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「令和の木都」復興へ 製材最大手中国木材が秋田・能代工場完成 県産材消費で再造林弾み

産経ニュース / 2024年11月10日 7時0分

自家消費用バイオマス発電の燃料にするおがくずサイロ(奥)と端材倉庫(右)=中国木材能代工場(八並朋昌撮影)

秋田杉などの集積地として「東洋一の木都」と称されながら、外材に押され長らくその面影が薄れていた秋田県能代市で10月、国内製材最大手の中国木材(広島県呉市)が能代工場完成披露式を行った。使用する県産原木は年間24万立方メートルで、放置される山間部の再造林に弾みがつき、輸出も検討される。世界的な木材不足で価格が高騰する「ウッドショック」や円安で国産材が見直される中で、能代市は「令和の木都能代復興」を期す。

丸太を年20万本

同工場は県営の能代工業団地にあり、4カ所の敷地は計約44万平方メートル。国立競技場6個が入る広さで、同社を含め27社が入る同団地総面積約94万平方メートルの半分近くを占める。原木土場、製材棟、木材天乾場、加工集成材棟などがある。

約2万5千平方メートルの製材棟では、原木土場から搬入された長さ4メートル、太いもので直径80センチの原木丸太が大型機械ラインに載ってさまざまな規格に製材される。作業は自動化され、従業員が各ラインの流れを見守る。

製材は天日乾燥後に製材棟の2倍の広さの加工集成材棟で補修、プレス、接着、小割大割、仕上げなどの工程が自動で行われる。出来上がった集成材の柱は無垢(むく)材に比べて反りやねじれがなく、住宅建材の主流になっている。

「生産が軌道に乗れば、年間の製材・加工量は長さ4メートル、直径50センチの丸太だと約20万本分の24万立方メートル。現在約190人の従業員は250人となる」と同工場広報担当の吉牟田陽さん。

工場で出る端材やおがくずが燃料のバイオマス発電も自家消費用は稼働中で、2年後には毎時9950キロワットを売電する発電所も完成する。

再造林率は3~4割

能代市は秋田県北部の米代川河口に位置し、流域の広大な森林から原木を集積して江戸時代から繁栄。明治以降は輸出もして「東洋一の木都」と称された。

だが高度成長期以降は安い外材に押され、住宅の洋風・プレハブ化も加わって国産材の需要が低迷。この10年でも同市から多くの製材・卸業者が消え、伐採後の林地を放置する事業者も増えて、「木都」の面影は薄れていた。

林野庁によると伐採後の再造林率低下は全国的傾向で現在は3~4割。植え付け地の整理から苗木の運搬・植え付け、藪の下刈り、間伐が欠かせないが、安定した木材需要と収益が見込めず、従事者の高齢化や若者離れなども加わり、これだけの手間と費用をかける再造林をためらう林業事業者が増えているのだ。

林業も機械・自動化が進むが、国内の山林の多くが急傾斜地で導入が難しい面もある。だが再造林しなければ、50年後には国産材を供給できなってしまうとも言われており、林野庁や各自治体は再造林を促すさまざま支援策を講じている。

国産材へ回帰

中国木材の堀川保彦社長は「先人が育てた日本の山林を守ろうと平成16年から国産材事業に着手し、宮崎・日向や茨城・鹿島などに続く6番目の工場が能代。ここは豊富な森林資源で原木を安定確保できる」と強調。能代市の誘致担当者は「工場候補地として能代は最後に上がったが、県と一番熱心に誘致したことも同社に評価された」と喜ぶ。

堀川社長はさらに「住宅業界はウッドショックと円安による輸入木材不足・価格高騰で国産材へ回帰している」と指摘する。

ウッドショックは新型コロナウイルス禍を経た欧米やアジアの住宅需要急拡大によって引き起こされ、日本では円安が外材の価格高騰に拍車をかける。

能代市の斉藤滋宣市長は国産材回帰を見据え「中国木材には原木価格に再造林コストを上乗せしてもらい、造林や原木産出が安定すれば、能代の木材産業全体が活性化し、私が目指す令和の木都能代復興が実現する」と意欲を見せる。

40社・団体でつくる能代木材産業連合会の佐々木松夫事務局長は「大手進出は地元製材業者の脅威だが、雇用・資本投下増で地域全体が活性化する」とした上で、「〝能代の木材〟の知名度が上がれば地元業者の拡販にもなるので、共存共栄を目指して中国木材にも当会に加盟してもらった」と話している。(八並朋昌)

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