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高さ40mから「SNS心中」も奇跡の生還 26歳女が法廷で語った恨みと生かされた意味

産経ニュース / 2024年11月7日 8時0分

女は元交際相手を刃物で刺し、その後、市営住宅の14階から飛び降り自殺を図った。それも1人ではなく、X(旧ツイッター)で出会ったばかりの女性とともに。地上からの高さは約40メートル。相手は死亡したが、女は奇跡的に生き残った。一時入院したが回復後に殺人未遂と自殺幇助(ほうじょ)罪などで起訴され、10~11月、大阪地裁の法廷に立った。裁判長が「まだ続くのか」と牽制(けんせい)するほど長々と語ったのは、元交際相手への恨み節と、生かされた意味だった-。

わずか半日で

10月21日に開かれた裁判員裁判の初公判。被告の女(26)は介添えや車椅子を必要とせず、自らの足で法廷に姿を見せた。

罪状認否では「間違いありません」とはっきりとした口調で述べた。左ひじと右足首に骨折した後遺症があるというが、一見しただけでは約1年前に14階もの高さから飛び降りた影響を感じさせなかった。

《本気で一緒に死んでくれる人いないかな》

令和5年8月1日、被告はXにこう投稿した。

《1人じゃ飛び降りるの怖くて。もしよかったら一緒にどうですか》

すぐさま面識のない20代の女性から反応があった。

同月5日午後7時25分ごろ、被告はまず、破局した元交際相手を背後から刃物で襲い、全治約2週間のけがをさせた上で逃走した。向かったホテルで合流したのが4日前にXでやりとりした女性だった。

「(元交際相手への)愛情が憎しみに変わり、殺して自分も死のう」と考えた。1人で死ぬことに心細さを覚え、元交際相手を襲った後に心中する相手を事前にXで募っていたのだ。

「確実に死ねる」と飛び降りる場所も被告が決め、翌6日未明に市営住宅へ移動した。現場で相手の女性は体調不良を訴えたという。生きることへの執着とも考えられ、引き返す最後の機会になり得たが、被告は自販機で買った水を与え、午前3時半過ぎに2人で14階から身を投げた。

5分以上の持論

一連の出来事には〝空白の時間帯〟もあった。殺人未遂事件を起こした後、ともに自殺を図った女性とホテルで過ごしたのは数時間にわたる。市営住宅へ向かってから飛び降りるまでも約3時間かかっている。

この間、何があったのか。被告人質問で検察側が尋問したが、被告はXへの投稿も含めて、自殺幇助に関することは「覚えていない」と繰り返した。検察側は論告で「女性は自殺の決心ができていなかったのに、決意を固めさせた。巻き込んだ経緯はあまりに身勝手」と指弾した。

11月1日の判決公判。加藤陽裁判長は、殺人未遂事件の計画性を認め、「危険で悪質な行為」と非難。自殺幇助に関しても「主体的かつ積極的に本件犯行に関わった」と指摘し、「被告の反省が十分に深まっているとみることはできない」として、懲役5年6月(求刑懲役7年)を言い渡した。

判決に先立つ10月23日の論告求刑公判。最終意見陳述で被告は5分以上にわたって自身の思いを述べた。その大半が元交際相手への不満。互いにやめようと約束したマッチングアプリを元交際相手がスマートフォンに入れ直したことなどへの恨みを、取りとめもなく語った。最終意見陳述は一般的には一言や二言で終わることも多いだけに、裁判長が途中で「まだ続くのか」と確認する場面もあった。

被告人質問の中で、事件を担当した警察官が親身になってくれたとして「生かされたことに意味があると考えるようになり、死にたい気持ちはなくなった」と心境の変化を語っていた被告。最終意見陳述の中でも「犯した罪を償い、更生していきたい」とも述べたが、自殺に巻き込んだ女性への謝罪を口にすることはなかった。(倉持亮)

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