ノラ猫さんの腕に2本の釘!? 動物虐待は人間社会の病理、証拠保全で刑事告発・逮捕も ねこから目線。の現場から
産経ニュース / 2024年8月24日 12時0分
ある日、不穏な電話がありました。「餌やりをして見守っているノラ猫さんの腕に、釘のようなものが刺さっていました。抜いてあげたんですが、それから近寄ってくれなくなってしまいました。もう1本刺さってるようなので抜いてあげたいんですが捕まらなくて…」という内容でした。
猫の腕(前脚)に釘が刺さっている、しかも2本。とても嫌な予感がします。「捕獲に伺いますので、もう1本は絶対抜かずにお待ちください」と伝え、急いで現場に向かいました。途中、相談者さんが抜いた釘の写真を送ってくれました。
悪い予感は的中。釘の周りには厚紙が巻かれ、どう見ても人工的に作られた形状でした。誰かが悪意をもって猫に打ち込んだ可能性が極めて高いです。すぐに現場の所轄警察署に電話し、動物虐待の被害にあった可能性の高い猫がいること、捕獲はこちらで対応するので、刺さっている状態を確認してほしいとお願いしました。
動物虐待は立派な犯罪ですが、良かれと思って釘を抜いてあげると、証拠がないとして事件として捜査してもらえなくなる可能性があります。現場に到着すると猫さんはいなくなっており、警察は引き揚げた後でした。ここからは「ねこから目線。」の仕事です。
相談者さんはいつも朝6時にご飯をあげているとのこと。トラップを朝5時に設置して私は隠れ、相談者さんにはいつもの時間に来て、トラップへ誘導していただく作戦を取りました。猫さんがトラップの中の安全な位置まで入ったことを確認し、作動させて保護完了。そのまま動物病院へ連れていきました。
左前脚にはかなり深めに釘のようなものが刺さっており、摘出と洗浄、消毒などの治療をしてもらいます。一連の様子は証拠として警察に提出するため、動画撮影します。動物病院の先生に診断書も作成してもらいました。
急いで警察に証拠品として提出しに行く旨を伝えましたが、どの程度本腰を入れて捜査しようとしているか読めないような反応でした。以前にも、別の警察署で明らかな動物虐待なのにろくに捜査してもらえなかった苦い経験があります。
そこで証拠品や診断書をまとめ、NPO法人「どうぶつ弁護団」(兵庫県伊丹市)に情報提供しました。弁護士さんや獣医さんで構成され、動物虐待などの情報提供から証拠十分と判断すれば、通報者には費用請求せず刑事告発などの対応をしてくださる団体です。すぐに「緊急性があり、証拠品も猫さんも全てそろっているので、告発状を作成し提出します」と連絡がありました。警察もすぐに動いてくれ、釘の形状から以前に自作銃を製作して逮捕された人物が事件発覚から1週間で逮捕されました。
虐待被害に遭った猫さんは警戒心が強くなっているため捕獲自体が難しいうえ、捕獲できても犯人逮捕に至るのは難しいです。今回は多くの方の連携で犯人逮捕に至った貴重なケースでした。被害猫さんは相談者さんがペット可物件に引っ越してまでおうちに迎えてくださいました。
動物は人の悪意を向けられやすい存在です。凄惨な事件を起こした犯人が、過去に動物虐待を繰り返していたことが発覚することは珍しくありません。動物への暴力と人への暴力がリンクしていることは多くの研究で言及されてきました。
動物が安心して暮らせる社会を作ることは、すなわち人が安心して暮らせる社会を作ることにつながる。そう信じて、日々活動しています。
来月20~26日は動物愛護週間で、来月は動物愛護のイベントが各地で開催されます。8日にはどうぶつ弁護団が「動物虐待について真剣に考える市民シンポジウム」を神戸市で開催予定で、私も参加しようと思っています。ぜひ、お住まいの地域で開催されるイベントを調べてみてください。そして可能なら足を運んでいただけるとうれしいです。
◇
大阪を拠点に、猫にメリットがあると思えることなら何でもお手伝いする「猫の便利屋さん」を営む小池英梨子さん。ネコの目線で取り組む活動から見えるあれこれを、月1回つづってもらいます。
小池英梨子
立命館大学大学院応用人間科学研究科対人援助学領域修了。「ねこから目線株式会社」(大阪市)代表、「人もねこも一緒に支援プロジェクト」(NPO法人)代表。平成16年から猫の保護譲渡やTNR活動をスタート。大学院でノラ猫をテーマに「共生と共存社会のリアリティ」について研究し、29年に猫の多頭飼育崩壊など、ヒトの福祉と猫問題への並行支援が必要なケースに対応するため「人もねこも一緒に支援プロジェクト」を立ち上げる。30年に保護猫・ノラ猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」を設立。京都、福岡、沖縄にも拠点を置き、ライスワークもライフワークも猫にまみれている。
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