特定外来のキョン、カミキリ侵入阻止へ褒賞金、目撃情報2千円、10匹退治500円 茨城県
産経ニュース / 2024年7月14日 8時0分
茨城県は、特定外来生物のキョンやカミキリの県内定着を阻止するため、目撃情報を提供した人や駆除した人に褒賞金や奨励金を贈る制度を始めた。繁殖力が高く、生態系への影響が懸念されるためだ。担当者は、「一度定着すると完全な駆除はほぼ不可能。広く関心を持ってもらいたい」と話している。
県によると、キョンはもともと、中国東南部や台湾に生息し、体長70~80センチ、体の高さ35~40センチ、体重7~10キロで、背面が茶褐色をした小型のシカ。生後半年程度で妊娠し、約1年で出産する繁殖力が特徴だ。生態系への悪影響の恐れもあり、環境省は平成17年、特定外来生物に指定した。農林水産物への被害のほか、夜間や早朝の「ギャー」という大きな鳴き声への苦情もある。
千葉で大量繁殖
近年では、千葉県の房総半島や伊豆大島(東京都)で定着している。
千葉県では、勝浦市の観光施設から脱走し、野生化したとみられ、16年度に5市町だった定着域は令和4年度に17市町まで広がった。県は定着域の〝北上化〟を防ぐため、市原市と一宮町を東西に結ぶ「分布拡大防止ライン」を設定。集中的な捕獲を実施し、費用についても国の交付金と合わせ1頭で最大6千円を市町村に補助している。
だが、生息数は平成29年度の約4万9600頭から令和4年度には約7万1500頭にまで増加。4年度は9000頭近くを捕獲したものの、増加を食い止めきれていないのが実情だ。
茨城県内定着を阻止
千葉県に隣接する茨城県でキョンが初めて確認されたのは平成29年5月。千葉との県境に近い神栖市の橋の上で車にひかれて死んでいるのが見つかった。以後、一昨年12月と昨年9、12月、いずれも雄の4頭が確認された。雄の行動範囲は雌の倍以上で、単独行動が多いことから、専門家は「茨城県へは侵入の初期段階」とみているという。
茨城県が創設した褒賞金は、今年4月1日以降に県内で撮影された写真や動画を対象に1情報当たり2000円を支払うというもの。狩猟免許所持者で、市町村から有害鳥獣捕獲許可を受けた人が県内で捕獲すれば1頭で3万円を払う。
県が目撃情報に褒賞金を設けた背景には、キョンの繁殖力や、中型犬程度の大きさで人目に触れない茂みに身を潜められるため、専門家の力だけでは繁殖に追いつかないとの危機感がある。担当者は「制度に関心を持ってもらい、できるだけ多くの人の協力で監視の網を強化し、県内定着を阻止したい」と話す。
カミキリにも
一方、茨城県はサクラやウメといった樹木内部に寄生し枯死させる「クビアカツヤカミキリ」、街路樹などに深刻な影響がある「ツヤハダゴマダラカミキリ」の被害を防ぐため、成虫10匹の駆除で500円分の奨励金(プリペイドカード)を贈る活動も始めた。
いずれも、中国や朝鮮半島で生息していたものが輸入木材などに付着し、国内で繁殖したとみられる。生態系に害を及ぼす可能性があり、特定外来生物に指定された。特に、クビアカツヤの繁殖力は「在来カミキリの3倍」とされる。
光沢のある黒色で、クビアカツヤカミキリは体長25~40ミリで前胸部が鮮やかな赤色。ツヤハダゴマダラカミキリは体長20~35ミリで、触角に明瞭な白色の帯がある。成虫発生のピークは6~8月。現在、全国13都府県で被害が確認され、県内でもこれまで水戸、土浦、つくばなど計12市町で確認されている。
このため、県は9月までの間、小学生以上の県民を対象に、成虫の発見・駆除に奨励金を贈呈する活動を始めた。具体的には、成虫を発見・通報するか、成虫を踏みつぶして駆除し、県生物多様性センターか12市町の環境主管課に持参すれば、10匹で500円分の奨励金(プリペイドカード)と交換する。生きたまま持ち運ぶことは法律で禁止されており、注意が必要だ。
担当者は「子供には外来カミキリについての啓発、保護者には駆除へのインセンティブを促す狙いもある。多くの人の協力で被害抑制を図りたい」とする。(森山昌秀)
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