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寒い冬、体にしみる通勤前の一杯 福島・喜多方の「朝ラー」 2時間で100杯以上の店も

産経ニュース / 2025年1月3日 8時0分

らーめん一平で人気の「じとじとラーメン」。見た目と違って意外にも味はあっさり=福島県喜多方市(芹沢伸生撮影)

通勤や通学前の慌ただしい朝、読者の皆さんは何を食べて1日をスタートしているだろうか。「蔵とラーメンの町」として全国的に知られる福島県喜多方市には、「朝ラー」と呼ばれる朝食にラーメンを食べる文化がある。「朝からラーメン?」。ちょっと信じ難い習慣は本当なのか。現地へ飛んだ。

誕生のきっかけには諸説

喜多方市発祥の「喜多方ラーメン」は、札幌ラーメン、博多ラーメンと並び日本三大ラーメンのひとつに数えられる。基本はしょうゆ味だが、店によって色合いや風味はさまざま。中には、塩味や塩としょうゆの中間の味などもあるが、いずれもあっさりした味付けが特徴になっている。

喜多方観光物産協会によると現在、同市内で喜多方ラーメンを提供する店は約90店あり、令和6年5月時点でそのうち約15軒が朝から営業している。「朝ラー」誕生のきっかけは「昔、工場の夜勤明け労働者のために始めた」「野球の朝練の後に食べられるようにした」など、いくつか説があるものの、同協会のスタッフは「真偽は不明。はっきり分からない」と話す。

平日の朝、同市で「朝ラー」営業を行う「らーめん一平」を訪ねた。この日は厳しい冷え込みで、店の外は雪も舞っていた。入り口の看板には「7時~18時30分」と書かれ、普通のラーメン店と営業時間帯が異なることが分かる。スープの香りが漂う暖かい店内に一歩入ると、一瞬で眼鏡が曇った。

午前4時から仕込み

店内のテーブル席では家族連れが会話を弾ませている。カウンター席で1人、ラーメンを食べていた男性は、出勤前に車で訪れていた。客が途切れることはなく、店のスタッフは忙しそうに動き回っていた。午前7時45分のラーメン店とは思えない光景だった。

同店の社長、小枝敏樹さん(34)は「陽気のいい時期と比べると、冬の朝のお客さんは3分の1ほどで地元の方が多い」という。最盛期は4月の桜の時期から大型連休までだといい、「忙しい日は開店から夕方まで、お客さんが途切れない」(小枝さん)。午前7~9時の2時間でラーメンが100杯以上出ることもあるという。

小枝さんは2代目。「朝ラーは先代である父が始めた。自分もラーメンを食べて小学校に行ったことを覚えている。うちは25年くらいやっていると思う」。小枝さんは毎朝午前4時に店に来て、1人で仕込みを行っている。

帰省のたびに来店「もう習慣」

埼玉県越谷市に住む会社役員の男性(67)はこの日、4人で訪れていた。男性は「妻の実家が喜多方で毎月1度は帰省する。朝のラーメンも欠かさない」といい、「もう習慣。食べられないとガッカリする」と真顔で話す。ただ「埼玉で朝からやっているラーメン店は知らないし、食べたくもならない」と笑う。

同店のコンセプトは「毎日食べられるラーメン」。試しに一杯、食べてみた。注文したのは人気だという「じとじとラーメン」。喜多方ラーメンに豚の背脂を加えた一品。「朝から重いかも…」との思いもよぎったが、食べてみると意外にもあっさり。

真冬の朝、心までポカポカになった。(芹沢伸生)

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