1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

人口約7800人、予算額約57億円…図書館「ゼロ」の香川県琴平町が抱える悩みと解決策

産経ニュース / 2025年1月31日 11時0分

「ハッカソン」の優秀チームを表彰する「ことひらまちじゅう図書館」プロジェクトの嶋田代表

「こんぴら参り」で知られる香川県琴平町は県内で2番目に小さな町で公立図書館がない。平成29年から有志による飲食店や公共施設などに本棚を置くプロジェクト「ことひらまちじゅう図書館」が始まったが、大きな広がりを欠いている。そんな中、昨年12月に町内の学習塾に通う中高生が協力することが決定。代表の嶋田貴子さんは「大人では出てこないアイデアを生かし、利用しやすく、本にもっと親しめる場所にしていきたい」と願いを込める。

30カ所にスポット設置

琴平町は面積約8・47平方キロ、人口は約7800人で、令和6年度一般会計当初予算額は約57億円。予算が限られている中、平成29年頃に町立図書館建設の機運が高まったものの、実現に至っていない。町教育委員会は「町民からの要望は受けているが、この間、教育関係だけでも中学校舎の耐震補強、小学校・こども園の各統合整備などを優先せざるを得なかった」と説明している。町は令和元年から、近隣4市町の公立図書館の図書利用カードを希望者に交付している。

まちじゅう図書館プロジェクトは、「本と人がつながれる居場所」「人との出会いから郷土や文化の継承が行える場所」「町立図書館建設の機運醸成」を目指し、子育て支援グループの活動から派生した。飲食店や医療機関、企業の事務所などに本棚を置いた「小さな図書館」(スポット)をつくる取り組みで、約30カ所設置されている。

中学校の図書館司書でもある嶋田さんは「人が生きるうえで本が必要だと思っており、公立図書館がない環境下でも本と気軽に親しめる機会を提供したい。幼い頃に本が身近な環境にないことが読書離れの傾向を一段と強めている」と話す。

ハッカソンで解決模索

それぞれのスポットの「館長」が自主的に運営し、趣味に特化した個性的な本棚がある一方、返却場所の自由度や他のスポットの情報提供が少ないなど、利便性や認知度に課題を抱えている。

嶋田さんは若い視点で解決策を考案してもらおうと、昨年12月にクラウドサービス開発販売会社のインターパーク(札幌市)の協力を得て簡易版「ハッカソン」を開催した。ハッカソンは、「ハッキング」と「マラソン」を組み合わせた造語で、プログラミングやソフトウエア開発に際し、短期間で集中的に協力して作業を行うイベントの総称だ。

ことひらまちじゅう図書館の広報・マーケティング担当として「どうしたら中高生の利用が増やせるか」という課題を設定。約25人の中高生がビジネスのノウハウを教わり、アプリ作成ツールを使って議論。「勉強を行えるスペース設置」「入りやすい雰囲気づくり」「所在地の分かりにくさを解消する、目につく表示」などのアイデアが出た。それらを踏まえ、同社からの支度金5千円を基に、読書会を開いてPRするとともに、具体的に本の種類や収集方法などを固めていく予定だ。

大人を触発してほしい

ハッカソンに参加した中学3年の小林結志さん(15)は「中高生向けのスポットが少ないので、イベントによる集客や開館時間の設定などを工夫し、楽しいと感じられる場所をつくりたい」と意気込みを語った。

インターパーク営業部の樫山果歩さんは「公立図書館がないことを自分事として捉え、こうしたいという思いが伝わってきた」と感想を述べ、梶原友昭取締役は「理論を学び、アイデアを出して終わりではなく、実践してほしい」と話した。

「精力的な活動に大人が触発されて全体が活性化することを期待する。町民に広く認知され、公立図書館開設の機運が高まってくれれば」と嶋田さん。全国で図書館づくり活動に携わる一般社団法人「日本カルチャーデザイン研究所」(千葉県成田市)の花井裕一郎理事長は「琴平では(まちじゅう図書館が)地域発のコミュニケーションツールになっている。本があることで人と人とが交流し、まちを元気にする原動力になる」とエールを送る。(和田基宏)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください