人口11人、瀬戸内の「漫画の島」に新観光スポット 移住者がオープンする憩いの飲食店
産経ニュース / 2024年10月11日 10時0分
瀬戸内海に浮かぶ「漫画の島」、高井神島(愛媛県上島町)。過疎と高齢化が進む人口7人のこの島に今春、家族4人が移住してきた。愛知県から移り住んだ馬場政典さん(49)は、漫画による「島おこし」と、空き家に描かれた数々の漫画キャラクターが織りなす風景にひかれ、妻と娘2人とともに島暮らしを選んだ。10月12日にオープンする島史上初という飲食店「食事処 まんが亭」の運営を担う馬場さんは「島を訪れた観光客に憩いの場を提供したい」と意気込んでいる。
直感で「住みたい」
「ここにしかない風景を見て直感的に『住みたい』と思った。そのぐらいこの島には魅力がある」
馬場さんは昨年5月に初めて島を訪れたときのことをこう振り返る。
愛知県出身の馬場さんは長年、都会暮らしを続ける中、子供が大きくなるにつれて漠然と移住を考えるように。はじめは農業に興味を持ち、移住サイトを閲覧していたところ、「漫画の島」として紹介されていた高井神島にふと目が留まった。
「とにかく一度行ってみよう」。電車と船を乗り継ぎ島に降り立つと、海岸沿いの空き家に描かれている漫画キャラクターの数々と、波や風など自然の音しか聞こえない非日常の空間にあっという間に魅了された。
漫画による島おこしの歴史も聞いた。活動に取り組む長谷部理さん(76)は山梨県で会社を経営する傍ら、島の自然にひかれ、私財を投じて平成28年から漫画の壁画作りなどを続けてきた。長谷部さんから「少しずつ観光客は来るようになったが、食事をしたり、くつろいだりする場所がない」という島の課題を聞き、「島ににぎわいを作る仕事をぜひやりたい」と申し出た。
民宿と自販機のみ
帰宅後、妻の智恵さん(46)に相談すると「不安もあるけど、何とかなる」と背中を押され、娘2人が中学1年と小学3年に進級する4月に移住を決断。家は島の空き家を購入、飲食店は長谷部さんが島で立ち上げた一般社団法人「なたおれの木」の事業としてオープンすることになり、馬場さんは法人の理事として運営する民宿の管理も担うことになった。
島での暮らしは「分かっていたけど、船の時間にあわせ時間内で用事を済ますのは思ったより大変」(智恵さん)。馬場さん家族を含めても人口11人の島には、お金を使える場所が法人の民宿と港の自動販売機しかない。普段の買い物から小中学校への通学まで、全て1日4往復の町営快速船で30~40分かかる町中心部の弓削島まで行く必要がある。
それでも、娘2人は新しい学校になじんでいる様子で、「都会では絶対に経験できない今の暮らしは、きっと彼女たちの人生に大きな糧になる」と感じている。
馬場さん家族の移住に、島の自治会長の木村定さん(74)は「島に子供が住むのは十数年ぶりで、その声が聞こえるだけで気持ちが明るくなる。本当にありがたい」と歓迎する。
住民の憩いの場に
「まんが亭」では馬場さんが仕入れを含め全体を管理し、料理好きな智恵さんが調理を担当。キーマカレー(1200円~)やパスタ(同)のほか、ビールなどのアルコール類も提供する。店の改修やメニュー作りなどにも取り組み、店内には新たに漫画「あばれ花組」の壁画も完成した。
住民がたった11人の島での飲食店経営。無謀のように思えるが、馬場さんは「船の不便さで逆にお客さまを呼び込めるのでは」との期待がある。
馬場さんによると、主なターゲットとなる観光客は今のところ、週末に数人程度だが、船便のダイヤ上、ゆっくり作品を見るとなると3~4時間は島に滞在する必要がある。「作品を見て、食事をして店でくつろいでほしい。ゆっくり時間を過ごすことで島の自然の素晴らしさを感じてもらえたら」と話す。
さらに船で約15分かかる隣の魚島(人口約120人)には飲食店が1軒しかなく、魚島からの来店も期待できるという。
「店を観光客と地域住民の憩いの場にして、島に新たな活気を作っていきたい」。馬場さんの挑戦は始まったばかりだ。(前川康二)
◇
「まんが亭」の営業時間は午前9時半~午後8時。定休日は月、木曜と第2、第4日曜。問い合わせは馬場さん(090・7911・3464)。
高井神島 瀬戸内海の魚島群島西部に位置する島。面積1・34平方キロメートル。平成16年に旧魚島村から上島町に合併。人口は昭和45年の187人をピークに減少傾向が続く。平成28年に離島医療をテーマにした漫画「Dr.コトー診療所」の作者の協力を得て、キャラクターの壁画を作成したことをきっかけに「漫画の島」として地域おこしに取り組む。空き家や公共施設などの壁に描かれた作品は令和6年10月現在で約30点。
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