被災者支援で「はたらくくるま」に仲間入り 全国の自治体で導入広がる水洗トイレカー
産経ニュース / 2024年6月30日 11時0分
地震災害などで断水した際、被災地ではトイレが深刻な問題となる。元日に発生した能登半島地震では長期間の断水で水洗トイレが使えなくなり、不衛生な環境下で用を足さなければならない被災者の心身への悪影響が顕在化した。「救世主」となったのは、自治体などから派遣された水洗トイレカーだ。全エリアをカバーすることはできなかったものの衛生環境の改善に寄与し、導入に向けた動きはその後も各地で着実に広がっている。
車いすも使用可
「涙が出るほどうれしい」「トイレを我慢しなくて良くなったので気持ちが楽になった」「これなくしては、(支援)活動ができなかった」
兵庫県南あわじ市は1月7日、所有する自走式水洗トイレカーを石川県珠洲(すず)市に派遣した。医療従事者らが集まる拠点に配置したところ、被災者や医療従事者からこんな感謝の声が寄せられた。
車椅子の人やオストメイト(人工肛門、人工膀胱(ぼうこう)利用者)も使える仕様で計5室を備え、最大1千回程度の利用ができる。水洗と手洗い用の水は、近くにある川の水を浄化して使用。当初、汚物タンクが満杯になれば、トイレカーごと金沢市内の処理施設へ向かって廃棄することも想定されたが、石川県七尾市などの民間業者の処理用バキュームカーがくみ取り作業を行ったため、現地に置いたままで対応できた。
ただ、支援開始から約1カ月間は1日のうち2、3時間は使用禁止となる状態が続いた。午前中にバキュームカーがくみ取り作業を行って金沢市へ向かうが、午後にもう一度くみ取り作業を行って金沢市に向かうことが難しく、汚物タンクがいっぱいになってしまったためという。
現地に赴いた南あわじ市危機管理課の阿部志郎課長(53)は「当時は道路事情が悪く、暗い中でバキュームカーを走らせることが危険だったため」と説明。それでも被災者らのトイレ環境改善に大きく貢献し、現地での活用は5月末まで約5カ月間に及んだ。
維持費は「普通の車と同じ」
南あわじ市がトイレカー1台を導入したのは、令和2年11月。発生が確実視される南海トラフ巨大地震に備えてのことだ。災害現場への投入は今回が初めてだった。
能登半島地震での活動が報道などで知られ、南あわじ市には30以上の自治体などから問い合わせが相次いだ。「仕様書を送ってほしい」「維持費はどれくらいなのか」…。関心の高かった維持費について、阿部課長は「普通の車と同じ。車検にかかる費用などです」と解説する。
各地で関心が高まる中、和歌山県みなべ町は、オストメイト対応可能で計5室を備えたトイレカーを今年度中に導入する方針を決めた。みなべ町も南あわじ市同様に海に面しており、南海トラフ巨大地震発生時に甚大な被害を受けることは必至だ。
町の担当者は、自分たちの地域以外に関しても「何らかの形で被災された所があれば、このトイレカーを持っていって役に立ちたい」と意気込む。
相互派遣でより効率的に
「この『輪』を広げていく必要性がある」と力説するのは、すでにトイレカー3台を所有する愛媛県宇和島市の赤松芳和・危機管理課長(49)。同市は南あわじ市や長崎県島原市との間で各自が持つトイレカーの相互派遣に関する協定を結んでいる。
宇和島市は平成30年の西日本豪雨で災害関連死を含め13人が犠牲になったほか、浄水施設が大打撃を受け、約1カ月間は水洗トイレが使えなかった。その教訓から令和3年3月に3台を導入。うち2台はトイレルーム2室を備え、もう1台は1室だがオストメイト対応だ。
能登半島地震では、石川県輪島市に3台とも派遣した。赤松課長は「3台あっても大規模災害時にカバーできるエリアは限定的で、トイレ対策が十分とはいえない」と指摘。「全国各地の自治体が1台ずつ持って被災地に派遣しあえば、より効率的に衛生環境を守ることができる」と強調する。
牽引(けんいん)型の「トイレトレーラー」の導入を支援する一般社団法人「助けあいジャパン」(東京都)によると、現段階で全国22の自治体が導入済み。このほか、10以上の自治体が今後の導入を計画しているという。
珠洲市内では6月21日現在970戸が断水したままで、約20台が稼働。南あわじ市の阿部課長は「各自治体がトイレカーを導入し、相互に協力できる態勢を構築できれば」と期待している。(藤崎真生)
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