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人口減の小豆島は「日本の縮図」 自動運転バスやAIボート…社会問題解決へ大型実証実験

産経ニュース / 2024年12月29日 7時0分

自動運転バスのオペレーターは、緊急時に操作できるように備えている

瀬戸内海に浮かぶ香川県最大の離島・小豆島で最新テクノロジーの力を借りて高齢化や人手不足などの社会的諸課題の解決を目指すプロジェクトが進められている。大手旅行会社のJTBと島内2町(小豆島、土庄(とのしょう))、ITベンチャー、地元交通事業者らが連携し、自動運転バスやAI(人工知能)自動運転ボートの実証実験を実施。全国の各地域が将来直面する課題が一足早く顕在化している小豆島を「日本の縮図」と捉え、解決策を模索する挑戦的な取り組みに注目が集まっている。

観光公害に懸念も

JTBはインバウンド(訪日客)が増え続ける中、令和12年には4回以上訪日するリピーターが約56%となり地方への分散も進むとみる一方、地方でのオーバーツーリズム(観光公害)や人材不足に懸念を強めている。

とりわけ小豆島がある瀬戸内は「行くべき旅行先」として世界的に注目を浴びているエリア。温暖な気候で、寒霞渓やエンジェルロードといった景勝地を抱える。小豆島町が「世界の持続可能な観光地TOP100選」に選定されたこともある。

一方、島の人口は少子高齢化や過疎化に伴い、昭和22年の6万2664人をピークに減り続け、令和5年には約2万5千人に落ち込んでいる。

島の主要産業でもある観光も大きな課題を抱える。「離島なのに来島者の約6~7割が島に宿泊せず、経済効果は限定的だ」と話すのは、JTBエリア開発チームマネージャーの高島達朗さん。2次交通の脆弱(ぜいじゃく)性や宿泊施設のキャパシティー不足と老朽化、飲食店不足が影響しているという。

プロジェクトはこれらの課題解決を図るのが目的だ。今年8月には省人化につながるIot(モノのインターネット)機器を搭載したシェアサイクル160台を導入し、サイクルポートも拡充。9月に自動運転対応のEVバスの運行実験、11月にはAI自動運転ボートの運航試験を各1週間前後実施した。

将来的には、島々を横断的に結ぶアイランドホッピングや空路を活用した関西方面からの誘客など、複合的、段階的に投資を進め、「さまざまな社会課題を、あらゆるテクノロジーの力で解決する」とのプランを描く。

「期待感は想像以上」

特に地域住民と観光客の双方にとって島内交通は大きな課題。タクシーは約30台、路線バスは場所によって1時間に1本程度で、繁忙期やイベント開催時には観光客増加による混雑や交通渋滞の発生など、オーバーツーリズムが懸念される。

高島さんは「根本的な原因は人手不足にあり、人口減少のため解消できない部分をテクノロジーで解決する」と強調する。

自動運転EVバスの実証実験では、土庄港~エンジェルロードの片道約2・7キロ、所要約10分のコースを、自動運転レベル2(部分運転自動化)で1日7往復した。オペレーターが運転席に座り時速35キロの設定で走行。車載のセンサー8基で周囲の道路状況を検知し、3Dマップに基づいて発進、停止、右左折などを自動制御。期間中の自動運転比率は96%だった。

期間中の利用者数は約580人。無料、先着順利用のため満席で乗れない便もあった。利用者アンケートでは、96%が今後も自動運転の利用を希望と回答した。高島さんは「安全性への懸念はあるが、待ったなしの課題解消への期待感は想像以上」と手応えを語る。

「先進地域にしたい」

国土交通省は令和7年度をめどに50カ所程度、9年度100カ所以上での自動運転移動サービス実現を目標に掲げる。

実証実験に協力した自動運転運営事業者の「BOLDLY」(東京)は各地で160回以上の実証実験を行い、昨年までに10カ所で実用化を実現している。担当者は「0から5のレベルのうち、小豆島では9年度に公道でのレベル4(高度運転自動化)、将来的な社会実装を目指す」と話す。

また、プロジェクトに参画している東京のITベンチャー「scheme verge(スキームヴァージ)」の担当者も「新技術導入のリスクはあるが、観光への備えが十分でないという危機意識の方が強い。『モビリティーアイランド』と呼ばれるほどの先進地域にしたい」と意気込む。

また、AIが船の制御や障害物の検知をして自動で航路設定を行うAI自動運転ボートの航行実証では、観光スポットと島内の港を結ぶ3ルートを1日1便運航した。

高島さんは「高いランニングコストという課題は見えたが、将来的なビジネスチャンスは十分。ホテルの送迎サービスへの導入も検討する。さまざまな事業者や投資が集まる『イノベーションアイランド』を目指せば、人口流出の歯止めにもつながる」と説明。「20年先を見据えて人口減少による課題の解決策が確立できれば、未来の日本の処方箋にもなり得る」と期待を寄せている。(和田基宏)

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