「百名山」日本一の長野県は遭難件数も全国最多 県警山岳救助隊「自分に合った山選びを」
産経ニュース / 2024年8月4日 12時0分
日本百名山のひとつ「常念岳」近くの山小屋「常念小屋」越しに、北アルプスに沈む夕日を楽しむ登山者ら。左奥のとがった山は日本百名山のひとつ「槍ケ岳」=7月20日午後6時43分、長野県松本市(石毛紀行撮影)
「日本百名山」29座、「3千メートル峰」15座、いずれも「日本一」を誇る長野県には、この夏も大勢の登山者が全国から訪れている。それは同時に日本一「山岳遭難」が多い長野県に遭難多発シーズンが訪れたことを意味する。今年は過去最多を上回るペースで発生しており、県警は救助態勢のレベルを高めるとともに、登山者に「自分の実力に合った山選びを」と呼び掛けている。
ヘリ救助訓練
県警山岳遭難救助隊は7月8、9の両日、県警ヘリコプターを使った救助訓練を実施した。県警本部と機動隊、県内6署に配置されている計44人の隊員に、ヘリで要救助者を救助する体験を積ませるのが目的だ。
9日に長野県松本市の信州まつもと空港(県営松本空港)で行われた訓練には、隊員20人と県警航空隊6人の計26人が参加。ホバリング(空中での静止)中の機体から、ワイヤロープで人や荷物を上げ下げするホイストを使って降下したり、つり上げたりする訓練などを行った。
4月に山岳遭難救助隊員になったばかりの新人隊員2人は「自分自身の空中での不安定な態勢に緊張した」「ヘリの音が予想以上にうるさく、アイコンタクトや大きなジェスチャーの重要性がよくわかった」と話した。
隊員らとともに自らも訓練に参加した岸本俊朗隊長は「ヘリを使った救助は思っているほど簡単ではない。余裕のない中でも安全確保の手順を確実に」と指導していた。
山岳遭難の一報が県警に入ったとき、やみくもにヘリが飛ぶわけではない。多くの場合、現場に近い隊員が地上から駆け付け、要救助者の状況や最適な救助方法を判断し、必要があればヘリでの救助になる。しかし、3千メートル級の山は天候が変化しやすく、空気も薄いため、高度な技術が必要。視界が悪ければ飛ぶこともできない。
「地上での確認がとても重要。訓練で山岳遭難救助隊員がヘリを体感することで、安全に早く遭難者を救助できる可能性が高まる」と航空隊の山本勝義隊長はいう。
ヘリ訓練に先立つ6月中旬、山岳遭難救助隊は白馬連峰でテント泊をしながらの救助訓練を実施。岩場でのザイルを使った要救助者引き上げや搬送など、実際の場面を想定した厳しい訓練を行い夏場の救助ピークに備えた。
過去最多ペース
警察庁のまとめによると、令和5年中に全国で発生した山岳遭難は3126件、遭難者数は3568人。いずれも統計が残る昭和36年以降で最多だ。遭難者のうち1割近い335人が死亡または行方不明、負傷者は1400人にのぼっている。
なかでも登山者あこがれの山が多い長野県は突出して多く、遭難件数も全国最多。発生件数は302件、遭難者数332人で、こちらも統計を開始した昭和29年以降で最多だ。遭難者のうち死亡または行方不明は40人、負傷者は160人にのぼる。令和6年は、前年より1割以上多いペースで山岳遭難が発生しており、7月28日までに163件、183人が遭難、このうち30人が死亡している。特に7月は多く、前年の約1・6倍。遭難者の約7割が60歳以上だった。このペースでは、過去最悪を更新する可能性がある。
県警は、登山者が集中する北アルプスを中心に山岳遭難救助隊員を常駐させるとともに、主要な登山口40カ所に登山相談所を開設。各地区の山岳遭難防止対策協会と連携しながら、個々の登山者に対し遭難防止の啓発活動を行っている。
最近の山岳遭難の原因に、登山者自身の準備不足、体力不足、認識の甘さがあげられるという。登山計画書が家族に共有されておらず、心配になった家族から捜索依頼があるケースも目立つという。
長野県は平成27年に全国で初めて「登山安全条例」を制定し、登山者に登山計画書の提出を義務付けた。令和4年中の登山計画書の届け出数は31万8877件で、条例制定翌年の平成28年に比べて2倍近くに増えている。それでも2割程度の人は未提出とみられている。
県警山岳遭難救助隊の岸本隊長は「自分の実力に合った山を選び、天気予報も必ず確認してほしい。登山計画書を提出するだけでなく、家族との共有も」と、全国から訪れる登山者に呼び掛けている。(石毛紀行)
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