会で諮っていない」とし、検討会として課題全てを解決したわけでないことを認める。同時に勾配や急カーブなどの課題に「一定の対応で可能」とした見解は検討会の議論を基に、県が取りまとめたと明言する。
「先走ってる」批判も
同構想をめぐっては、富士山の尊厳や自然環境を傷つける懸念などから地元の富士吉田市や関係者が反対している。中間報告の公表が遅れていた7月に、富士吉田市の堀内茂市長は「技術面などで厳しい結論がでているのではないか」とし、検討会では事業化自体が難しいとみているのではないかと推察するなど、検討会が中間報告でどう評価するかに注目が集まっていた。
それだけに検討会のとりまとめでないうえに、実現可能の方向と県が断じたことに、反対派からは「県が先走っている」と批判がでそうな状況となっている。(平尾孝)
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