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釣り、風俗…家賃滞納で老母絞殺の55歳男 裁判所が断罪した生活保護費のあきれた使途

産経ニュース / 2024年6月20日 8時0分

検察側の論告を聞く男(イラスト・山川昂)

「家を追い出される。一緒に自殺しよう」。同居する母親=当時(82)=に対する殺人罪に問われた無職男(55)の裁判員裁判が6月、大阪地裁で開かれた。2人は母親の1人分の生活保護費で生活。家賃滞納を続けた末、退去予定日の前日に無理心中を図った。一方、地裁は判決で「全て被告が自ら招いた事態」と批判し、懲役9年(求刑懲役12年)を言い渡した。裁判所に指弾された男の破滅的な生活保護費の使い道とは-。

滞納額はおよそ100万円

自宅のこたつでテレビを見る母親。肩の力が抜けたその瞬間だった。昨年5月14日午前8時ごろ、大阪市住吉区の自宅で、男は母親の背後から両手で首を絞めた上、とどめに包丁で首を刺して殺害した。犯行後、駅に向かって歩きながら車道や線路に飛び込んで自殺することも考えたが、交番で自首した。

「ずっと家賃を滞納していた。母は『(家を)出るなら死んだ方がまし』と言うので悩み、殺そうと思った」

警察官にこう語った男。令和3年12月から自宅マンションの家賃を滞納し、滞納額は100万円近く。管理会社から通告された退去予定日は翌日に迫っていた。

生活が困窮した背景に何があったのか。男は一時結婚していたが、離婚を機に母親と同居。母親の生活保護費を頼りにする生活が始まった。

「頭が真っ白になった」

約10年前には自身も生活保護を受給し、ホームセンターで働いて月7~8万円の収入があった時期もあった。しかし、3年に仕事を辞める。母親の介護や人間関係のもつれが原因だったが「何とかなるかという甘い考えだった」。

さらに、翌4年夏には自身の生活保護支給も廃止(打ち切り)されてしまう。収入が安定したからではない。趣味の「釣り」を区役所職員から「ぜいたく」と指摘されたことで不信感を募らせ、必要な報告を怠ったゆえの廃止だったという。

再び母親の生活保護費が唯一の収入となったが、釣りや風俗店通いをやめられず、家計の逼迫(ひっぱく)に拍車をかけた。膨れ上がる家賃滞納から目をそらし続けた結果、管理会社から強く退去を迫られ、パニックに陥った。

慌てて転居先を探しつつ、区役所で窮状を訴えた。ケースワーカーから母親の施設入所を提案されたが、母親は「入所するなら死んだ方がまし。あんた(男)にみてもらいたい」と拒んだ。「頭が真っ白になった」状態で選んだのが無理心中だった。

「分不相応な支出継続」

「今考えたら別の方法があったんじゃないか。後悔しています」。男はたびたび、証言台で声を詰まらせた。

弁護側は男に軽度の精神発達遅滞があることや、自首した経緯を踏まえて懲役7年が相当と主張したが、大阪地裁は6月12日、懲役9年を言い渡した。

量刑理由で岩崎邦生裁判長は、「自宅を退去しなければならなくなったのは、分不相応な支出を続けて家賃を長期間滞納したから」と批判。「母親の落ち度はもちろん、偶然被告や母親を襲った不幸があったわけでもなく、その全てが被告が自ら招いた事態」と断じた。

男は法廷で、出所後は金銭管理について行政のサポートを受けながら自立を目指し、「お袋にごめんなさいと謝っていきたい」と母親の供養を続ける意思を示した。

判決では「反省の情は認められるし、立ち直りを期待できないわけではない」とも言及され、男の更生に望みをかけた。(地主明世)

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