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老後に猫を飼いたい、でも私が死んだら… 「もしも」に備えた新支援「ペットヘルパー」 ねこから目線。の現場から

産経ニュース / 2024年10月26日 12時0分

「飼い始める支援」サービスで譲渡に至った猫さん

ある日、知らないアドレスからメールが届いていました。開いてみると、「〇〇ケアセンターの山田と申します。この度、担当している方が85歳で肺がんで昨日亡くなりました。つきましては、2匹くらいの飼い猫の引き取りをお願いできますでしょうか。身寄りがなく家は無人になっているので3日以内くらいには引き取りにきていただけると助かるのですが」という内容でした。

飼い主さんについては年齢や死因、死亡日まで丁寧に書いてくださっていますが、肝心の猫さんの情報が「2匹〝くらい〟」のみ。先日も6匹くらいの猫の行き場がないと聞いて対応に入ったおうちから黒猫25匹が出てきて、気を失いそうになったばかりでした。

実は、動物保護団体に寄せられる第三者からの引き取り依頼連絡の大半はこのように、人の情報はたくさんあるものの、肝心の猫さんの情報が少なすぎます。そのため、自分たちで対応できるかどうか、猶予期間内に検討することすら困難なことが多くあります。

高齢者の生活に潤いを与え、健康寿命を延ばしてくれる存在としてペットが再注目される中で、飼い主の死亡や施設入所といった理由で保健所に引き取られるペットが増加しています。向き合うべき社会的課題になりつつあります。

苦肉の策として、保護猫譲渡の際に年齢制限を設ける保護団体も多くあります。しかし、成猫の保護猫を譲渡してもらえない高齢者がペットショップで子猫を買う流れになっては、本末転倒です。

もっと猫さんの情報と時間的猶予があれば、失われずに済む命が増えるはず。自分たちにもこの問題に何かできることはないだろうか-。そう考えて昨年から、「飼い続ける支援(ペットヘルパーサービス)」という取り組みを始めました。

ペットシッターという言葉は聞いたことがある方も多いと思います。飼い主さんが不在の間、ご自宅に伺って代わりに猫さんのお世話をするお仕事です。対して、ねこから目線。のペットヘルパーは、飼い主さんの在宅時に訪問し、飼い主さんとコミュニケーションを取りながら猫さんのお世話のお手伝いをします。

例えば、こんな感じです。

「田中さん、こんにちはー!」。ねこから目線。のペットヘルパースタッフが、高齢者のお宅に月1回の定期訪問に訪れました。「田中さんも、ニャーちゃんもお変わりないですか?」「ええ、元気ですよ。でもニャーちゃん爪が伸びてきたみたい」「では今日は、猫トイレ丸洗いに加えて、爪切りもしておきますね」。猫さんだけでなく飼い主さんの様子も確認し、次の訪問の約束をします。

飼えなくなってから初めて関わるのではなく、早い段階から関わりを持たせていただくことで、もし飼い主さんが1人暮らしが難しくなって老人ホームを探し始めることになっても、探し始める段階で状況を把握できます。猫さんが飼い主さんと暮らしている間に、里親譲渡仲介のサポートを行うことができます。また、ペットヘルパースタッフが猫さんの性格や病歴を把握しているので、里親希望者さんとのやり取りもスムーズに行うことができるはずです。

ヘルパーサービスの利用などを条件に、猫さんを飼いたい高齢者に提携シェルターの保護猫さんをマッチングし、譲渡を支援する「飼い始める支援(保護猫譲渡仲介サービス)」も始めました。譲渡後に飼育が困難になれば譲渡元による引き取りを保証し、万が一の場合も猫さんの行き場がなくならないようにしています。

この取り組みは、いち早く高齢者とペットの問題を社会課題として認識していた京都市との協働事業という形で、令和5年2月~8月に市内限定で実証実験を行いました。6年の冬からは地域に関係なく、提供できるサービスとして再リリース予定です。

高齢者とペットが安心して豊かに暮らせるように、ペット信託や遺言、保険や互助会など、全国でさまざまな取り組みが始まっています。ねこから目線。もまだまだ試行錯誤の段階ですが、考え続け、行動し続けていきたいと思います。

大阪を拠点に、猫にメリットがあると思えることなら何でもお手伝いする「猫の便利屋さん」を営む小池英梨子さん。ネコの目線で取り組む活動から見えるあれこれを、月1回つづってもらいます。

小池英梨子

立命館大学大学院応用人間科学研究科対人援助学領域修了。「ねこから目線株式会社」(大阪市)代表、「人もねこも一緒に支援プロジェクト」(NPO法人)代表。平成16年から猫の保護譲渡やTNR活動をスタート。大学院でノラ猫をテーマに「共生と共存社会のリアリティ」について研究し、29年に猫の多頭飼育崩壊など、ヒトの福祉と猫問題への並行支援が必要なケースに対応するため「人もねこも一緒に支援プロジェクト」を立ち上げる。30年に保護猫・ノラ猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」を設立。京都、福岡、沖縄にも拠点を置き、ライスワークもライフワークも猫にまみれている。

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