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「バカにしている」…松山城土砂崩れ、「顔の見えない」松山市の対応に高まる被災者の不満

産経ニュース / 2025年2月9日 8時0分

「準備が整い次第、住民説明会を開催したい」との考えを示す松山市の野志克仁市長(前川康二撮影)

松山市が管理する松山城城山で昨年7月に発生した土砂崩れを巡り、市の対応に被災者らの不満が高まっている。原因究明や復旧費用などに関する説明会を求める被災者らに対し、市は愛媛県が設置した有識者らによる技術検討委員会の結果が出ていないことを理由に、開催するかどうかすら明言を避け続けた。1月30日に技術検討委の最終報告が示されたことを受け、ようやく野志克仁市長も出席する説明会の開催を表明したが、時期は明言されず、被災者らが求める「顔の見える対応」には時間がかかりそうだ。

「風化させたいのだろう」

「市との対話も質問の機会もないことが問題だ。市が何を考えているのか全く分からない」

2月5日、土砂崩れ現場近くの集会所で開かれた集会で、参加者の1人が怒りをあらわにした。

会の主催は令和3年に静岡県熱海市で起きた土石流を検証するプロジェクトチーム。土木工事の専門家や弁護士らが松山の土砂崩れに対する独自の検証結果を示し、原因究明や金銭賠償など今後取りうる対応について熱海の事例を踏まえて説明し、参加した約30人は熱心に聞き入っていた。

土砂流入などの被害を受けたマンション管理組合の松村崇史理事長は「市は災害を風化させたいのだろう。そうさせないための対応を考える必要がある」。参加した男性(56)は「賠償も重要だが、その議論の前に市としてすべきことがあるはず。それが何の音沙汰もなく、不信感が募っている」と話した。

賠償責任には慎重姿勢

土砂崩れは昨年7月12日に発生。城山北東の斜面が高さ約100メートル、幅約50メートルにわたって崩落、住宅3棟が全壊するなどし、巻き込まれた一家の男女3人が死亡した。

現場では松山市や愛媛県が二次災害を防ぐ工事を実施。市は避難生活を余儀なくされた被災者に見舞金や生活再建給付金などを給付。その一方で、城山の管理者として負う可能性のある賠償責任には慎重な姿勢を示している。

ただ、土砂崩れ発生場所の上部に市が整備した緊急車両用道路には、以前から大きな亀裂があったことが判明。土砂災害警戒区域外での発生だったこともあり、県は専門家らによる技術検討委を立ち上げて発生メカニズムの解明に乗り出した。

こうしたなか、本格的な復旧工事の内容や緊急車両道路の安全性、再発防止策などの説明がなく、補償の方向性も見えないことから被災マンションの管理組合などは市に説明会の開催を求めた。

だが、要望書が提出された8月下旬以降、市は「災害の原因が特定されておらず詳細な話ができない」と回答。記者会見で再三見解を問われた野志市長は「市長の顔が見えないという声も、見えるという声もある」などと発言、「技術検討委の回答を待って適切に対応する」と、開催有無について明言を避け続けた。

愛媛県は何度も開催要請

見かねた県は12月、技術検討委の中間報告から発生メカニズムや復旧工事の大まかな方向性が見えたとして住民説明会の開催を決定し、市にも同席を打診した。担当者は「市には技術検討委の結果を待たず住民説明会を開催するよう何度も要請したが聞き入れられなかった。県は指示する立場ではないためこうした対応になった」と打ち明ける。さらに、緊急車両用道路についても設計施工の妥当性は市の責任で調査するよう要請した。

県主催の説明会では、市に対して「緊急車両道路の設計は妥当だったのか。調査をすべき」「市はこれまで何もしていない」などの厳しい意見が相次いだ。それでも市の担当者は「技術検討委の結果を待ってから」と説明。説明会後、ある参加者は「被災直後は避難所に市長が来て『困りごとは何でも言ってくださいね』と言っていたのに」と困惑ぎみに語った。

双方の溝埋まらぬまま

対話の機会を求める被災者と、技術検討委の結果にこだわる市。双方の溝は埋まらないまま、1月30日に技術検討委の最終報告がまとめられた。

報告書は発生メカニズムについて①斜面変形②土砂流出③土砂流下-の3段階を経たと推定。緊急車両道路は「直接影響を与えた可能性は低い」とする一方、その荷重が土砂崩れの前提となる斜面変形に影響した可能性があると結論付けた。

これを受け、野志市長は「準備が整い次第、私も出席して住民説明会を開催したい」との考えを示したものの、報道陣の取材に応じた市の担当者は「専門家に原因や市に責任があるかなどを伺い、市として判断してから」と、具体的な開催時期を明言しなかった。

さらに、緊急車両道路に関しても「設計施工の妥当性を検証すべきかどうかも含め専門家の意見を聴く」。専門家の人選は「土木工事や法律的な知見を持った方。人数や学識経験者(を充てる)かどうかも含め検討中」と説明。再々にわたる県や被災者らによる要請にもかかわらず、具体的な対応をしていなかったことが明らかになった。

「あきれてものも言えない」(70代男性)、「バカにしている」(50代女性)。市民からは市のずさんさに批判の声が上がるが、市の挙げた説明会の開催要件を満たすには、専門家の人選から調査内容の決定、賠償責任の判断など膨大な作業が必要になるとみられる。被災者が「市の顔が見えた」と実感するまでには、相当の時間がかかりそうだ。(前川康二)

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