史上最悪の産廃不法投棄で「ごみの島」になった豊島 調停成立24年の今も残る傷跡と教訓
産経ニュース / 2024年6月21日 11時0分
香川県土庄町の有人島、豊島(てしま)で発生した日本最大規模の産業廃棄物不法投棄事件をめぐり、6月6日、公害調停が成立して24年となった。この節目の日に、認定NPO法人「瀬戸内オリーブ基金」が企画した環境学習が実施され、滋賀県の中学1年生66人が現場を訪れた。基金事務局の清水萌さんは「生まれるはるか前に起きた事件や公害調停を自分ごととしてとらえ教訓を受け継いでいってほしい」と語った。
事件の経緯を事前学習
環境学習には、基金の法人サポーターである学校法人聖パウロ学園光泉カトリック中学校(滋賀県草津市)の生徒たちが参加。生徒たちは、基金が制作したYouTube動画「すぐにわかる豊島事件」3本、計約36分を視聴した。
業者によって不法投棄で汚染され続けてきた豊島産廃事件。発端となった昭和50年の産廃処分場建設許可申請から、令和5年の産廃処理事業終了までの経緯を学んだ。
現地で土砂採取業者の処分場建設申請に対し、住民は反対運動を行ったが、3年後、ミミズ養殖を名目に県が建設を許可した。しかし業者は、昭和55年頃から自動車破砕くず(シュレッダーダスト)や製紙汚泥など大量の有害産廃を運び込み野焼きした。業者への恐怖心から香川県職員は黙認状態になったとされている。
平成2年、廃棄物処理法違反で兵庫県警が業者を摘発したが膨大な廃棄物は放置され、「ごみの島」とも呼ばれるように。香川県は「当時の認定に誤りはなかった」として一部の廃棄物を処理した程度で「安全宣言」を出した。
5年11月、住民は故中坊公平弁護士らの協力を得て、業者と県などに対し廃棄物の完全撤去を求める公害調停を申請。6年半後に住民と県との調停が成立した。
廃棄物は隣の直島に中間処理施設を設けて融解、無害化して工事資材などに再利用されることに。この処理はごみのリサイクルを進め循環型社会を目指すようになる契機の一つとされる。
令和2年までに廃棄物や汚染土壌など約91万3000トンを島外に搬出。産廃特別措置法に伴う国の財政支援が終わる5年3月、県の事業は終了した。
岩盤むきだしの不法投棄跡地
瀬戸内オリーブ基金は調停成立の4カ月後、中坊弁護士と建築家の安藤忠雄氏が提唱して設立。島内へのオリーブ植樹をはじめ環境保全を目指す。
環境学習で生徒たちは2班に分かれ、資料館や不法投棄跡地を視察。廃棄物対策豊島住民会議が協力し安岐正三事務局長と石井亨さんが説明役を務めた。
また、資料館では特殊加工した実際の産廃の断面や事件年表などの展示を見学。調停申請した島民549人の名簿などから住民の闘いの長い歴史に思いをはせた。
28・5ヘクタールの不法投棄跡地は斜面が削り取られ、岩盤はむき出し。地下水は排出基準をクリアし、県の処理事業で海岸沿いに打ち込まれていた遮水壁の鋼矢板が撤去され、整地されて調整池が数カ所設置されている。
安岐事務局長は、汚染地下水が環境基準(人が飲める水)を達成すれば土地が県から住民に引き渡されることや、産廃が積み上げられていた高さなどを説明。「ここは瀬戸内海国立公園に属する美しい場所だった。自然が元に戻るにはこれから100年単位の長い時間がかかるとみられている」と述べた。
次世代への継承が課題
参加した櫛田采花(ことは)さんは「岩や土、砂がえぐり取られた跡があり何十年たっても元に戻らないのは恐ろしい」、長谷川蒼岳(そうた)さんは「こんなに大きな規模で不法投棄をしていたとは。自分が住民だったらあきらめてしまうかもしれない」。また、笹本漣(れん)さんは「元の豊島を取り戻したいという住民一人一人の思いが強かったことが伝わってきた。身近なことから自然を守る行動を取りたい」と感想を述べた。
安岐事務局長は「伝聞ではなく実際に現場に来て当事者から話を聞いて五感で感じて自分の考えを持つことが重要。高齢化と過疎化が進む瀬戸内海の小島で、われわれがやってきたことや思いが少しでも理解してもらえれば」。基金事務局の清水さんは「豊かなふるさとを次の世代に残すのが活動の目的であり、その世代が豊島事件を知っただけで十分に意義がある」と強調した。
基金では事件を風化させず同様の事件を再び起こさせないために「ゆたかなふるさと100年プロジェクト」を進めており、子供たちを対象にした環境学習を継続していく方針で希望者を募っている。7月には米国大学生の研修プログラムを受け入れる予定だ。(和田基宏)
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