1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

ゴビ砂漠で二足歩行最大級の恐竜足跡を発見 高校教諭から転身した「化石ハンター」の原点

産経ニュース / 2024年9月10日 8時0分

恐竜の足跡化石について説明する岡山理大の石垣忍・恐竜学博物館長

モンゴル・ゴビ砂漠で白亜紀後期(約7000万~6600万年前)の地層から世界最大級の二足歩行恐竜の連続する足跡などを発見したと、岡山理科大(岡山市北区)が6月の調査結果を発表した。調査隊の石垣忍・同大恐竜学博物館長は「歩幅から計算した歩行速度は時速約10キロで、体長15メートル超の恐竜としてはとても速くてびっくりした」。巨大な足跡化石が確認できたことで、「最大級のハドロサウルス類の骨格がモンゴルで発見される期待感が出てきた」という。

体長15メートル超で歩幅は約3メートル

調査は、30年以上にわたり恐竜化石発掘の共同調査を続けてきた岡山理科大(岡山市北区)と、モンゴル科学アカデミー古生物学研究所が共同で実施。今回の調査場所はゴビ砂漠西部のブギンツァフで、恐竜足跡化石(幅92センチ)3個の歩行跡や、13個の足跡(幅85センチ)が24メートル連続した歩行跡が見つかった。

3個の化石はやや内股でほぼ一直線上を歩行し、歩幅は約3メートル。植物食の鳥脚類、大型ハドロサウルス科のサウロロフスとみている。

推定される体長は、ティラノサウルスやタルボサウルス(大型獣脚類)よりもはるかに大きい15メートル超で、石垣館長は「体重は推定十数トン。前脚の跡はなく二足歩行は確実。世界最大級の二足歩行動物がモンゴルにもいたことが裏付けられる」。ハドロサウルス類としては中国で発見されているシャントンゴサウルス(体長15~17メートル)に匹敵する巨大骨格の発見が、「モンゴルでも期待できる」と話す。

さらに新しい発見も期待

一方、13個の連続した歩行跡は歩幅約2メートルで歩行速度は時速約5キロと推計される。石垣館長は、「幅80センチ以上の足跡化石でこれほどの歩数の報告例はない」と言い、「足跡は恐竜の歩行時の姿勢や歩き方、足裏の解剖学的特徴、歩行速度、集団行動か単独行動か、などを解析するうえで貴重な資料」と説明する。

また足跡化石は、高さ7~8メートルほどの崖の中腹から一部が突出している形などで見つかった。足印と呼ばれるもので、柔らかい泥の上に付けられた足跡のくぼみに砂が堆積して時間をかけて固まり、上に地層が積み上がる。泥の部分が先に風化して削られて足印が表出したり崖下に落下して散乱したりしていた。

恐竜化石は他に、米国やカナダ、アルゼンチン、ヨーロッパ、中国などで多く見つかっているが、モンゴルは上の地層が薄く激しい構造運動もなかったため、圧力による変形や変質、火山活動などによる熱の影響がみられず、保存状態がよいのが特長だ。石垣館長は「モンゴルはおよそ1億年前から恐竜時代が終焉(しゅうえん)する6600万年前まで、白亜紀中期から末期の地層がそろっている。新しい発見の可能性が期待できる場所」と指摘する。

じわじわと湧く発見の喜びと価値

「化石は数千万年前からの手紙のようなもの。恐竜が地層という便箋に、足跡という文字で手紙を書いてくれたイメージ」。第一発見者となった石垣館長は、「自然界、恐竜が自分を選んでくれたという感覚で、メッセージをきちんと伝えなければと身が引き締まる」と話す。

石垣館長は大学時代に地質学を学び、卒業後は高校教諭に。構造地質学の勉強も並行しつつ、青年海外協力隊員としてモロッコに渡った。派遣目的は博物館運営への協力で、恐竜足跡化石が相次いで発見されていたことから自ら提案して発掘プロジェクトに取り組んだ。

その後、自然科学博物館の開設を計画していた岡山市の民間企業に加わり、さらに岡山理科大に移ったという異色の経歴の研究者だ。

モンゴルでの恐竜共同調査は平成5年に民間企業が始め、27年に岡山理科大に引き継がれた。30年に恐竜学博物館を開設し、来年度から生物地球学科の恐竜・古生物学コースを発展改組して恐竜学科を創設するなど、恐竜研究に力を入れている。

石垣館長は今後の調査隊に参加する学生らに向け「ドラマティックな展開を期待するかもしれないが、発見の喜びはじわじわと湧き、価値がだんだんと見えてくる。フィールドワークの総合的な面白さをじわじわと染み入るように感じてもらいたい」と訴えかけた。(和田基宏)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください