1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

年300校が廃校…小学校跡地どうする グルメ複合施設や水族館にリノベした神戸市の極意

産経ニュース / 2024年12月1日 12時0分

湊山小学校をリノベーションしたコミュニティー型複合施設「NATURE STUDIO」=神戸市兵庫区

少子化による児童数減少の影響で廃校になった小学校跡地について、民間企業などが新施設としてリノベーション(大規模改修)する神戸市の事業が軌道に乗っている。平成8年に廃校となった旧北野小(同市中央区)は11月8日、グルメ複合ビルとなってオープン。27年に廃校の湊山小(同兵庫区)は一昨年7月、水族館のある施設に生まれ変わり、市民らの人気を集める。かつて子供たちの元気な姿があふれた場所を、にぎわいを創出する拠点へ-。成功のカギは、地域ごとの実情や解決すべき課題に即した〝コンセプト〟を掲げることだという。

昭和モダンな校舎をリノベ

「地域のみなさんに長く愛される施設にしたい」。旧北野小学校の校舎をリノベーションしてオープンしたグルメ複合施設「神戸北野ノスタ」のゼネラルマネジャー、冨田大介さん(40)は、大きな期待を寄せる。

昭和6(1931)年に建てられた旧北野小学校の校舎は、木目の階段やアーチ型天井の廊下など神戸らしいモダンな造りが特徴だったが、平成8年に廃校となった。

令和5年、神戸市は「旧北野小学校跡活用事業」の実施事業者を公募。公募型プロポーザル方式でGLION(神戸市中央区)が事業者に選ばれ、今回の施設は同社とアクアイグニス(東京都中央区)との合弁会社が運営する。冨田さんは「廃校を活用した施設であるということに注目してほしい。93年前に建てられた建物をリノベーションし、昭和初期の小学校らしい部分も生かした建物自体の新旧融合が大きな特徴」と言い切る。

1階に話題の専門店、3階は「学びの場所」

3階建ての1階は6店舗が集まる物販フロアとなっており、パンや日本酒、スイーツなどを販売。また、世界的パティシエとして知られる辻口博啓(ひろのぶ)さん(57)が手掛けるチョコレート専門店「ル ショコラ ドゥ アッシュ」が関西で初めて出店した。辻口さんは「チョコレートとともに歩んできたことが、(今回の)関西初となる神戸での出店につながったと感じている」と感慨深げ。また、2階のレストラン「Kitano Grill&Bar」では神戸牛や兵庫五国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)の食材を楽しめる。

一方、3階は旧北野小学校の体育館をほぼそのまま残した。イベント開催や貸スペースとして活用するという。冨田さんは「ここではスイーツづくり体験やSDGs(持続可能な開発目標)体験など子供向けのイベントを中心に展開し、かつてここが小学校だったように『学びの場所』という機能も残していきたい」としている。

ゾウガメやコツメカワウソ

また、創立から141年の歴史に幕を閉じ、平成27年に廃校となった市立湊山小学校の跡地は、令和4年7月にコミュニティー型複合施設「NATURE STUDIO(ネイチャースタジオ)」として生まれ変わった。同施設内にはクラフトビールの醸造所やフードホール、学童保育所などが入居しているが、市民の人気を博しているのが「みなとやま水族館」だ。

職員室や理科室、図書室などがあった東側校舎の1階空間で熱帯魚や淡水魚、ゾウガメやコツメカワウソなどの生き物を間近に見ることができる。全体的に水槽の位置を低くしており、子供の目線でも魚などをじっくりと観察できるよう工夫が施されている。また、床にはクッションが置いてあり、足を伸ばして座ったりゴロゴロと寝転んだりしながら、くつろいで生き物のようすが楽しめる。

地元住民の意向も反映したコンセプト

増え続ける廃校をどのように生かすかは全国的な課題となっている。文科省が令和3年度に行った廃校の活用状況の調査によると、全国で平成23~令和2年度の10年間に廃校となった公立小学校は2989校で、年間約300校に上る。同省では平成22年9月から「みんなの廃校プロジェクト」を展開しており、未活用の廃校施設などをホームページ上で公表、マッチングも行っている。

そんな中、公募型プロポーザル方式で小学校の跡地活用を促進し、一定の成果を挙げている神戸市。事業者選定で最も重視している点について、市行財政局資産活用課の川﨑一希担当係長(38)は「各校で定めるコンセプトに沿った提案かどうか」と説明する。

旧北野小学校では『上質な神戸のライフスタイルを発信する拠点として、来街者や地域住民に親しまれにぎわう施設』が公募のコンセプト。一方、湊山小学校は『若年世帯の増加傾向をさらに促進させる施設』だった。地域ごとに違う実情や課題解決に即したコンセプトを設けることは「活用事業の継続性を大きく左右する」と考えているからだ。

また、地元の小学校が廃校になると〝跡地はどうなるんだろうか〟と不安を持つ地元住民の声も少なくないことから、コンセプト設定にあたっては「もちろん、地元の意見も反映するようにしている」という。

市教委によると、市内小学校の児童数は約6万9500人でピーク時(昭和56年度)の約13万人からほぼ半減。学校数もこの30年間で11校減少した。今後も廃校を余儀なくされる小学校は出てくるとみられており、地域の活性化や課題解決に寄与する廃校活用がますます求められそうだ。(香西広豊)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください