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福岡・博多の「屋台文化」に大異変 オシャレ系「立ち飲み店」が90店以上、急増の背景

産経ニュース / 2024年7月2日 10時0分

博多の立ち飲みブームをけん引する落水さん

福岡・博多で一杯やるなら屋台でというイメージがあるが、いま福岡市内の繁華街で急増しているのが、安く気軽に入れて、隣り合った人ともコミュニケーションを取りやすいおしゃれな立ち飲み屋だ。数年前に数店だった店は新型コロナウイルス禍を経て90店以上に増え、若者や女性が集まる博多の新たな〝酒飲み文化〟として定着しつつある。

ブームの牽引(けんいん)役ともいえるのが、落水研仁(けんと)さん(44)。平成27年に福岡市中央区警固に「メグスタ」を開業し、現在は立ち飲み6店を経営している。元々、スペインバルを経営しており、2号店を考えたときにスペインで見た立ち飲みスタイルが浮かんだ。酒販店の一角で飲む「角打(かくう)ち」発祥とされる北九州市出身で、大人が楽しそうに立って飲んでいる風景は自然だった。自身も大阪などで働いていたころには利用していたという。

「当時、博多には立ち飲み屋さんは数えるくらいだったので、このスタイルを広めたいと思ったんです」と落水さん。周りからは博多では難しいといわれたが、椅子を置かないことにこだわった。料理は2~300円から、ワインも4~500円から手軽に楽しめ、明るくおしゃれな内装でオープンした。当初は来店客も少なかったが、3、4カ月すると徐々に増え始める。転勤者の多い街とあって、東京や大阪で立ち飲みを知っている客も少なくなく、店は若い女性客からサラリーマンまで幅広い客層でにぎわい始めた。

そうなると同じようなスタイルの立ち飲み店が近隣に増え、それらをハシゴする「タチノミスト」も現れはじめた。30年からこうした店を巡るスタンプラリーを開始。20店で始まった企画は今年、63店まで増え、2週間で約2万9千人が来店したという。落水さんは「スタンプラリーは景品を考えると赤字なんですが、この業態を広げて、町おこしにつなげたいんです」と話す。

角打ち、屋台のDNA

「角打ち」はかつては3交代で働く北九州工業地帯の労働者が仕事帰りの一杯を安く気軽に楽しむ空間だった。しかし、酒販店の減少などもあって、北九州市でも角打ちができる店は減ってきているという。

一方、福岡・中州などで有名な屋台は、平成25年に福岡市が「屋台基本条例」を制定。屋台を観光資源と位置付け、営業時間や屋台の規格などのルールを定め、公募制で筆記、面接などの審査を経て営業権を得られるようになった。

現在では外国人を含めた観光客で行列のできる店も多い。人の距離が近く、客同士や店員と会話が弾むのも人気の理由だろう。だが、地元博多の人で日常的に屋台を利用する人は意外と少ない。観光名所に地元の人が行かないように、屋台は外からのお客さんを呼び込むコンテンツのような存在になっている。

立ち飲みを新たな文化へ

屋台や角打ちの酒飲み文化が背景にある福岡。現在の立ち飲みブームに、落水さんはさらに社会の変化が影響していると分析する。①コロナ禍などで飲み会が減って一人で行動する人が増えた②社会進出や結婚しないことで一人で飲む女性が増えた③リモートワークなどで人と接する機会が減り、コミュニケーションを求めている-。落水さんは隣り合った客同士が会話しやすいように、店内にL字やコの字のカウンターを設け、「コンタクトポイントを作っている」という。

屋台や角打ちに代わる、自宅でも職場でもない「サードプレイス」作りを目指しているという落水さんは「コミュニケーションビジネスの感覚でやっています。もつ鍋やラーメンと肩を並べるくらいに、福岡の立ち飲み文化を広めたい。地元にもまだ体験したことがない人がたくさんいるので、一度来てみてください」とにこやかにグラスを掲げた。(中野謙二)

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