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クマへの警戒強まる山間部の仕事場で相次ぐ研修、撃退スプレーは「4月輸入分も品薄状態」

産経ニュース / 2024年6月16日 12時0分

クマ撃退スプレーの噴射訓練で安全装置を外せずに噴射できないケースも=盛岡市(石田征広撮影)

クマによる人身被害が相次ぐ中、山間部に職場がある事業者の間でクマへの警戒感が強まっている。盛岡市で今年5月、同市を含む2市4町の国有林を管理する盛岡森林管理署と、同市の四十四田ダムなどのダム湖周辺を管理する樋下建設がそれぞれ、専門家を招いて初めてのクマ出没対応研修会を開いた。警戒感の高まりでクマ撃退用のスプレーは品薄状態となり、関係者は対応を急いでいる。

予防策はとっていたが…

岩手県内では昨年6月、森林管理署の非常勤職員が子連れのクマに襲われ重傷を負った。昼食後の休憩中のできごとだった。2人1組で林道を点検し、昼食は1人が林道脇の草地で、もう1人は車内で別々にとった。爆竹と車のクラクションを鳴らす予防策をとっていた。ただ、林道脇の草地で昼食をとった職員は作業中に携帯していたクマ撃退スプレーを昼食時は30メートル離れた車の中に置いていた。

午後0時半ごろ、突然姿を見せた子グマ1頭に驚いて立ち上がった職員の左顔面を、続いて現れた親グマがひっかいた。悲鳴を聞いた同僚が大声でクマを追い払い、襲われた職員と一緒に車で下山し、ドクターヘリで救急病院に搬送された。子グマは2頭いた。襲われた職員の命に別条はなかった。

夜の視力は人間の50倍

「山に入る仕事でクマに遭遇することはこれまでにもあったが、クマ除けの鈴などのおかげで近寄ってくることはなかった。しかし、岩手県内で昨年、非常勤職員がクマに襲われ、重傷を負った。携帯している(クマ撃退)スプレーも使った例がなく、安全に万全を期すために初めてクマ対策の研修会を開いた」

こう説明するのは高橋良次・盛岡森林管理署次長。当日は農林水産省の農作物鳥獣被害対策アドバイザーの谷崎修氏を招き、山に入る職員ら約20人がクマの生態や遭遇した場合の対処法を学んだほか、クマ追い払い用の花火の発射訓練とクマ撃退スプレーの噴射訓練を体験した。樋下建設のクマ出没対策研修会も同様の内容で行われた。

岩手県雫石町在住の谷崎氏は同町職員でハンターでもある。研修会ではクマの生態について、学習能力が高い▽日中は人間と同じ視力だが、夜は人間の50倍▽聴覚は人間の2倍で高い音に敏感▽鼻は犬以上に良く犬の7、8倍で、30キロ離れたシカの死骸を探して食べる▽時速40キロ以上で走る-などと紹介した。

その上で、「クマに遭遇し、静かに後ずさりする際には絶対に目を離さない」「キノコ採りの季節はクマの活動時間の明け方と薄暮を避ける」「人に見られるのが嫌で畑の中に潜んでいる場合がある」などと注意喚起した。

猛スピードで迫られたら…

追い払い用花火とクマ撃退スプレーの発射訓練ではそれぞれ4、5人が1本5発の花火を発射し、訓練用のスプレーを噴射した。このうち安全装置を外して噴射するスプレーは噴射距離が5メートル以上あるが、樋下建設の研修会ではクマ役で迫る社員に噴射する訓練で63歳の社員が安全装置を外せずに終わった。「慌ててしまって」ということで、盛岡森林管理署の研修会でスプレーを噴射した署員も「猛スピードで迫られたら間に合うかどうか…」と不安を口にした。

ところで、昨年からクマ撃退スプレーの入手が難しくなっている。樋下建設も「研修会は昨年から計画していたが、この春にスプレー2本と訓練用5本を購入できたので開くことができた」と担当者。ちなみに、岩手県内の米国製のスプレーの輸入元によると、「秋田県で警察官が襲われてから秋田はじめ各地から問い合わせが相次ぎ、4月に輸入した分も品薄状態」としており、円安で1本2万円以上のスプレーもある。(石田征広)

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