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月保険、宇宙エレベーター建設構想 裾野広がる宇宙関連産業、巨大市場に大手企業続々

産経ニュース / 2024年11月9日 13時0分

さまざまな企業が出展した北海道宇宙サミットのブースエリア=10月10日、北海道帯広市(坂本隆浩撮影)

ロケット打ち上げ拠点として注目を集める北海道で参入企業の裾野が広がっている。10月上旬に帯広市で開催された「北海道宇宙サミット2024」では、ロケットや衛星、打ち上げ技術など直接かかわる事業者以外にも、旅行や損害保険、製紙業など多様な企業が出展した。北海道での宇宙事業に伴い、国内で10年間に4千億円近い経済波及効果があるとの試算も示されており、注目度はさらに高まりそうだ。

大手企業も宇宙に関心

北海道宇宙サミットは今年で4回目。帯広市内の会場には約800人が集まり、オンライン参加を加えると約2100人がこのサミットに関心を寄せた。

会場では宇宙事業に参画している企業関係者らが登壇し、将来の可能性などをテーマに活発に意見交換した。企業ブースではスポンサーを含めた25社・団体が自社製品などをアピールした。実行委員会構成メンバーの大樹(たいき)町の担当者は「今回も大きな反響があった」と手応えを語る。

出展企業の内容はユニークだ。多くは打ち上げロケット部品の研究開発や自社開発したソフトウエアなどだが、三井住友海上火災保険は、打ち上げから月面着陸までを補償する「月保険」や「宇宙事業者向け総合支援サービス」をはじめ、将来の商用宇宙旅行を見越して開発中の「宇宙旅行保険」などをPR。日本旅行も将来構想で掲げる「宇宙渡航サービス」の旅行プランをイメージしたチラシを配布し、一歩先を見据えた取り組みとして紹介した。

大手ゼネコンの大林組は2050年を目標としている未来の宇宙交通輸送システム「宇宙エレベーター建設構想」を示し、未来を先取りした取り組みとして存在感をアピール。

さらに大手製紙メーカーの日本製紙は、関連会社が持つ建設やインフラ、メンテナンスなどの技術力を活用したロケット製造支援や部品物流支援などの潜在能力をPRした。同社の担当者は「技術を応用することで宇宙ビジネスに間接的にかかわれる」とし、他企業と一線を画した新しい視点での挑戦を強調する。

実用化は射程圏内

北海道の宇宙産業振興を側面支援する北海道経済部の担当者は、今回の宇宙サミットを振り返り「道内で宇宙関連に携わるスタートアップ(新興企業)などを見ていると、『ものづくり』から『売る』ステージへと変わってきている印象がある」と指摘する。

前回までの宇宙サミットは関心を喚起するためのイベント的な色合いが強かったが、今年はロケット打ち上げ場などがある大樹町の北海道スペースポート(HOSPO)を中心とした関連企業の集積や技術力の向上などを背景に、実用化が射程圏内に入ったことを印象付けた。同経済部担当者は「企業や団体が本格的な〝仕込み〟に入り、業界全体の熱量も上がっている。この動きに歩調を合わせるように宇宙産業への関心が高まり、進出を検討する企業が増えているのではないか」と分析する。

ロケットの小型化技術が進むことで研究開発費や製造コストが低減され、新規参入の垣根が低くなる。それによって間接的にかかわる分野も増えるとみており、「今後も企業活動の支援を主軸とした産業振興を進めたい」と意気込む。

データ活用分野に注目

今回のサミットでは、三井物産の担当者が北海道の宇宙事業に伴う国内の経済波及効果はロケット製造、衛星の運搬などによって2033年までの10年間に約3865億円に上るとの試算を示した。事業の進展によって関連産業はどのような裾野の広がりを見せていくのか。企業の新規参入支援などに取り組む北海道経済産業局の担当者は「打ち上げた衛星のデータをどう利活用していくかが一つのポイントになる」と強調する。

可能性のある活用例として、自然災害時に地形データを活用した被害規模の把握▽鉄道の線路変形の早期発見▽ヒグマ出没の早期検知―などを挙げ、これらのデータを分析できる企業進出などが期待できるという。

外国人技術者や海外からの観光客の受け入れ態勢を整える中で「住環境だったり、帯同する家族のためのサポートだったり、宇宙とは直接関連しない分野での広がりも考えられる。今はまだ想像できない領域もあるはずで、今後が楽しみ」と期待を込めた。(坂本隆浩)

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