1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

大雨注意報レベルでも発生…3人死亡の松山城土砂災害1カ月 崩落メカニズムの謎解明へ

産経ニュース / 2024年8月12日 8時0分

松山城城山の土砂崩れ現場を視察する技術検討委員会のメンバーら=7月29日午前、松山市(代表撮影)

松山市中心部に位置する松山城山麓で7月12日に発生し、男女3人が死亡した土砂崩れから1カ月。土砂の撤去が進み水道も復旧、松山城の営業も再開し、徐々に日常を取り戻しつつある。ただ、今回の土砂崩れは注意報レベルの土壌雨量指数で発生しており、崩れた上部の道路には亀裂、崩落斜面の地中には石垣がみつかるなど、現地の特殊性が引き起こした可能性もある。愛媛県は国や市、学識経験者らでつくる「土砂災害対策技術検討委員会」を設置し発生メカニズムの解明に乗り出した。

大量の土砂が流れ込み

県などによると、土砂崩れは松山市緑町で7月12日午前3時50分ごろから4時50分ごろにかけて3回にわたり発生。松山城が立つ城山(標高約130メートル)の斜面が平均幅約50メートル、高さ約100メートルにわたり崩壊した。

大量の土砂が住宅街に流れ込み、住宅被害は全壊3棟、一部損壊12棟。90代男性と80代女性の夫婦、息子の40代男性の死亡が確認された。

市は同日から道路や住宅に流入した土砂の撤去を進め倒壊家屋周辺以外の大部分を完了。県は二次被害を防ぐための土嚢設置作業を10日に完了。市も崩壊斜面の応急復旧工事の準備を進めている。

少ない雨量、道路の亀裂…

一時休業していた松山城も7月31日に再開したが、今回の土砂崩れ発生のメカニズムについては不明点が多い。

県のまとめによると、7月10日~12日の降水量は213ミリで、平年の7月1カ月分の雨量を観測。ピークは11日午前4時で時間降水量41ミリだった。しかし、その後は降雨がない時間帯もあり、最初の土砂崩れが発生した12日午前3時は20ミリ未満にとどまっていた。

このため、発生当時は大雨注意報のみ。大雨警報や洪水警報の発表や土砂災害警戒情報は出ておらず、「災害がすでに発生している可能性が極めて高い」とされる警戒レベル5相当の「緊急安全確保」が市から出されたのは午前5時だった。

土砂災害の警報は、土壌にしみ込んだ水の量を指す土壌雨量指数が、地形などを元に定められた基準値を超えた場合に出される。市の担当者は「当時の気象状況からは危険性を判断できなかった」と打ち明ける。

さらに現場の一部は、斜面角度が30度よりも緩やかで谷幅などの地形条件を満たしていないことから、県が指定する土砂災害警戒区域(イエローゾーン)や土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)にも該当していなかった。

一方で、崩れた斜面上部の山頂付近に整備されていた緊急車両道路の擁壁が傾いており、工事で擁壁の3分の2を撤去し土砂崩れ直前の7月9日には土砂の流出を防ぐブルーシートがかけてあったことが判明。道路には大きな亀裂があったことも分かった。

メカニズム解明と再発防止を

天候条件や地形条件から予見できなかったいわば〝想定外〟の災害。そして周辺で行われていた工事。県はこれらの因果関係を含めた土砂崩れのメカニズム解明と再発防止に向けた検討を行うため「土砂災害対策技術検討委員会」を設置した。

7月29日に開かれた第1回会合では、土砂崩れ直後に専門家が撮影した動画やドローンで撮影した画像などが示され、土砂崩れ現場周辺は水が集まりやすい谷地形だったことや、土砂が流れた流域の中腹に、地下水の流れ道となる「パイピングホール」の断面があったことが報告された。

また、愛媛大学の研究者グループが行った調査で、崩壊斜面の中腹に石垣とみられる人口構造物や捨土があったことも共有。現地視察も行われ、崩壊した斜面上部の緊急車両道路の復旧工事現場などを確認した。

委員長を務める愛媛大の森脇亮教授は「緊急車両道路の工事現場は水が入らないようになっていたため、工事そのものは災害に影響していないと思う」と説明。一方で「擁壁の傾きや道路の亀裂は、道路を支える地盤が緩んだり、ずれたりして(土砂が)崩れる前兆現象だった可能性がある」との見方を示した。

国土交通省国土技術政策総合研究所の鈴木啓介砂防研究室長は、山頂に松山城という歴史的建造物が建つ環境を踏まえ「崩壊箇所の特殊性が多分にあるのではないかと感じた」と言及。「広い範囲の水が集まる地形とみられるので、現場の特徴を浮き彫りにしたうえで、実効性のある対策を導き出すことが大事だ」と述べた。

技術検討委員会は今後、緊急車両道路の擁壁の傾きや亀裂の要因分析や、捨土などの分布状況の確認、地表・地中の水の流れの整理などを進め、年末をめどに報告書を取りまとめる方針という。

森脇教授は「まだ調査は緒に就いたばかりで、原因解明には多角的な検討が必要だ。しっかり議論を進めたい」と話した。(前川康二)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください