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住宅街殺人、無実訴え6年 49歳男に懲役16年を突き付けた「袋小路のセンサーライト」

産経ニュース / 2024年10月11日 8時0分

大阪地裁の裁判員裁判で9月、大阪府羽曳野市の路上で男性を刺殺したとして殺人罪に問われた男に、懲役16年の判決が言い渡された。直接証拠がなく、凶器すら見つかっていない事件。男は一貫して「やっていない」と無実を訴えていた。状況証拠を積み重ねた検察側に対し、地裁はその多くについて「不十分」と指摘。それでも有罪との結論を導いた根拠は、男の弁解と「センサーライト」との矛盾だった。

事件は平成30年2月17日夜に発生。韓国籍の崔喬可(さい・きょうか)さん=当時(64)=が駐車場に車を止め、近くの交際女性宅に向かう途中の路上で、背後から刃物で刺され殺害された。

裁判長、検察側立証ことごとく否定も…

それから4年後。逮捕されたのは女性宅の隣に家族4人で住んでいた山本孝被告(49)だった。事件発生と同じ時間帯に外出していたことに加え、女性宅の植木鉢を巡って隣人トラブルに発展していたという「動機」もあり、当初から捜査線上に浮上していた。

裁判期日は判決までに19回に及んだ。そして迎えた9月27日の判決。状況証拠による検察側立証に対し、山田裕文裁判長の厳しい指摘が並んだ。

「検察官の主張は基本的な部分で大きく破綻(はたん)した」

「鑑定内容の信用性の大半が否定される」

「十分な捜査がされたかには疑問が残る」

現場住宅街の出入り口は限られ、防犯カメラなどに写らずに現場にはたどり着けない▽現場周辺に止まった2台の車のドライブレコーダーに写る犯人の体形や服装が被告と合致している▽崔さんには被告との間以外にトラブルがなかった-という検察側の主張がことごとく退けられたのだ。

焦点となった2度の点灯

だが結論は有罪。地裁が〝決定的な証拠〟としたのは、被告宅から見て袋小路の出入り口側に位置する女性宅のセンサーライトだった。

判決によると、現場周辺の2台の車のドラレコには、崔さんが駐車してから現場に向かうまでの約20分間に、犯人が計3回、被告宅がある方向から現れる様子が写っていた。うち2回は直前にライトが点灯。地裁は犯人の動きについて、駐車場を見渡せる袋小路突き当たりの被告宅付近で崔さんを監視し、その後現場に移動して殺害したと認定した。

一方で被告は裁判で当時の状況を次のように証言した。

「車の音で隣人の帰宅を察知し、嫌がらせを警戒して玄関前で見張りを始めた。崔さんの車のブレーキランプが駐車場内で点灯したのを見たが、降車しないので体感として5分ほどで家の中に戻った。その間に犯人の姿は見なかった」

ドラレコ映像から、女性宅のセンサーライトの1回目の点灯は、崔さんのブレーキランプの点灯から約1分40秒後だったことが裏付けられている。

これを踏まえ、被告の供述が真実だと仮定すると、被告の「見張り」中に、「犯人」は隠れる場所が乏しい袋小路周辺にいて、何らかの動作で隣家のセンサーライトも反応したのに、被告は不審人物に全く気付かなかったことになる。さらにセンサーライトは17分足らずで再度点灯したため、「犯人」は被告に見つかるリスクを考慮せずに再び袋小路に現れたことになる。

地裁は「このような想定はあまりに不自然不合理で現実的にあり得ないと言わざるを得ない」と言及。隣人トラブルによって住宅ローンが残る中で転居の検討を余儀なくされていたことも考慮し、「被告を犯人とみるほかない」と結論付けた。

有罪認定の「穴」指摘も

弁護側は判決を不服として控訴する方針だが、元裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授(刑事法)は、控訴審でもセンサーライトが争点になるとみる。

ライトの2度目の点灯も事件発生前のため、点灯はいずれも「被告が袋小路から出た際」となり、犯行後を含めて被告が自宅に戻ったことを示す点灯は一度もなかったことになる。

地裁は「駆け足であれば点灯しないこともある」と説明したが、水野氏は「ドラレコとライトを有罪の決定的な証拠とする以上、被告を犯人とする動きとライトの点灯が完全に合致しているわけではないという点は相当の『穴』になる」と指摘する。(西山瑞穂)

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