明治の日本を救った「ラストサムライ」の切腹 舞台でよみがえる瀧善三郎の大和魂
産経ニュース / 2025年2月9日 10時0分
明治元(1868)年に備前岡山藩士が隊列を横切ったフランスの水兵と銃撃戦を繰り広げた「神戸事件」を巡り、その責任を一身に背負い、見事な切腹を果たして欧米列強との外交問題を解決した瀧善三郎(1837~68年)。その生き方を描いた舞台「ラストサムライ 瀧善三郎のBUSHIDO」が22、23日、岡山市内で上演される。主演で演出も務めた一般社団法人「歴史新大陸」の代表理事、後藤勝徳さんは「命をかけて、かけがえのない人たちの属する『公(おおやけ)』を守った。武士道の利他の心を受け継いでいかなくては」と話している。
欧米列強から理不尽な要求
善三郎は備前国津高郡金川村(現在の岡山市北区御津金川)出身。備前岡山藩家老、日置帯刀の家臣として馬廻役を務めた。
戊辰戦争開戦直後の明治元年2月4日、砲隊小隊長の善三郎が属する備前岡山藩の隊列が三宮神社(神戸市)付近を通りかかった際、フランスの水兵2人が隊列を横切ろうとした。侍の行列を横切るのは極めて無礼な行為とされており、水兵と藩士が鉄砲を撃ち合う事態に発展。軍艦から上陸した英仏米の陸戦隊が神戸を4日間不法占拠し、停留中の日本船舶を拿捕(だほ)した。
けが人が出ただけで死者はなかったにもかかわらず、3カ国は「天皇の名において謝罪」「発砲を命じた士官を各国公使の目の前で処刑」などの理不尽な要求を明治政府に突きつけた。まだ欧米列強に対抗するだけの力がない日本。国家的な危機を前に、衝突を避けなくてはならないと考えた善三郎は全ての責任を一人で背負い、英米仏の関係者の目の前で切腹し、32年の生涯を閉じた。
義烈碑を見て衝動
当時、日本は香港や上海のように欧米列強による植民地支配の危機にさらされていた。後藤さんは「末端の者がこれだけの覚悟や気概を持っているなら、この国は一筋縄ではいかないと欧米列強は恐れたに違いない。戦争の一歩手前で守っていただいた」と力説する。
切腹を見届けた英外交官のミットフォードが詳細に記述し、潔い姿が英国の新聞で報じられた。新渡戸稲造が明治33年に英語で刊行した「BUSHIDO(武士道)」にも引用され、日本よりも海外で広く知られる。
善三郎を「ラストサムライ」と呼ぶ後藤さんは「武士の世の最後に、死を恐れない武士道が海外に知れ渡った。一方で、日本で名前が知られていないのは明治政府が弱腰外交との批判を恐れ、徹底的な緘口(かんこう)令を敷いたからだ」と考えている。
後藤さんは令和4年、善三郎の出身地にある七曲神社の「義烈碑」に衝撃を受け、善三郎に興味を持った。「ふさわしい評価を受けていない。この人物をもっと広めなければ」と思い立ち、1日でゆかりの神戸の史跡を巡り、夜には岡山市で墓参りをした。「偲ぶ会」の事務局長で善三郎の曽孫にあたる正敏さんともその後対面できた。
「戦後は責任感が希薄に」
後藤さんは平成20年に東京で「劇団歴史新大陸」を旗揚げし「歴史エンターテインメントで日本を元気に」を合言葉に活動。令和3年の一般社団法人化に伴って拠点を出身地である岡山に移し、伝統芸能の体験会や歴史ツアーなども開催している。
今回の「ラストサムライ 瀧善三郎のBUSHIDO」は3年の準備期間を経て舞台化が実現した。まちおこしの狙いもあり、オーディションで選ばれた善三郎の出身地・御津地区の住民もエキストラとして出演する。
神戸事件や切腹のシーンもあるが、「大切な家族との関わりを丁寧に描きたい」と後藤さん。妻と2歳の息子、生後2カ月の娘とは事件後に一度も会うことができず、それぞれ宛てに遺書を書き、辞世の句を残している。
後藤さんは曽孫の正敏さんから「当時の武士はみな善三郎と同じ気概、覚悟を持っていた」と聞いて感銘を受けた。「戦後社会は個人主義になれ果て、責任感が希薄になっている。国のために命をささげるのは大事な人を守ることに等しい。善三郎の生き方を手本に大事なことをもう一度思い起こしてほしい」。そんな思いを伝えようと、公演の稽古に励んでいる。(和田基宏)
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