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工場の単純作業でもモチベーションや効率高まる ゲーム要素導入した働き方改革、日本上陸

産経ニュース / 2024年11月26日 8時0分

サントリーホールディングスの「社長のおごり自販機」。三菱電機関西支社では「支社長のおごり自販機」として導入している=大阪市北区

仕事がゲームみたいに楽しくならないだろうか-。そんな望みがかなう時代が来るかもしれない。大阪の中小企業が、工場での作業成果を反映して島が発展していくゲームを開発した。作業を頑張るほど島は発展し、工場内の順位も分かるためモチベーションにつながる。三菱電機も作業成果に応じてキャラクターの装備が豪華になるシステムの実証を進める。仕事にゲーム要素を取り入れてモチベーションや効率を高める「ゲーミフィケーション」の波が日本に到来している。

エピックゲームズから許諾

工場で作業の進捗(しんちょく)をセンサーが検知すると、ゲーム内のキャラクターの体力がたまり、体力がなくなるまで小屋を作ったり、畑を耕したりして島の開発を進めていく。

ソフト会社、日昌電気制御(大阪府泉佐野市)が開発した「REAL FOCUS(リアルフォーカス)」は、一見すると市販されているゲームと区別がつかないほど本格的だ。大ヒットゲーム「フォートナイト」で知られる米ゲーム会社エピックゲームズの許諾を得て、通常のゲーム開発と同じ環境で作り込んでいる。

最大5人のチームをつくって工場内でスコアを競うことで、従業員はモチベーションを高く保ちながら仕事ができる。工場ですでに活用されている生産データを見える化するためのシステムと連携できるため、容易に導入できるのも特徴だ。

先駆者はアマゾン

実は同様の仕組みは米インターネット通販大手アマゾン・コムがひと足先に導入している。物流拠点で出荷作業を担う従業員向けに「FCゲーム」を開発。街づくりやペット育成など複数のゲームから好きなものを選ぶことができ、国内でも2020年から導入を進めている。従業員からは「他の人と競うことで作業へのモチベーションが上がる」と好評という。

ただ、アマゾンのFCゲームは外部に提供されておらず、同様のゲームを自社で開発するのは簡単ではない。その点、日昌電気制御のリアルフォーカスは1台(5人対応)約250万円で提供しており、大規模な工場でなくても導入しやすい。リネン工場への導入では約8%の生産性向上につながった。

日昌電気制御の神藤昌平社長は「1年で導入コストの元が取れる計算になる。仕事が楽しくなるので人材も獲得しやすいはず」と胸を張る。

三菱電機も工場作業の実績に応じてキャラクターの衣装や装備が豪華になっていく「ファンファクトリー」というシステムの実証を進めている。従業員のスキルに応じて新たなアイテムを獲得でき、成果が可視化されるため最大40%のモチベーションアップにつながっているという。

ただ一方で、着せ替え要素だけでは効果が長続きしないとの声もあり、今後は社内で使えるポイントや商品券への交換も検討する。他社への提供も含め、25年の実用化を目指している。

社員証の同時かざしで無料

ゲーム性は控えめながら、一風変わった仕組みが評価され、導入が広がっているのがサントリーホールディングスの「社長のおごり自販機」だ。社員証2枚を同時にかざすと無料で飲み物がもらえる自販機で、主に企業側が社員向けの福利厚生として導入している。同僚を誘うことで自然と会話が生まれ、コミュニケーションが活発になる効果があるという。

日本ゲーミフィケーション協会の岸本好弘代表理事は「仕事はつらいものだという意識が社会全体で変わってきている」と指摘。その上で「ゲーム要素を取り入れることでやる気は引き出せるが、真に重要なのは従業員が自発的に工夫や改善に取り組む動機付けだ。ただシステムを導入するのではなく、働き方改革の一環として取り組むことでより効果的になる」と話した。(桑島浩任)

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