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完全テレワークでチーム雑談ミーティングあり 通勤困難な身体障害者に働く喜び届けたい

産経ニュース / 2024年9月20日 10時0分

通勤に困難を伴う重度の身体障害のある人たちに働き方の選択肢を知ってもらおうと、岡山県早島町で「オンラインお仕事体験会」が開かれた。重度身体障害者を直接雇用し、自宅で働いてもらうなどの活動を展開する在宅就労事業会社が主催。岡山県内の支援学校高等部の生徒や、医療施設などから6人が参加した。9月は障害者雇用支援月間。主催者側は「多様な働き方や、働く喜びが多くの障害者のみなさんに届くよう発信したい」としている。

オンラインで体験会

スタッフサービス・クラウドワーク(SSCW、相模原市)が開催。SSCW本社と参加者をウェブ会議システムでつなぎ、参加者はエクセルの名簿データを処理する作業を体験したほか、実際に在宅で働く社員から体験談を聞いた。

生まれつき上下肢に障害があり車いすで生活する早島支援学校高等部3年、中村優太さん(17)は「会社に通うことの難しさを考えるとテレワークならできそう。パソコン教室に通っていて試験にも合格したし、得意なので生かした仕事に就きたい」。生まれつき心臓に疾患があり常時酸素ボンベが必要な1年の上村凌太さん(15)は「テレワークの具体的なイメージが持て、激しい運動ができない私にはありかなと思った。パソコンに慣れていないので作業ができるか少し不安だ」と話した。

雑談で孤独感緩和

SSCW社は総合人材サービス企業のグループ会社で、38道府県534人を雇用。パソコンとネットワークの環境を徹底的に活用して入力・登録系、補正系、検索・調査系の3種に大別される38業務をグループ会社から受託している。

同社の酒本速男さんは「通院や訪問医療・看護、リハビリなどを利用している障害者は多く、テレワークであれば生活のリズムを崩さずに仕事に取り組める」。一方、1人で作業することは「孤独でもある」と課題についても指摘する。

在宅社員だけで判断して仕事を実行するチームをつくりスタッフは複数チームをサポートするかたち。午前9時~午後7時の間で原則週5日30時間のシフト制で、各自が勤務時間帯や休憩時間などを決められる。入社後2カ月は研修を受ける。

チームで1日3回、ウェブミーティングを行う。酒本さんは「1人で黙々と行う内職的なイメージを持たれがちだが、チームの信頼関係やコミュニケーションが必要。ミーティングでは日常の出来事や趣味などを積極的に話す雑談を重視し、孤独感は和らげられる」と説明。一般企業の入社1年後の身体障害者の定着率は平成29年の統計で60・8%に対し、SSCW社は令和5年6月時点で97・3%と高い定着率という。

体験会に登場した岡山県内在住の脳性まひの在宅社員、瀬川奨稀さん(27)は「スキルアップ、キャリアアップ、経済的な自立を目指し、自分の可能性を探りたい」と語った。

働く気持ちに蓋しないで

厚生労働省の障害者白書によると、令和5年の身体障害者の概数は436万人。同省の令和5年の雇用状況資料によると計64万人で、実雇用率は2・33%となっている。

テレワーク事業は平成27年、福岡県でスタート。発起人は現シニアアドバイザーの岡崎正洋さん。26年、通勤型で障害者を雇用する別のグループ会社の採用担当として、人柄もスキルも申し分がない車いす使用の人と出会ったが、通勤が困難という事情から採用できずに残念な思いをしたという。そこでテレワーク事業を立ち上げ、エリアを拡大し、令和2年に独立・分社化。お仕事体験会はこれまで127回実施され、約670人が参加した。

障害者にとって、勤務形態や職場のバリアフリーの状況、交通機関の有無、天候条件など実際の通勤には想像以上に障壁がある。酒本さんは「働きたいという気持ちに蓋をしてしまっている方が多いと感じる。場所や時間にとらわれず、多くの障害者が働ける可能性をもっと知っていただきたい」と訴えている。(和田基宏)

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