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中国の銀行が対露ビジネスから一斉撤退 米「2次制裁」の威力にプーチン大統領も戦々恐々

産経ニュース / 2024年6月17日 8時0分

ウクライナ侵略を続けるロシアと中国の貿易関係に異変が起きている。ロシアの軍需産業を支援しているとみなした海外の銀行に対し、米国が新たな制裁を科す方針を昨年末に発表したことを受け、影響を懸念した中国の銀行が次々と対露ビジネスから手を引き始めているためだ。中国との経済関係は、ロシアにとって命綱ともいえる存在で、5月中旬に実施された露中首脳会談でのプーチン大統領の発言にも、対応に苦慮している現状がうかがえた。ロシアはこれまでも制裁回避を繰り返してきただけに、どこまでの効果が生まれるか注目される。

海外の金融機関を対象

「第三国の経済活動に対する制裁は極めて不当なものだ」。5月17日、中国・ハルビンで行われた会見でのプーチン氏の発言には、新たな制裁による影響への懸念がにじんだ。「政府レベルで支援する必要がある」とも述べ、民間金融機関では対処できない状況にある実態も浮かび上がった。

プーチン氏の発言の背景には、米政府が昨年12月に導入を決めた、海外の金融機関を対象とした制裁があるとみられる。

米国の新たな制裁は、ロシアの軍需産業を支えているとして、米国の制裁下にある企業・個人のために取引を実施、促進した金融機関▽特定品目の販売・供給など、ロシアの軍需産業基盤に関わる重要な取引を実施、促進したと判断される金融機関―への制裁を科すという内容だ。

米報道によれば、金融機関は取引相手が制裁を受けているかを認識していなくても、制裁の対象になるという。米国が関わらない取引を制裁する「2次制裁」と呼ばれるもので、ロシアのウクライナ侵略に絡み、このような制裁を米国が導入するのは初めてという。

米市場へのアクセス死活問題

これに、中国の銀行は反応した。露紙ベドモスチ(電子版)によれば、対露貿易の拠点のひとつとみなされている中国・浙江省の銀行が昨年末、中国から工業機械の部品を輸入するロシア企業に対し、一部の物資を対象にした決済業務を停止したと通告した。しかし数週間後には、商品、通貨の種類にかかわらず、すべての取引を停止すると伝えてきたという。ロシア企業が開設していた、外貨建ての口座を凍結した銀行もあった。

なぜ中国の金融機関は今回の制裁に敏感に反応したのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介副主任研究員は「中国の銀行にとり、米金融市場へのアクセスは、死活問題だからだ」と断じる。中国の貿易決済は、ドル決済が主流であるため、「ドル資金がなければ、貿易取引に支障がでる。だから、中国の銀行はロシアとの取引を停止したのだ」と解説する。

一方、米政府が、ロシアと中国のビジネスが標的となる新たな制裁を導入した背景には、ウクライナ侵略が3年目に突入するなか、中国がロシア経済を支え、その戦争継続能力を維持させていることがある。

報道によれば、中国とロシアの輸出入を合わせた貿易総額は2023年に、前年比26・3%増の2401億ドル(約37兆円)となった。ロシアの主要輸出産品である原油においては、中国のロシアからの輸入は金額ベースで前年比で約4%増の606億ドルとなった。ロシアによるウクライナ侵略開始以前の21年と比較し、5割程度も増大したという。このような動きは、エネルギー関連企業からの税収を通じ、ロシアを財政面で支える。

さらに米国は、ロシアが中国から工作機械や半導体など、軍事転用が可能な物資の輸入を続けているために、ロシアの軍需産業が制裁の影響を回避しているとの見方を強めている。米政府高官らは中国を名指しして、軍事転用可能な物資をロシアに供給していると批判。米財務省は5月、ロシアへの赤外線探知機やドローン部品などの輸出に関与したとして、中国やトルコなどの約300の企業・個人に制裁を科すと発表した。

抜け道困難で貿易停滞か

露メディアによれば、ロシア企業はわずかずつであるならば、中国企業への輸入代金の支払いが継続できるケースもあるという。また、中国国内に支店を持つロシアの銀行の助けを得て、支払いを継続するなどの手法が考えうるとしている。

ただ、土田氏は、このような考えには疑問を抱く。「ロシアが自国の銀行の中国進出を加速すると考えられる」としつつ、「ロシアの銀行が中国で支店を新たに開設するには、相当の時間がかかるだろう。仮にロシアの銀行が取引を行っても、やはり中国の銀行が関わる必要が出てくる可能性もある」と語る。

また、中国以外の第三国の金融機関を介して露中企業が取引することも「露中の企業間の取引は決して額が小さくないだろう。そのような取引を、米国との取引がないような小国の金融機関が手掛けられるとは考えにくい」と指摘している。

ロシアを巡っては、2022年2月のウクライナ侵略開始以降、日本や欧米諸国の経済制裁を受けていたが、中国やインドなどの国々がロシア産原油を大量輸入し、制裁効果が薄れていたのが実態だ。今回も、何らかの形で抜け道を見つけ、影響を抑える可能性は否定できない。ただ土田氏は「いずれにせよ、露中間の貿易は停滞せざるを得ない」との見方を示している。(黒川信雄)

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