創刊100年「JTB時刻表」重さ「1kgの壁」 郵送料との闘い、情報・見やすさ追求
産経ニュース / 2025年1月7日 11時0分
今春で創刊100年を迎える「JTB時刻表」(JTBパブリッシング刊)。読者が列車を探しやすいようにする工夫がさまざまな所に施されている。
時刻表のページを開くと、上から下の縦が距離、左から右の横が時間の流れを示している。早く発車する列車が左側に掲載されるのが普通となっている。ところが、この法則が崩れている部分がある。東海道・山陽新幹線のページだ。
例えば、熊本を6時8分に出た「さくら540号」が終着の新大阪に着くのが9時37分。東京方面へは「のぞみ324号」が9時39分に出発するが、時刻表の掲載は「のぞみ」が左側で「さくら」が右側。見た目では接続していないという形がとられている。
元編集長の木村嘉男さんが説明してくれた。「さくらの到着ホームが20番線。のぞみの発車ホームが26番線。新大阪駅の構造や混雑などを考えれば、2分での乗り換えは無理と判断した」。乗り換えできず、旅程が変わってしまわないよう、配慮しているのだ。
JRだけでなく、全国の私鉄、バス、航空機のダイヤも掲載されているのも時刻表の楽しみだ。ほかの時刻表と差別化を図ろうと、「1987年6月号」に航空機の国際線ダイヤの掲載をスタートさせた。旅行者が出発前にフライトの所要時間を調べたり、企業が要人を迎える時間を把握したりして好評だった。翌月号からは高速バスのダイヤをまとめて載せた。
しかし現在の千ページ超のボリュームを増やせない事情がある。こちらの情報を載せたいため、別の情報を取りやめたケースも多々あるという。それは「1キロの壁」だ。時刻表は書店に並ぶ以外、定期購読の読者や企業には郵送される。郵送料は215円で済んでいる。JTB時刻表は「年4回以上の発刊」「500部以上の発行」などの条件を満たし、日本郵便から第三種郵便物に認定されているからだ。第三種郵便物の重量は1キロ以内。これを超えるとレターパックライトの430円、定形外郵便物(規格外)の1350円と跳ね上がってしまう。
「1キロの壁」対策で紙は薄く、軽く、強いものを使用。さらに数字に裏ページのけい線が重ならないよう、けい線は裏表が重なるように印刷されている。重さに気を使いながらも、細かい部分に「見やすさ」へのこだわりが見える。
創刊100年を迎え、編集長の梶原美礼さんらスタッフのもと、さらに進化していくJTB時刻表。最後に木村さんが教えてくれた時刻表の楽しみ方を紹介する。電車の初乗りは百数十円で、1千万円を超えるクルーズ船もある。「時刻表で最低金額、最高金額を探してみるのも面白いと思います」。さまざまな乗り物が網羅された時刻表ならではの面白さといえる。(鮫島敬三)
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