紅葉美しい秋の里山へおすすめのハイキング 中高年がけがなく楽しむための3つのポイント
産経ニュース / 2024年11月17日 8時0分
紅葉が美しい季節。ハイキングシーズンが到来した。趣味で年中あちこちの山へ出かけているが、真夏の炎天下という過酷さから解放され、この季節は一層テンションが上がる。だが先日、登山中に転んでけがをしてしまったばかり。幸いにも大事には至らなかったが、ひとたび間違えれば事故につながる危険も潜んでいる。特に中高年は自分で思うよりも体力が落ち、リスクが高まっていることを身をもって実感した。安全に楽しく、全身で大自然を味わいたい。
男性は50代、女性は40代が最多
起伏に富んだ地形の日本列島。火山地や丘陵を含む山地の面積は国土の約4分の3を占めている。各地には地元の人たちに親しまれている里山がそれぞれにあり、気楽に登山を楽しむことができる環境に恵まれているだろう。
公益財団法人日本生産性本部が発行する「レジャー白書」によると、1年間に1回でも登山をしたことがある人の数を推計した参加人口は、令和5年は480万人。新型コロナウイルス禍で3年は440万人に減少したが、少し回復傾向にあるという。
とはいえ、平成30年の680万人には及ばず、登山を将来やってみたい、あるいは今後も続けたいとする回答者の割合は、さまざまな余暇活動の中で40位。国内旅行や読書、動物園や植物園などの観光、外食、温浴施設などからは離され、登山そのものが人気かどうかは微妙なところだ。
さらに注目したいのは、登山の参加人口の年代別構成比だ。令和5年の推計では男性は50代(13・7%)、女性は40代(8・7%)が最多。女性は70代(8・1%)、60代(6・8%)、50代(6・2%)と続いた。
アクセスの良い六甲山系
私自身、参加人口の厚い年齢層に当てはまる一人。子供の頃、山好きの両親に連れて行ってもらったが、その後かなりのブランクを経て、ここ十数年、再び楽しむようになった。確かに山で見かける登山者は同年代が多い。若い世代にも山の魅力を知ってもらいたいといつも願っている。
「日本には低山から高山まで素晴らしい森があります。何より森を感じること、そして景観美が魅力ですね」。好日山荘グランフロント大阪店に勤務する日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅡ)の木徳尚代さんはこう解説する。仕事と趣味で山に関わり、令和3年にガイドの認定を取得した木徳さん。山野草が好きで、一眼レフのカメラを片手に、春は花を、秋には紅葉を追いかける。
「年齢にかかわらず、登山はそれぞれのペースで始めていただけますよ」。特に初心者向けのおすすめの山は、兵庫県南東部に位置する六甲山系。神戸市などの都市部に近い国立公園で、公共交通機関など登山口へのアクセスも良い。ロープウエーやケーブルカーもあり、ドライブで夜景を見に行くこともできる。「小さな子供からお年寄りまで、そして初心者からベテランまで楽しめます」
六甲山系にはたくさんの山があるが、中でも西部にある再度(ふたたび)山は整備された歩きやすい道が多く、初めての登山に最適。また、コースによっては最短1時間程度で登ることができる東お多福山もおすすめなんだそう。これからの季節、紅葉も楽しめそうだ。
トレーニング、装備、遭難防止対策
しかし、山には危険も潜んでいる。
警察庁が公表している令和5年の山岳遭難概況によると、遭難の発生件数は3126件、遭難者数は3568人。統計の残る昭和36年以降、最多となっている。
実は私自身も今夏、けがをしたばかり。なんでもない段差で転倒し、腰や臀部(でんぶ)を強打した。休暇で3日連続登山をしていた最終日の下山途中。中高年の身体は自覚しているより疲労していたのかもしれない。
同概況によると遭難者のうち40歳以上が全体の79・9%。道迷いが33・7%と最も多く、次いで滑落が17・3%、転倒は16・9%だった。
年齢とともに体力も筋力も落ちる。「階段を上り下りしたりウオーキングしたりという日常のトレーニングや、定期的に登山をするなど体力維持は大事。太りすぎなどの体重管理にも注意したいですね」と木徳さん。また、道に迷った際は落ち着いて地図やGPSなどを確認。沢に下らず、道に戻れない場合は110番するなどし、ツェルト(簡易用テント)などをかぶって体が冷えないように待機して動かず待つことも重要という。
もちろん、ハイカットの登山靴や、速乾性のある下着、重ね着できる服装、レインウエアといった雨具など準備しなくてはならない装備はたくさんある。
「自分の足で登り、歩く。自然は優しく、厳しいということを、人間は山から教えてもらっていると思います」
準備を万全に整え、山を楽しんでみませんか?(田野陽子)
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