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埼玉発・菊水堂「できたてポテトチップ」 製造当日にスピード出荷、無添加で鮮度生かす

産経ニュース / 2024年8月4日 10時0分

「できたてが一番」と話す岩井菊之社長(右)と岩井太一営業部長=埼玉県八潮市(柳原一哉撮影)

埼玉発・菊水堂の「できたてポテトチップ」が異色の人気で話題だ。交流サイト(SNS)の「インスタグラム」のほか、各メディアにも再三取り上げられ、コアなファンを持つ。秘密はその名の通り「できたて」であること。同県八潮市の工場から、製造したその日のうちに出荷するこだわりが、消費者の胃袋をがっちりつかんでいる。

「できたてが一番おいしい」

製造工程は、まだ土がついたままの1トン以上のジャガイモを洗浄・皮むきした後、薄くスライス。フライヤーで揚げてから味付けを行い、焦げの除去など検品後に包装して商品に仕上げる。

トラックに積み込まれるまでの時間はわずか30分。製造したその日に出荷し、近県だと消費者の食卓に上るのは翌日という異例のスピード感だ。

「食品は何でもできたてが一番おいしいんです」。岩井菊之(きくじ)社長は速さにこだわる理由をそう説明した。

平成12年に社長に就任した岩井氏。それまでポップコーンや煎餅などさまざまな商品を手掛けていたが、設備更新に多額の費用がかかることが悩みだった。

そこで経営資源を集中させようと売れ筋への一本化を決意。競合するカルビーなど大手との差別化を図るため、「できたてポテトチップ」を看板にし、試行錯誤しながら、現在の製造ラインを構築してきたのだという。

「ジャガイモ農家の応援団」

「できたて」に着目したことについて岩井社長はこう説明する。

「先代の父も祖業の瓦煎餅の製造では素材を大切にしていた。それにならい自分も最大限、素材のジャガイモの良さを伝えたいと。そのため鮮度のいい『できたて』を早く食べてもらうのがいいと考えました」

スピード感だけでなく、素材の良さを伝えるため添加物は不使用とし、材料はジャガイモ、塩、油しか使わない徹底ぶりだ。このため賞味期限は2週間に設定している。

ジャガイモの選択もこだわり、その季節にもっともおいしい味となるよう、取り寄せるジャガイモの産地もこまめに変える。

素材感を訴求するため塩分0・7%という厳密な取り決めも特徴だ。やや薄味の仕上がりになるものの、そのさじ加減がジャガイモの味を生かす上で譲れない一線になっているという。

岩井社長はそんな自身を、「ジャガイモ農家の応援団なんです」と言い表す。

足元の売上高は年間約5億円。社長就任時は約3億円だった。できたてポテトチップが原動力となったことは疑う余地がない。

この間、テレビ番組で取り上げられ、注文が殺到したことも。タレントがSNS上で共有したりすることも増え、認知度アップに伴い押しも押されもせぬ人気商品に成長した。

製造当日のできたてを求め、関西方面から埼玉の工場併設の売店にやって来る消費者もいるほどだ。

引き継いだ赤いロゴ

ただ、岩井社長は「注目を集めるからからこそ品質管理には注意を払っている」と気を引き締める。

現状、主力のできたてポテトチップはネット通販比率が35%。営業マンを雇う余裕がなく、ネット通販以外に選択肢がなかったからだが、SNSで派手な宣伝はせず、真正面からいいものを販売するというスタンスを続けたいという。

新商品開発にも注力し、最近は埼玉県民のソウルフード「肉汁うどん」味も販売。長男の太一営業部長は「コンソメ味も研究している」と話す。

創業71年。レトロ感あふれる赤いロゴ「キクスイドーのポテトチップ」は先代から引き継いだ。それとともに、これまで通り消費者に真摯(しんし)に向き合う経営姿勢も維持していく。岩井社長の思いだ。(柳原一哉)

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