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SNSで注目の葉っぱ切り絵作家・リトさん 発達障害の特性「過集中」で繊細な物語紡ぐ

産経ニュース / 2024年9月30日 11時0分

テントウムシの模様をまねて、バス停に一緒に並ぶカメレオン=葉っぱ切り絵作家、リトさんの著書「葉っぱ切り絵いきものずかん」(講談社)から

枝から下りられなくなった子猫を鼻を伸ばして助けるゾウ、テントウムシの模様をまねるカメレオン―。葉っぱ切り絵作家のリトさんは、小さな葉の中に絵本のような物語を生み出す。発達障害の特性である「過集中」を生かしたいと始めた創作活動。知識も技術もない状態から、地道な努力を積み重ねてきたが、4年前に始めたSNSへの投稿で注目を集め、6月には作品を常設展示する「リト リーフアート ミュージアム 福島」(福島市)ができるなど、勢いに乗る。

大学を卒業し、大手外食チェーンに就職したがうまくいかなかった。好きな業務に没頭して必要以上に時間をかけ、他の業務では集中力を欠いては怒られた。約7年で退職し、2年ほど後に発達障害の一つ「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」と診断された。既に2度転職し、「また別の会社に行っても同じだろうな」と5年前、会社勤め自体をやめた。

子供の頃から細かい絵を描くことが好きだった。美術を学んだことはないが、大きな紙に幾何学模様のようなイラストをびっしり描いてSNSに投稿すると、いつもより反応があった。好きなことに発揮する高い集中力を生かし、「何かを作って表現することが、仕事につながるかも」と調べて出合ったのが、スペインの作家による葉っぱの切り絵だった。

シカが森の中で草をはんでいた。「なんてすてきなんだ」。憧れの思いで作り始め、毎日欠かさず作品を投稿した。「技術も何もないところからの挑戦。時間の全てを使うしかない」

「楽しんでもらえるものを」

初めの頃は生き物をリアルに描くなど、緻密さを追求したが、反応はいま一つ。「細かく切る腕を見せるだけではだめだ」。仕事として成立させるため、どんな作品が求められているかを模索し続けた。

投稿を始めて8カ月たった令和2年夏、「葉っぱのアクアリウム」と題した作品が大反響を呼んだ。ジンベエザメのいる水槽と、それを眺める人たちを描いたものだ。一気に注目を集め、福岡市のデパートで展示販売会が開かれた。

SNS上の存在だったファンの姿を初めて目の当たりにし、「続けてきて良かった。続けていかないとだめだ」と思えた。収入も得て、創作への向き合い方も変わった。「売れるためだけでなく、楽しんでもらえるものを作ろう」。くすりと笑えたり、ほっこりしたり、動物たちが繰り広げる絵本のような作品が次々と生まれていった。

子供の頃に好きだったのは、絵本ではなく図鑑。魚の図鑑で平仮名を覚えたほどで、「どうして今、こんなかわいい世界にいるんだろう」と笑うが、作品から感じる生き物への優しさは、幼い頃から育んできた感性なのだろう。

「世界を呼ぶ」

出版やメディア出演などの仕事が増えた今も、できる限り投稿は続けている。アイデアを考え、下絵を描き、作品によっては6時間ほどかけて切り出す。「今日も友達は朝から晩まで会社で働いていると思ったら、そんな簡単には休めない」と、自分に厳しい。

作品展も励みになるが、日々のご褒美は、すぐに返ってくるSNSの反応。国外からの書き込みもあり、葉が枯れないよう加工する方法を教えてくれた。

海外のファンにも実物を見てほしい。そのために世界に出ていくのではなく、「世界を呼ぶ」と言う。「福島の美術館を、海外の人が行きたいと思える場所にする」。これからもSNSで、葉っぱ切り絵の魅力を発信していく。(藤井沙織)

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