妻亡くし「死にたい」と泣くおじいちゃん ペットの「たま子さん」に里親探しで起きた奇跡 ねこから目線。の現場から
産経ニュース / 2024年9月28日 12時0分
5年前、心臓が凍るような連絡から始まり、心の底からホッとして終わった「たま子さん」という猫のことを紹介したいと思います。
始まりは、静岡市を拠点に活動する「キャットレスキュー静岡ねこの会」代表のこころさんからの電話でした。「静岡の動物愛護センターに来てるんだけど、たま子っていう茶白の老猫が収容されてるんだよね。もしかしてと思って…」。送られてきた写真を見ると、年をとってはいるけれど、私たちが知っているたま子さんに間違いない―。そう思いました。
たま子さんは17年前、私が高校生だった頃に地元の静岡で関わったノラ猫さんでした。老夫婦がご飯をあげていたら頭数が増えてきて、近隣住民から苦情が出てしまっていた現場にいた1匹でした。TNR(不妊手術をして元の場所に戻すこと)のお手伝いをしましたが、たま子さんは妊娠していたため、老夫婦のおうちで出産から子育てまで見守ってもらい、生まれた子猫は里親さんを募集して譲渡。その後たま子さんは不妊手術をし、そのまま老夫婦の飼い猫になったのでした。
そのとき生まれた子猫3匹のうちの1匹の里親になったのを機に、こころさんは「静岡ねこの会」を立ち上げ、10年以上保護猫活動に取り組まれています。活動の一環で愛護センターに立ち寄った際、収容されているたま子さんに気が付いたのでした。
新幹線に飛び乗り、静岡へ向かいました。あんなに溺愛されていたたま子さんが愛護センターにいるなんて、のっぴきならないことが起きてしまっているにちがいない。静岡に着いてたま子さんのおうちに直行すると、介護用ベッドで寝ているおじいちゃんが私に気付き、よろよろと玄関を開けてくれました。
「久しぶりだねぇ。1年前におばあちゃんが亡くなったの。それからたま子さんと2人で暮らしてきたんだけど、脳梗塞をして足が悪くなって、家で転んで起き上がれなくなってしまったの。でも金曜の夜だったから、たま子さんを置いていけないと思って、2日間はいつくばって過ごして、月曜の朝に動物愛護センターに電話して、たま子さんを託して僕は救急車で病院に行ったの。殺処分になるかもしれないって言われたのに。ごめんね、ごめんね、たま子さん、ごめんね…。来月6日でおばあちゃんの一周忌だから、それくらいに僕も死にたい。今回の入院で逝けると思ったのに…」と嗚咽しながら顛末を説明してくれました。
「たま子さんはまだ生きているよ、何とかしたくて帰ってきたんだよ」と伝えると、さらにおいおい泣くおじいちゃん。とはいえ、12歳のたま子さんの里親を探すのは簡単ではありません。
どうしようかと思案していたら、たま子さんの子供2匹の里親さんからの古い年賀状が大事に飾られているのが目に留まりました。譲渡したのは11年も前で、連絡はつかないかもしれないけれど、可能性はあると思いメールを送った夜、返信がありました。「現状をうかがってしまっては、じっとしておれません。わが家でよろしければお世話したいと思います」。なんてミラクル!
翌日、動物愛護センターで待ち合わせました。皆で顔を合わせるのは、おじいちゃんの家で子猫の面会をして以来です。職員さんに連れてこられたたま子さんは、ご家族が持ってきたキャリーに自ら入っていきました。
たくさんの奇跡のような偶然が重なり、たま子さんの命はつながりました。でもこんな奇跡はほんの一握りで、各地域の動物愛護センターや保健所に収容されるペットでは、「飼い主死亡や健康上の理由による飼育放棄」の割合が増加しています。
高齢者にとってペットは癒やしを与え、健康寿命を延ばしてくれる大切な存在でもある中で、その子たちの命をどう守るか、真剣に考えなければいけない状況になっています。次回は高齢者とペットの問題について取り組んでいることを書きたいと思います。
◇
大阪を拠点に、猫にメリットがあると思えることなら何でもお手伝いする「猫の便利屋さん」を営む小池英梨子さん。ネコの目線で取り組む活動から見えるあれこれを、月1回つづってもらいます。
小池英梨子
立命館大学大学院応用人間科学研究科対人援助学領域修了。「ねこから目線株式会社」(大阪市)代表、「人もねこも一緒に支援プロジェクト」(NPO法人)代表。平成16年から猫の保護譲渡やTNR活動をスタート。大学院でノラ猫をテーマに「共生と共存社会のリアリティ」について研究し、29年に猫の多頭飼育崩壊など、ヒトの福祉と猫問題への並行支援が必要なケースに対応するため「人もねこも一緒に支援プロジェクト」を立ち上げる。30年に保護猫・ノラ猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」を設立。京都、福岡、沖縄にも拠点を置き、ライスワークもライフワークも猫にまみれている。
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