文楽界支える人間国宝・吉田和生、桐竹勘十郎、吉田玉男 「三羽烏」が次世代に寄せる期待
産経ニュース / 2025年1月1日 8時0分
大阪が誇る伝統芸能「人形浄瑠璃文楽」が今、充実のときを迎えている。同時期に入門し、「文楽の三羽烏(がらす)」と呼ばれた人形遣いの吉田和生(77)さん、桐竹勘十郎(71)さん、吉田玉男(71)さんの3人の人間国宝がそろい、円熟の芸で見る者を魅了する。1月3日に開幕する初春公演の「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」九段目で共演する3人に、入門時の思い出や今年の抱負を聞いた。(聞き手・田中佐和)
――同時期の入門で切磋琢磨(せっさたくま)された仲です
和生 僕と勘十郎さんは昭和42年、玉男さんは43年入門ですが、同期ですと言っています。入門当時は人形遣いが不足していて、僕らの1つ上が10年間あいていてね。若手時代は金の卵みたいに扱われました。
勘十郎 忙しかったけれど、短期間で無理にでもいろいろ経験させてもらったことが非常にいい勉強になりました。
――和生さんは品格ある女方(おんながた)や立役(たちやく=男性役)、勘十郎さんは躍動的な役が似合い、玉男さんはどっしりとした立役です。
和生 それぞれが師匠の芸風を引き継ぎ、自然とすみ分けができた。だから昔からライバルという感じではないんです。今は3人でそれぞれの相手役ができるようになったしね。
勘十郎 何十年も相手役を勤めているので気心が知れ、こうしたらああするやろう、というのが分かるんですよ。
玉男 初役の相手役でもこの3人なら自然に動けるから、事前の打ち合わせもしないです。
――令和5年に玉男さんが人間国宝に認定され、3人全員が同じ栄誉に
玉男 決まってすぐ2人に電話したら「良かった、おめでとう」と言ってくれて。
勘十郎 全員元気でこんな日が来るなんて、
若い頃は想像もできなかった喜びです。
――今年の初春公演では九段目「山科閑居(やましなかんきょ)の段」で共演します。主君の仇討を誓う大星由良助の家族と、その大星家に娘を嫁がせる加古川本蔵の家族、ふたつの家の悲しみと情が複雑に交差する、文楽屈指の大曲です
玉男 私は由良助役。3人でこうして重要な役をやらせてもらえるのがうれしい。
勘十郎 私が勤める本蔵は渋い役ですが、手負い(傷を負った役)で、工夫のしがいがあって面白いです。
和生 僕は本蔵の妻、戸無瀬(となせ)役です。3人でやる九段目も最後かもしれないから、とにかく精いっぱいやります。
――今後の目標を
勘十郎 後継者となる若い人に文楽の世界に入ってもらうこと。人形遣いは8年くらい入門者がいないので。
和生 下に伝える義務があるけれども、後継者がいなければ伝えようがないんです。
玉男 僕らが金の卵やといわれたのと同じで、今入ってもらえればたくさん経験が積める。若い人たちを育てて、文楽を未来につなげていきたいですね。
吉田和生(よしだ・かずお)
昭和22年7月28日、愛媛県西予市生まれ。42年、吉田文雀(人間国宝)に入門、翌年初舞台。公演ごとに人形の首(かしら=頭)を決める「首割(かしらわり)委員」の重責も担う。平成29年に人間国宝、令和6年に文化功労者に選ばれた。
桐竹勘十郎(きりたけ・かんじゅうろう)
昭和28年3月1日、大阪市生まれ。父は二代目桐竹勘十郎。42年、吉田簑助(人間国宝)に入門、翌年、吉田簑太郎を名乗って初舞台。平成15年に三代目桐竹勘十郎を襲名。令和3年に人間国宝。姉は俳優の三林京子さん。
吉田玉男 (よしだ・たまお)
昭和28年10月6日、大阪府八尾市生まれ。43年、初代吉田玉男(人間国宝)に入門、吉田玉女(たまめ)を名乗る。44年に初舞台。平成27年、二代目吉田玉男を襲名。令和5年に人間国宝。
令和7年初春文楽公演
国立文楽劇場で1月3~26日(15日休演)。第1部(開演午前11時)は「新版歌祭文」から「座摩社の段」「野崎村の段」、第2部(同午後2時15分)は「仮名手本忠臣蔵」から八段目「道行旅路の嫁入」と九段目「雪転しの段」「山科閑居の段」、第3部(同午後5時半)は「本朝廿四孝」から「道行似合の女夫丸」「景勝上使の段」「鉄砲渡しの段」「十種香の段」「奥庭狐火の段」。チケットは1等6千円(学生4200円)、2等4500円(学生3200円)。国立劇場チケットセンター(0570-07-9900)。
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