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横浜国際メインプール廃止案波紋 水泳関係者は「大会運営に支障」 立案過程に疑問の声も

産経ニュース / 2024年7月7日 10時0分

6月30日には日本パラ水泳連盟などが会見し、横浜国際プールのメインプール存続を求めた=横浜市都筑区の横浜国際プール(橋本謙太郎撮影)

横浜市が、夏はメインプール、冬は体育館として利用している横浜国際プール(同市都筑区)のメインアリーナを通年で体育館化し、メインプールを廃止する再整備計画案をまとめ、波紋を広げている。利用者数などを理由に挙げ、サブプールでも「市民大会」は開催可能としているが、市民大会の定義は明確でなく、水泳関係者は「開催できなくなる大会が出てくる可能性がある」と不安を口にする。通年体育館化の根拠の一つである体育館使用実績の詳細も計画案では示されておらず、市議からも公平性を疑問視する声が上がる。

床転換に年間5100万円、約2カ月の休止

「水泳人口が減ってしまう原因になりかねない」-。横浜市がメインプール廃止計画案をまとめたことが明らかになった6月3日、横浜水泳協会、神奈川県水泳連盟、日本水泳連盟の3団体は市役所で会見し、反対の姿勢を示した。県水泳連盟は計画の見直しを求める1万1129人分の署名を提出。今後、追加分の署名も提出するという。

横浜国際プールは平成10年に開館。メインアリーナ、サブプール、トレーニングルームなどがあり、メインアリーナは5月上旬から9月下旬には国際基準を満たすプール(メインプール)、10月中旬から4月上旬にかけてはスポーツフロア(体育館)としてバスケットボールBリーグの会場などに利用されてきた。

令和4年2月に提出された包括外部監査報告書では、プールから体育館への床転換に年間約5100万円かかることや、転換作業のために約2カ月の利用休止期間が生じる点が問題視され、プールか体育館のいずれかに一本化すべきだとの提案がなされた。

市スポーツ振興課では、老朽化が進んでいるこの施設について、国際大会が平成18年以降は2回しか開催されていないことに加え、平成23年から同30年にかけ、体育館利用者が約111%増加しているのに対し、メインプール利用者は約15%減少していること、さらには令和4年度の体育館利用者がメインプールの利用者を上回ったことなどを指摘。通年で体育館とする再整備計画(素案)をまとめた。

神奈川最大のプール 県予選、マスターズ会場にも

国際プールでありながら国際大会が行われず、利用者も減少傾向とあれば、メインプールの存在意義は乏しいようにも思える。だが、神奈川県水泳連盟幹部は「神奈川で最大のプール。なくなれば大会運営に支障をきたす」と訴える。

関係者によると、県の主要プールでは競泳、アーティスティックスイミング、飛び込み、水球の4種目で年間約90の大会が行われている。そのうち、競泳長水路で全国大会の予選に該当するような大会は、50メートルプールのほかにウオーミングアップ用のサブプールが必要となるが、県内の屋内プールでこの条件を満たすのは横浜国際のほかには、平塚総合体育館プール(観客席数580)と相模原市立総合水泳場(同2043、立見席1000人相当)の2施設だけ。

観客席は関係者の控室としての役割も果たす重要なスペースだが、横浜国際は観客席数約5千(可動席含む)と県内最大で、約800人が出場する県高校総体兼関東大会県予選、1000人近い参加者がいる県中学校総合体育大会や神奈川マスターズ長水路大会などの大規模大会の会場になっている。

もしメインプールが廃止となれば、横浜国際で開催している大会を相模原に移すなどして調整するしかない。

だが、相模原市は「スポーツ施設の専用利用等に係る事務取扱要領」で、大会への貸し出しは年間45日程度にし、土日祝日を月に2日以上は一般利用者に開放することを定めており、市スポーツ施設課では「(大会を)どれくらいできるか、なんとも言えない」としている。

平塚市総合公園課も「市民プールという側面もある。その兼ね合い」といい、どこまで調整できるかは不透明だ。

仮に大会は開催できるとしても、会場のスペースの問題があり、県水泳連盟幹部は「出場選手数を減らしたり、仲間や家族の入場を制限したりしなければいけなくなる大会が出てくる可能性もある」と指摘する。

横浜市はサブプールの機能強化を図ることで「市民大会」は開催できるようにするとしている。だが、市スポーツ振興課では「市民大会」とはどの大会を指すのか「確認していない」といい、どこまで各種大会の受け皿になるかは見通せない。

サブプールについては「階段だらけで車椅子の人たちには厳しい」との意見が利用者側にはある。同課はこうした声を把握せずに計画案を策定したといい、パラアスリートが出場する大会をどうするのか方針も示していない。

ある市職員は「一般論でいえば、その計画が周辺にどんな影響を与えるのかは考える」と話し、同課の計画立案の手法に疑問を投げかける。

体育館使用実績巡り「公平な比較できない」

計画立案の過程について別の問題点を指摘するのは、計画案の報告を受けた市議会「市民・にぎわいスポーツ文化・消防委員会」のある委員だ。「どんな人がスポーツフロア(体育館)を利用しているのか、分からない。メリット、デメリットを受ける人がどんな影響を受けるか、丁寧に説明するべきだ」と指摘する。

市によると、令和3年度にはメインプール利用者が5万7106人だったのに対し、体育館利用者は5万5091人だった。だが、4年度には体育館利用者が13万8136人と急増し、メインプール利用者(6万9854人)の倍近い人数を集めた。

市は体育館への一本化を推進する理由の一つに、4年度の体育館利用者数がメインプール利用者を上回ったことを挙げている。だが、卓球、バドミントン、バレーボール、フットサル、体操など、体育館でできる競技は多様だ。そして、自らプレーする人もいれば、観戦する人もいる。

体育館利用者急増の背景にはBリーグの横浜ビー・コルセアーズ人気の影響があるとみられるが、利用実態の詳細が計画案で示されていないため、再整備をどう進めるのが最適なのか判断できないというわけだ。

別の市議もまた、「議会軽視。内訳を示さないと、公平な比較はできない」と憤る。「横浜で開催できなくなる(子供の水泳)大会があるのなら、子供たちの意見を聞くべきだ」と主張する市議もいる。

問われる情報提供のあり方

話をさらに複雑にしているのは、市では包括外部監査報告書が4年2月に提出される前に通年体育化を意味する「通年床仕様への転換」を検討し始めていたことだ。

3年12月付の内部文書には、調整事項として「8~9年シーズンからのBリーグのレギュレーション変更(大型ビジョン、貴賓室の増設)」などが挙げられ、横浜ビー・コルセアーズによる施設の使用継続を視野に入れていたことをうかがわせる。水泳団体関係者らから「最初から(通年で体育館化するとの)結論は決まっていたのでは」と批判される一因になっている。

横浜市では6月24日から今月31日まで、再整備計画案についての市民の意見募集を行っており、ファクスやメールなどで受け付ける。計画案や概要版は市のサイトで見ることができる。

市では、寄せられた意見を参考に、早ければ9月をめどに計画を確定させる方針で、今後の動向に大きな注目が集まることになりそうだ。(橋本謙太郎)

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