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認知症が原因の行方不明が増加の一途 介護殺人、「衰え」狙い犯罪も「社会全体で対応を」

産経ニュース / 2024年6月16日 10時0分

認知症が原因とみられる行方不明者が増加の一途を辿っている。警察庁によると、令和4年中の行方不明者届受理件数は1万8709件に上った。いわゆる「介護殺人」や、高齢者の判断能力の低下につけ込む卑劣な犯罪も後を絶たない。超高齢化社会を迎える中、「警察力」だけではない社会全体の対応が不可欠な現状が浮き彫りになっている。

10年間で8割増加

警察庁がまとめた「行方不明者届受理時に届出人から、認知症または認知症の疑いにより行方不明になったと申し出のあった人」の件数は、平成25年は1万322人だったが、年々増加。28年に1万5千人を突破すると令和に入ってからは1万7千~1万8千人台に達するなど、10年間で8割あまり増えた。

認知症・認知症疑いの人の行方不明者全体に占める割合も、平成25年は12・3%だったが、令和4年は22・0%に。4年中の行方不明者のうち70代の64・6%、80代の77・6%を、認知症・認知症疑いの人が占めていた。

警察当局は「発見活動の推進」を重点的な対策として掲げており、4年は認知症・認知症疑いによる行方不明者の96・6%(1万7923人)が発見・保護された。このうち、行方不明者届の受理当日に所在確認されたのは77・5%(1万3893人)、翌日~1週間は22・0%(3950人)と、ほとんどが早期に居所が判明している。

1人暮らしの迷子

ただ、厚生労働省が今年5月に公表した推計では、団塊ジュニアの世代が65歳以上になる22年には、認知症の高齢者は584万人余に上るとされる。これは高齢者全体の15%に当たる数字だ。

また厚労省のデータによれば、4年の高齢者世帯16931万世帯のうち、単独世帯が873万世帯と、約半数を占める。同省の研究機関「国立社会保障・人口問題研究所」が今年4月に公表した予想値によると、32年には全世帯5261万世帯の44・3%に相当する2330万世帯が1人暮らしとなり、うち高齢者が半数近くとなる見込みだ。

警察幹部は「事態は年々深刻化している」と警戒感を強める。

高まるリスク

認知症の高齢者による1人暮らしには、さまざまなリスクが伴う。医療関係者によると、本人が気づかないまま症状が進行した場合、外出時の迷子や事故▽自宅の火災▽服薬ミス▽金銭トラブル-などの恐れが高まるとしている。

前出の警察幹部は「高齢者の1人暮らしに伴うリスクを考慮すれば、認知症の行方不明者対策には家族の存在が不可欠だ」と語るが、確実に進行する高齢化は、家族の介護疲れによる痛ましい事件も生んでいる。

昨年1月、松山地裁で行われた裁判員裁判では、自宅に火をつけて同居中だった92歳の母親を焼死させたとして、現住建造物等放火と殺人の罪に問われた50代の男(当時)に、懲役6年の判決が言い渡された。

事件は3年6月、愛媛県今治市で発生。現住建造物放火罪と殺人罪の罰則は、いずれも「死刑または無期、もしくは5年以上の懲役」の重大犯罪だが、寝たきりの母を介護してきたという被告の男は、精神障害による被害妄想や判断能力の低下があったとされた。

高齢者が犯罪集団の標的にされるケースもある。今月には、認知症の高齢者ばかりを狙って相場よりはるかに高い価格でアパートを売りつけていた4人組が、準詐欺容疑で警視庁に逮捕された。

別の警察幹部は「増え続ける認知症高齢者への対応は、われわれ警察を含め、国民全体で取り組まねばならない段階にきているのではないか」と話した。

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