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「富士山ローソン」の黒幕はオーバーツーリズム対策に一石 財政負担増す自治体に名案なく

産経ニュース / 2024年6月20日 11時0分

奥に富士山を望む「本町二丁目交差点」。横断歩道に立ち止まってポーズをとる外国人観光客も=山梨県富士吉田市(平尾孝撮影)

山梨県富士河口湖町のコンビニの上に富士山がのったような写真が撮れる撮影スポット「富士山ローソン」の黒い目隠し幕設置はオーバーツーリズム(観光公害)を象徴する事案として、国内外で注目を浴びた。「マナー違反が目立つ中で仕方ない」といった肯定的な意見が多いが、〝観光名所〟をなくす措置に「この地域に来ないでほしいというメッセージになる」との懸念や批判もある。ただ、今回の異例の措置は、有効な手立てが見つからないオーバーツーリズム対策に一石を投じることになった。

大幅に人減り、改善傾向も

「観光客と住民の安全やプライバシーを守るための対策だ。苦渋の決断だったが妥当な措置だ」

「ローソン河口湖駅前店」の富士山ローソンの目隠し幕の設置が完了した3日後の5月24日の記者会見で、富士河口湖町の渡辺英之町長は措置の意義を強調した。幕設置で富士山ローソン撮影のため、観光客が殺到していた道路反対側では「大幅に人が減り、改善に向かっている」と成果も示した。新たに目隠し幕にQRコードをつけて、町内の他の撮影スポットへ誘導していく。

イタチごっこは続く

とはいえ、設置直後から幕には約1センチ程度の穴が開けられ、そこにスマートフォンのカメラを使って、富士山ローソンを撮影するケースも目立つ。

幕設置後は河口湖駅前店と同じようなコンビニの上に富士山が乗っているような写真が撮れる「ローソン富士河口湖町役場前店」に外国人観光客が流れ、道路にはみ出たり、民家の敷地に入ったりして撮影するなど、マナーの問題が発生。「外国人観光客と対策のイタチごっこ」(地元住人)が続く状況ともなっている。

富士山ローソン同様に、昭和レトロな商店街の向こうに富士山を望む景色が交流サイト(SNS)で〝バズった〟富士吉田市の「本町二丁目交差点」。今や多い日には撮影のため1日5千人近くが訪れる中で、市はオーバーツーリズム対策の一環として、付近に公衆トイレ付の駐車場を約1億円を投じ新設した。

さらに、同交差点で車道に出て撮影する観光客対策で複数の警備員を配置せざるを得ず、年間2億円程度の経費が必要になる。ともに大きな財政的負担だが、オーバーツーリズムの抜本対策に至ってはいないと自省する状況だ。

ナビ技術進化が背景に

観光政策に詳しい日本総合研究所調査部の高坂晶子主任研究員は、「かつてはメジャーな観光地巡りが中心だったが、『暮らすように旅をする』といわれるように、旅先の生活体験を重視するスタイルが増えている」と変化を指摘。SNSで簡単に〝バズる〟と同時に、ナビゲーション技術の進化で「地理に不案内でもすぐに行ける環境ができ、想定していない場所でも観光客が一気に集中してしまう」とオーバーツーリズム増加のメカニズムを解説する。

それゆえに富士山や京都などの観光名所に限ったことでなく、「どこで問題が起きてもおかしくない」状況を各自治体が認識し、常にオーバーツーリズムが起きうることを前提にする必要がある。一律的な特効薬もない中で、「オーバーツーリズムや問題が起きることをシミュレーションし、一定の対策を想定しておくことが欠かせない」と高坂氏は助言する。(平尾孝)

富士山ローソン SNSで紹介されたことで、「ローソン河口湖駅前店」は2年ほど前から富士山ローソンとして外国人観光客の人気撮影スポットとなっている。富士急行線の河口湖駅から近く、周囲では常時数十人が撮影していた。コンビニの駐車場やその前の歩道でも撮影できるが、道路を隔てた向かいの歯科医院前からの方がアングルがいいと人気があり、撮影者が殺到。ごみのポイ捨て、通院者向けの駐車場への無断駐車などのマナー違反に加え、自動車やバスが行き来する道路の、横断歩道ではない場所を渡るなどの危険行為が相次いだことから、富士河口湖町が歯科医院前の歩道に高さ2・5メートル、幅20メートルの目隠し幕を設置するなど、異例のオーバーツーリズム対策を実施した。

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