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運転手いらない自動運転「レベル4」路線バス 人手不足業界の救世主へ松山からGO

産経ニュース / 2025年1月25日 11時0分

出発式であいさつする伊予鉄グループの清水一郎社長=松山市の松山観光港

自動車の運転全てをシステムが担い、一定の条件下で運転手を必要としない自動運転「レベル4」による路線バスの営業運行が全国で初めて松山市で始まった。運行区間は伊予鉄道高浜駅-松山観光港間の約800メートルで、AI(人工知能)で車体を制御、搭載されたカメラやセンサーで周辺の状況を把握し異常があれば自動で停車する。バス業界の深刻な人手不足を受け、国は自動運転技術の実用化を進めており、運行する伊予鉄グループの清水一郎社長は「松山がレベル4のモデル都市となり、全国に広げていければ」と話す。

不安は感じず

国土交通省によると、自動運転は自動化技術に応じて5段階のレベルに分けられており、「レベル4」は一定の条件下で加速、操舵、制御を全てシステムが担う水準という。伊予鉄グループによる営業運行は昨年12月25日から開始され、同日は出発式や試乗会も開催。記者も乗車してみた。

車体は通常の市バスより小ぶりのEVバスで座席は12席。運転席の背面に大きなモニターが備えられ、28のセンサーやカメラで感知した周辺の歩行者や車をCGで表示する。シートベルトを締めて座席に座ると出発のアナウンスとともに画面に「自動運行中」と浮かび、バスは松山観光港を出発した。

運転席に座る保安員は、大型2種免許を持っているものの、非常時以外はハンドルを握らない。バスはロータリーから公道へ出る際や歩行者を検知すると必要に応じて一時停止。加速減速もなめらかで、往復約10分のバスの旅で不安を感じることはなかった。

家族と乗車した松山市の小学3年の男児は「まるで人が運転しているみたい」と驚いていた。

実用化に期待

自動運転の実用化は、交通の安全性や運送効率の向上、渋滞の緩和、人手不足の解消などさまざまな効果が期待される。

とりわけ、バス業界では運転手不足が深刻で、公益社団法人「日本バス協会」(東京)の推計によると、バス運転手は令和6年度時点で10万8千人。12年には9万3千人にまで減少する見通しで、運転手の時間外労働時間に上限を設ける、いわゆる「2024年問題」の影響を加味すると同等の輸送規模維持には3万6千人の不足が見込まれる。

こうした背景もあり、政府は自動運転の実用化を推進。法改正も進めており、2年には緊急時などに運転者が操縦を引き継ぐ「レベル3」を、5年4月には「レベル4」を活用した公道での巡行サービスが解禁された。

国交省も公共交通での活用のため、4年度から自治体を通して自動運転の導入費などを支援する補助制度を実施。今年度は99の自治体が交付決定を受けて各地で実証実験などを進めている。

地方には朗報

伊予鉄グループの営業運行も同補助制度の枠組みを活用したものだ。ただ、「レベル4」で公道を走行する場合、複数の歩行者や通行車両など刻一刻と変化する道路状況を感知して瞬時に車両を制御する必要があり、より高度な安全対策が求められる。

今回の運行区間は、比較的運行距離が短い▽片側1車線で交差点がない▽歩行者が少ない-など、システムへの負荷が少ない区間。さらに、伊予鉄グループは運転手の運転技術や道路状況、歩行者の動きなどをAIに学習させる試験走行を約2カ月間続け、全国初の営業運行にこぎつけた。

自動運転は午前8時~午後4時ごろとし、乗客が13人以上で立つ必要がある場合は手動に切り替える。今後AIの学習状況から安全性を慎重に判断し、将来的には有資格の保安員も配置せず遠隔監視のみで運行することを目指す。日本バス協会の会長も務める清水社長は「公共交通の存続に苦心している地方にとって(レベル4の営業運行は)朗報だと思う。バスの持続可能な運行に向け自動運転を全国に発信していきたい」と意気込んでいる。(前川康二)

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