1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

バス運転手不足で激しい獲得合戦 横浜市交通局の待遇改善に民間事業者から〝恨み節〟も

産経ニュース / 2025年2月9日 11時0分

路線バスの運休を知らせる立て看板。運転士不足は全国的に深刻な問題だ=1月29日、東京都杉並区

人手不足が深刻なバス業界で、運転手の獲得合戦が激しさを増している。横浜市営バスで相次ぐ減便を余儀なくされた市交通局は運転手の初任給を月額2万円以上引き上げる過去最大級のベースアップや、年齢要件の緩和などで募集活動を強化したが、神奈川県内の民間バス事業者からは「待遇がよい公営バスへの転職者も少なくない」と〝恨み節〟も漏れる。自動運転など新技術による課題解決の日は来るのか-。

立て続けの減便

昼下がりの横浜駅西口。笹山団地中央(横浜市保土ケ谷区)との間を約40分かけて結ぶ市営バス92系統の乗り場では、出発の30分近く前から並ぶ乗客が見られた。「1時間に1本しかないので乗り遅れたら大変」と、買い物の高齢女性。バスが入ってくるころには長蛇の列ができていた。

市営バスは昨年、4月と10月に計3回の減便に追い込まれた。時間外労働の上限規制の強化に伴う「2024年問題」に加え、退職者も相次ぎ運転手のシフトを埋めきれなくなったため、1日当たり計600本以上の運行をカットした。92系統は69本から44本に減った。

事態を重く見た市交通局は「本気の人財確保大作戦」と銘打ち、運転手の処遇や採用方法を見直した。新規採用者の住宅補助を年間36万円以上多い60万円に増やし、大型2種免許の所持者の年齢制限は49歳から60歳に緩和。採用試験で作文などを廃止した。令和7年度は平均8%近いベアを行い、初任給は2万1千円以上引き上げられる。

働きやすさアピール

「賃上げの必要性が叫ばれている。特に若年者の採用を強化し、〝市民の足〟を守っていく」と、山中竹春市長。もっとも、〝足〟を担っているのは民間のバス事業者も変わらない。

矢継ぎ早に対策を講じる横浜市交通局に対抗するように、相鉄バス(同市西区)は平均本給を約2万6千円アップ。65歳以上のパートタイム運転手の時給も上げ、休憩室にカプセルベッドを置くなど労働環境の改善にも取り組んでいる。

神奈川中央交通(同県平塚市)は、未経験者へのアピールに力を入れている。ハローワークと連携し、自社の研修センターで実際に大型バスを運転してもらう体験会を開催。大型免許なしでも参加でき、現役運転手とのざっくばらんな座談会や個別相談などを通じ、働き方のイメージをリアルに感じてもらう狙いだ。

これまで30回開催し、180人が参加。広報担当者は「手応えを感じている。待遇も含め、打てる手はすべて打ちたい」と話す。

期待かかる自動運転

とはいえ、今や人手不足は職種を問わず幅広い業界の課題となっており、現状を打開するブレイクスルー(突破口)が求められている。

愛媛県の伊予鉄グループ(松山市)は昨年12月、特定条件下での無人走行が可能な「自動運転レベル4」の路線バスの運行を全国で初めて開始した。当面は大型2種免許を持つ保安員が乗り込むが、段階的に関与を減らしていく計画だ。

神奈川県内では、川崎市交通局や神奈中交通も自動運転バスの導入に向け、一定条件化でアクセルやブレーキなどを自動制御する「レベル2」の実証実験をこの冬に始めた。

日本バス協会は、令和12年に全国で路線バス運転手が3万6千人不足すると試算。交通弱者に厳しい社会の到来が懸念される。「地域の足を守るためには、最新技術を駆使し、自動運転が補っていく世界観をつくっていく」(福田紀彦・川崎市長)ことが急務だ。(山沢義徳)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください