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畑や田んぼの土壌に生息する菌が発電 メンテ不要で低コスト、「微生物燃料電池」の可能性

産経ニュース / 2024年9月13日 8時0分

みかん畑に埋設される微生物燃料電池=愛媛県八幡浜市(前川康二撮影)

有機物を分解する際に電子を放出する「発電菌」の働きを利用した微生物燃料電池の実用化に向け、四国電力と東京農工大が愛媛県八幡浜市のみかん畑で実証実験を開始した。現地の土を用いた微生物燃料電池を農園内に埋設、継続的に発電できるかどうかを確認する。将来的には気温や水分量を計測するスマート農業の推進や防災分野での活用を目指す。

土壌にいる「発電菌」

「発電菌」とは、ジオバクター菌やシュワネラ菌など、電子を放出する性質を持つ微生物の総称。畑や田などあらゆる土壌の中に生息しているという。その存在は約100年前から確認されていたが、取り出せる電力の少なさや活用方法に課題があり、いまだ商業利用には至っていない。

東京農工大の松村圭祐特任助教らのグループは、安価で設置場所を選ばない一方、供給力が低いという微生物燃料電池の活用方法を模索。使用電力が比較的少ない各種センサーを使って農地の見回り作業などの負担を軽減する「スマート農業」での利用を目指すことにした。

松村特任助教らは長時間発電し続けた電力をためて一気に放出し、機器を動かすのに必要な電力量をまかなうシステムを開発。実験室で実際に温度計や湿度計などの電子機器を動かし、そのデータを自動収集することに成功した。

四国電力が連携、みかん畑で実証実験

同大のこうした活動を聞きつけた四国電力は、自社で行っている農業分野での活用や、防災分野など発展性が見込めることから連携を打診。同社のグループでみかん栽培を手がける愛媛県八幡浜市のみかん畑で実証実験を行うことになった。松村特任助教は「みかん畑での実証実験はおそらく全国初」という。

実験で使う電池は容積約350立方センチの箱状で、中に現地で採取した土と電極が入っている。

発電効率を高めるため、負の電極周辺は常に水に浸っており正の電極周辺は常に乾いた状態を保つ構造。発電菌が常時活動できるよう外気や水も取り込めるようになっており、1基あたり1時間で約10マイクロワットを発電する。

この日は電池6箱を約30センチの地中に埋設。電池には電圧計を取り付けており1・8ボルトの電圧を確認した。

今後、来年3月まで電力量と電圧を計測。土壌の違いや季節、天候、気温変化などによって発電量に差がでるかどうかを調べる。また、発電量に応じたセンサー機器の回路設計も並行して進め、将来的には農地の温度や湿度、照度、画像などを自動収集し、遠隔地で確認できるようにするという。

スマート農業をはじめ地域課題の解決を

かんきつ類生産量日本一の愛媛県では、険しい山の斜面で生産されるケースが多い。農地の見回りも一苦労で、担い手不足で農地の集約が進み、管理する園地が広くなっていくなかで効率的な生産は喫緊の課題だという。

微生物燃料電池は発電所からの送電や太陽光パネルより設置コストが低く、地中に埋設するため日光が当たらない森や茂みにも設置できる。また、長期間メンテナンスが不要でその土地の土壌を利用して発電するため環境負荷も少ないという。

松村特任助教は「スマート農業だけでなく、例えば斜面の傾きを感知して土砂崩れの危険性を予測するなど、自然環境のデータ収集はさまざまな分野で活用できる。その普及のネックとなっていた電源の問題を微生物燃料電池で解決できれば」と話す。

四国電力の三島宏之新規事業部長は「微生物燃料電池の実用化と普及に携わることで、さまざまな地域課題の解決につなげていきたい」としている。(前川康二)

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