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「第二アクアライン」実現へ期成同盟会設立 SNSきっかけに千葉・房総で建設構想再燃 深層リポート

産経ニュース / 2024年11月9日 8時0分

房総半島の千葉県富津市と、東京湾を挟んだ先にある神奈川県横須賀市を高架橋か海底トンネルでつなぐ「東京湾口道路」を実現しようという壮大な構想が再び、動き出した。この15年ほど事実上、凍結されていたが、千葉県側の13の自治体などで構成する期成同盟会(会長=高橋恭市富津市長)が10月に設立された。地元の財界や地方議員も含め、既にある千葉県木更津市と川崎市を結ぶ東京湾アクアラインに続く「第二のアクアライン」を夢見て国への働きかけを積極的に進める。

「橋が欲しい人、割といる説」と投稿

「思いを1つにすれば先人が夢見た建設も実現可能だ」

10月29日。木更津市で開かれた期成同盟会の設立総会で館山市や鋸南町など10市3町の首長らが一堂に会し、高橋会長はこう語った。

東京湾口道路を巡る動きは60年以上前にさかのぼる。昭和30年代以後、湾口周辺部の自然条件や浦賀水道の船舶の航行実態の調査が行われた。平成6年には地元自治体が建設促進に向けた協議会を立ち上げ、誘致活動が同9年の東京湾アクアライン開通後も盛んに行われた。

だが、同20年に流れが変わった。従来型の開発から、整備や保全に重点を移した国の国土形成計画に「長期的視点から取り組む」と記され、調査は打ち切られた。

転機は昨年、訪れた。SNSのX(旧ツイッター)に「ここに橋が欲しい人、割といる説」の文言に、東京湾口道路を示すルート案の画像を添えた投稿が話題を集めた。地元財界も再び要望の声を上げ、賛同の声が広がった。

建設構想再燃の背景にはアクアラインの慢性的な渋滞がある。国と千葉県が毎年約5億円ずつ負担し、通行料金を値下げした影響もあり、増加した交通量を減らす必要に迫られた。首都圏での災害発生時に備え、リスク回避のため、移動、輸送の代替機能を確保する必要性も増した。

仮に実現すれば人とモノの流れがよりスムーズになり、房総、三浦両半島のにぎわい創出にもつながる。

「日本全体の活力に」

「日本経済を牽引(けんいん)するのは首都圏だ。東京湾口道路はその潜在能力を最大限、引き出すのに不可欠だ。房総半島をうまく活用すれば日本全体の活力にもつながる」

かつて国土交通省でアクアラインの建設に携わった一般社団法人「全日本建設技術協会」の大石久和会長も大きな期待を寄せる。新たな道路建設には兆円単位のコストがかかるとみられるが、大石会長は「そのカネは必ず、生きてくる」と断言する。

懸念の声もある。敬愛大学(千葉市)の根本敏則特任教授(交通経済学)は多方面へのメリットは認めながらも、「人口減少が進むなか、得られる効果は限定的だ。莫大(ばくだい)な国費の投入には見合わない」と指摘する。公共事業での費用対効果の指標とされ、値が大きいほど費用に対して効率よく効果が発生することを意味する費用便益比について「事業が妥当とされる1を超えないだろう」とも語る。

その上で「有料道路は利用者負担が原則で、料金収入で費用を賄えるかも心配だ。東京湾口道路では、アクアラインの値下げに必要だった国や県からの補助金には期待すべきではない。現状の混雑を緩和するのであれば値下げの打ち切りこそが先決だ」と主張する。

再び動き出した夢の懸け橋の構想。期成同盟会は年明けにも、国などへの要望活動を本格化させる。

東京湾口道路

千葉県富津市から浦賀水道を横断し、対岸の神奈川県横須賀市までの延長約17キロの道路。東京湾アクアラインや、千葉県市原市から東京都大田区までを結ぶ第二東京湾岸道路などとともに東京湾を8の字状に結ぶ東京湾環状道路の一部として位置付けられる。実現すれば、東関東自動車道、東京湾岸道路、横浜横須賀道路も含め、首都圏での大環状道路網が構築される。

記者の独り言

「半島性」という地理的ハンディキャップを背負う千葉県だが、東京湾口道路は都心部に向かっていたヒトやモノの流れを変える可能性を秘める。既存の道路や橋の管理、補修にも巨額の費用が必要となるなか、いかにこれだけ大規模な公共事業を実現するのか。早期建設を訴える期成同盟会側には過去の調査内容を検証した上で課題点を早急に洗い出し、「国益」にも必ずつながるとの証明が求められそうだ。(松崎翼)

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