江戸時代に行けたら売りたい本 グルメ、旅行、エンタメ、小説…暮らしが潤うおすすめ9冊 書店バックヤードから
産経ニュース / 2025年1月26日 11時0分
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の放送が始まりました。主人公は江戸時代中期の版元、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)。天下泰平、文化隆盛の時代に、浮世絵師の喜多川歌麿や葛飾北斎らを見いだしたその生涯が描かれます。日本のメディア産業やポップカルチャーの礎を築いたという蔦重にちなみ、今回のテーマは「江戸時代に行けたら売りたい本」。暮らしに芸術、エンタメなど、さまざまな視点で選ばれた9冊をご紹介します。(司会 藤井沙織)
座談会メンバー
百々典孝さん(紀伊国屋書店梅田本店)/佐々木梓さん(ジュンク堂書店大阪本店)/大橋崇博さん(流泉書房)
江戸時代の人は、どんな本を読んでいた?
藤井 今回から、ご紹介いただく本が2冊から3冊に増えました。
百々 どれにするか迷ったけど、一冊は絶対これ!と決めたのが、『江戸っ子の読書事情 現代語訳12遍』(内藤久男訳/宮帯出版社)。教訓本、健康本、レシピ本と、江戸時代のベストセラーがジャンルごとに紹介されていて、当時の人たちが何を読んで楽しんでいたのかが分かる。
藤井 「魚類精進早見献立帳」が気になる。当時の人たちの関心も、現代とあまり変わらないように思えます。
百々 読書ガイドとして売りたいし、何ならこの本でフェアをしたい。当時の日本の識字率は、世界トップクラスやからね。
佐々木 では江戸時代のベストセラーつながりで、『現代語訳 豆腐百珍』(何必醇(かひつじゅん)著・福田浩訳/中公文庫)。豆腐料理のレシピ本です。市井の食卓に並ぶ「尋常品」から「絶品」まで6段階に分けて紹介されています。
百々 きた、食いしん坊! テーマが江戸時代とて、食の本を出してくると思った(笑)。
大橋 当時から豆腐は庶民の食卓に出てくるものやったんですね。
佐々木 「尋常品」の最初に載っているのは田楽。みそも家庭にあるものだったんですね。なじみのない料理も、頑張れば再現できそう。
ヒーローの活躍と公務員の日常
藤井 大橋さんの一冊目は小説ですね。
大橋 エンタメにはヒーローが必要じゃないかということで『銭形平次捕物控(とりものひかえ) 傑作集』(野村胡堂著/双葉文庫)。「陰謀・仇討篇(へん)」や「暗号・謎解き篇」とテーマごとに6冊ある短編集。江戸を舞台に義理人情に厚いヒーローが次々と事件を解決する。
藤井 一冊につき事件が6つも! 物騒な町ですね(笑)。
佐々木 行く先々で殺人事件が起こる探偵ものと同じ(笑)。私は何の事件も起きない武士のリアルな日常を。『元禄御畳(おたたみ)奉行の日記 尾張藩士の見た浮世』(神坂次郎著/中公新書)です。酒好き女好き芝居好きでうだつの上がらない、筆まめなある武士の日記が紹介されています。
百々 御畳奉行って?
佐々木 お屋敷の畳を作ったり張り替えたりの管理をする人みたいです。
藤井 平安貴族の日記のようなものですか?
佐々木 どうしようもないやつのお気楽なつぶやきです。ただ、当時の人にはどう受け止められるんだろうと思って。
旅先はどんな場所?下調べはこれでばっちり
百々 大阪の書店として次に推したいのが、『KŪKAI 空海密教の宇宙』(KŪKAI編集部編)。高野山・総本山金剛峯寺が年1回発行していたムックです。当時の人にとって高野詣(もうで)は、いわばエンターテインメント。そのための道が作られるくらいやからね。
藤井 行く前に空海や高野山について知っておこう、というわけですね。
百々 令和5年の第6号で完結した本ですが、今でも手に入ります。もう一冊は『図典「摂津名所図会(ずえ)」を読む 大阪名所むかし案内』(本渡章著/創元社)。旅行ガイド書としてめっちゃ売りたい。
藤井 名所や名店を押さえて、事前に旅行プランを練れるといいですね。
百々 そう簡単に旅に出られない時代だろうしね。図会が広まれば、現地に行けない人も本で楽しめるでしょ。もちろん現代の人が読んでも、今と当時の景色を比べられて面白い。
ロボットはいないが、仏像がいる
佐々木 私の3冊目は『浮世絵の解剖図鑑』(牧野健太郎著/エクスナレッジ)。浮世絵は当時の流行ですが、見方が分からない人も多かったのではと思いまして。この本があればより深く楽しめ、うんちくを語れるようになる。
大橋 僕も、こういう本があったら便利かな~ということで、『身近な薬用植物ものしり帖』(伊藤優著/ベレ出版)。
藤井 生薬ですね。オオバコに鎮咳去痰(ちんがいきょたん)、クスノキに血行促進、ドクダミに抗菌-本当に身近な植物にいろんな効能が。
大橋 最初に気づいた人ってすごいですよね。植物の知識が、口伝の知恵袋じゃなく書物で広まればきっと助かる。最後は子供向けに絵本で『だいぶつさまのうんどうかい』(苅田澄子文・中川学絵/アリス館)。当時はウルトラマンもロボットもいない。非日常の話なら仏像が動くのが面白いかなと思いました。
藤井 阿弥陀如来に弥勒菩薩に不動明王まで勢ぞろい。なんて眼福な。
百々 大仏さまは大き過ぎて、参加したら危ないやん。
大橋 そう。初めて参加したけど、大きいからまんじゅう食い競争とかうまくできない。ちなみに千手観音は玉入れが得意。ずっと足を引っ張っていた大仏さまだけど、最後は-。
佐々木 おぉ、めちゃくちゃ御利益がありそうなラストですね。
藤井 新しい年の始まりに縁起がいいです。
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