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新作歌舞伎で知名度アップ、上村吉太朗が古典大役に抜擢 一般家庭出身から上方のホープへ

産経ニュース / 2024年9月28日 8時0分

「上方歌舞伎会」で「封印切」の梅川を勤めた上村吉太朗=8月、大阪市中央区の国立文楽劇場(本人提供)

昨年、「ファイナルファンタジーX(FFX)」や「刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)」など、ゲームを原作とする話題の新作歌舞伎に出演して一気に知名度を上げた上方歌舞伎界のホープ、上村吉太朗(23)が10月、古典歌舞伎の舞台で大役に挑む。2日から東京・歌舞伎座で上演される尾上菊之助主演の「平家女護島・俊寛」で、海女の千鳥を勤める。一般家庭出身の吉太朗にとっては大抜擢だ。続くチャンスに「恐ろしいですが、やってやるぞという気持ちがある。頑張るしかないです」と興奮気味に頰を紅潮させる。

大阪出身の吉太朗は4歳のとき、祖父の同級生で、後に師匠となる上方歌舞伎の女形、上村吉弥の「藤娘」を見て歌舞伎に夢中になった。平成19年に初舞台、21年に吉弥の師、片岡我當の部屋子となり、今年名題に昇進した。

卓越した芝居センスで上方では少年時代から期待された存在だったが、全国的に知られる好機となったのが、昨年東京で上演された新作歌舞伎「FFX」(3~4月)と「刀剣乱舞」(7月)だ。

菊之助が企画、演出、主演した「FFX」では主要キャラクターのリュック役に抜擢され、ポスターには菊之助らと並んで役の扮装写真が載った。門閥外の吉太朗にとっては初めての経験で、「新しいお客さんに自分を知ってもらう機会になりました。お声をかけてくださった菊之助さんには本当に感謝しています」。

続く「刀剣乱舞」では人気キャラの一人、膝丸として、尾上松也や尾上右近ら勢いのある俳優たちと共演し、刺激を受けた。「2作を通じて菊之助さんや東京のお兄さん方と初めていろいろお話しし、一緒に芝居をさせていただけたのは貴重な経験。とても勉強になりました」と振り返る。

新作で新境地を開いた後は、古典でも活躍が目立った。昨年の巡業公演では、中村鴈治郎主演の「土屋主税」でお園役に抜擢。さらに今年8月、大阪・国立文楽劇場で開かれた若手の会「上方歌舞伎会」では、常々目標に掲げてきた世話物の名作「封印切」の遊女、梅川を初めて勤めた。

忠兵衛をいちずに愛する梅川のあどけないはかなさを、上方らしいこってりとした味わいで表現。実年齢が醸すみずみずしさと相まって鮮烈な印象を残し、確かな成長を感じさせた。

そして10月に挑戦するのが、近松門左衛門作の義太夫狂言「俊寛」の千鳥だ。流刑となった俊寛僧都(菊之助)の運命のカギを握る女性で、喜んだ師匠の吉弥は目に涙をためて吉太朗に配役を伝えたという。大役におののきつつも、「せっかくいただいたお役に応えないといけないし、師匠への恩返しの気持ちもあります」と吉太朗は言う。

吉弥は一般家庭出身ながら、その実力で道を切り開き、東西の舞台で大役を任される貴重な存在だ。「さまざまな苦労や困難を乗り越えてこられた師匠の下で学べていることがありがたい」と吉太朗。いつかは超えたい存在として師の大きな背中を追いながら、「古典を大切に、新たなことにも挑戦して自分の幅を広げ、上方歌舞伎を引っ張る存在の一人になっていきたい」。きりりと引き締まった表情で語った。(田中佐和)

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