おいしく食べて竹林整備 40都府県に広がる「純国産」メンマの輪 地域課題解決で注目
産経ニュース / 2024年11月5日 17時0分
人手不足などで日本各地の竹林が放置される中、成長途中の若竹をメンマとして活用する「純国産メンマプロジェクト」が広がっている。背の高い竹は影を落とし、周辺の木々を枯らすなど生態系に影響を与えるほか、地中の浅い部分に伸びた根が土砂崩れの一因にもなる。日本中でやっかい者扱いの竹を資源として見直す取り組みで、地域課題の解決の手法としても注目を浴びそうだ。
純国産メンマプロジェクトは、「おいしく食べて竹林整備」をテーマに、増加する放置竹林の資源化を目指す全国組織。令和4年度は約40ヘクタールの竹林を整備し、約98トンの純国産メンマを製造した。10月末時点の会員数は40都府県161団体となっている。
平成29年に京都で初めて開いた「純国産メンマサミット」は今年で6回目を迎え、10月に長野県飯田市で開催すると、全国から約500人のメンマファンが集まった。
従来のメンマは台湾が発祥とされ、麻竹を原材料に竹に含まれる乳酸菌で発酵させてつくる。国内スーパーなどで販売されているのはほぼ中国産だ。
一方、国産メンマは、現在放送中のNHK連続テレビ小説「おむすび」の舞台にもなっている福岡県糸島市で開発された。国内で一般的な孟宗竹で2メートルまでの若竹を、塩漬けにして熟成させたり、微発酵させたりしてつくる。中国産のものよりも歯応えがよく、竹の本来のうまみが感じられるのが特長。同プロジェクトでは定められたサイズや塩分濃度、製造方法などを「標準作業手順書」にまとめ、国産メンマのブランド化を図っている。
破竹の勢いで組織づくり
昨年12月、横浜市でも同プロジェクトに参加する「横浜竹林研究所(ハマチクラボ)」が立ち上がった。都市部の横浜では大規模な竹林は少ないが、急な傾斜地を切り開いて宅地開発をしてきたため、小規模な竹林が点在している。竹林整備は非効率的となり、不動産関係者を悩ませてきた。
ハマチクラボの理事を務める山本ルリさんは不動産開発会社の代表取締役でもある。地主にとっては竹林整備はコストでしかない現状に、山本さんは「すべて伐採してアパートを建てるだけの不動産開発でいいのか」と疑問を感じていた。竹の活用を模索しているときに、同プロジェクトを知った。
代表理事を務める小林隆志さんは、ほぼ同時期、新型コロナウイルス禍で在宅ワークをするようになり、地域貢献の一環としてシェアカフェの運営を始めていた。小林さんの実家はかつてそうざい店を営んでおり、メンマは隠れたヒット商品だった。カフェのメニューにも取り入れており、材料の供給元を探していた。
「竹林活用の入り口と、食という出口が出会った」と山本さん。昨年3月に出会うと、意気投合し、組織づくりに着手した。半年後の9月にハマチクラボ設立のキックオフイベントを開催するなど、まさに「破竹の勢い」で話が進んでいった。
あんみつ、かき氷、甘味にもメンマ
ハマチクラボは今回のサミットで「ラーメンだけのメンマじゃない」をテーマにレシピコンテスト「竹菜レシピEXPO」を企画した。47のレシピが集まり、うち6つをファイナリストとして表彰した。黒糖寒天や白玉団子の中にメンマをいれたあんみつやメンマのシロップ漬けを具にしたかき氷などのユニークなメニューも登場した。
竹は深さ約1~1・5メートルの浅い地中に地下茎を張り巡らせ、その地下茎から新しいタケノコが生えてくる。竹が密集して林になるのはこの生態が原因だ。浅い部分の地下茎は土壌を固定する力が弱く、地滑りの原因となってしまうことすらある。
春先に地上に顔を出すタケノコは数週間で約2メートルにまで成長し、1カ月も放置すれば、食用に向かない硬い竹になってしまう。竹が寿命を迎えるまでの約10年間、若竹の生育を管理できるかが、竹林整備の鍵になるという。(高木克聡)
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