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健康寿命をのばす秘訣は死に至る病を避けること、全盲になった医師が「食事と運動」を語る

産経ニュース / 2024年9月16日 10時0分

健康長寿に必要な「食事と運動」について語る全盲の医師、鈴木彰さん(石毛紀行撮影)

長野県上田市の丸子中央病院に勤務する全盲の医師が、自身の経験と学びから栄養管理と運動の大切さを患者や高齢者に伝える仕事を担っている。同院の栄養サポート室室長で、通所リハビリテーション(デイケア)の副施設長も務める内科医の鈴木彰さん(54)だ。健康で長生きするために必要なことは何か、聞いた。

自身も寝たきり経験

鈴木さんは学生だった20歳のときに腎臓病を患い、持病として付き合いながら医師免許を取得。信州大学病院に消化器外科医として勤務した。しかし、40代後半で心の病を発症したのをきっかけに腎臓病が悪化。両目とも失明し、週3回の血液透析に頼らねばならない体になった。

その後、重度の起立性低血圧になり、立つと意識を失って転倒するということを繰り返し、多発骨盤骨折のほか、肋骨(ろっこつ)や胸骨を十数カ所骨折。寝たきりになり、半年間の入院とリハビリを経験した。仕事も辞めざるをえなかった。「まさか自分がこんなことになるとは思っていなかった」と振り返る。

リハビリの末、なんとか体が動かせるようになった令和5年4月、大学病院や学会で縁のあった先輩医師のいた丸子中央病院に内科医として再就職。消化器外科医時代に、食道がん予防や手術後の患者が寝たきりにならないためにと学んでいた栄養管理と筋肉・筋力をつける運動の知識を生かすことになった。主な仕事は入院患者や訪問診療、デイケアで診る患者を、栄養面とリハビリでサポートしていくことだ。

歩くだけで健康に効果

長野県は要介護度をもとに算出される「健康寿命」が全国1位の県だ。国民健康保険中央会が今夏に公表した最新(令和4年値)の都道府県別平均自立期間で、長野県の女性は84・9年で7年連続1位、男性は81・0年で2年連続の1位だった。それでも食生活を中心に改善の余地はあるとして、県全体で「世界一」を目指す健康づくり県民運動に取り組んでいる。

東京都出身の鈴木さんも、長野県内の高齢者は〝若い〟と感じている。若さの秘訣(ひけつ)は「畑仕事だと思う。90代、80代の人でも『そろそろ息子に畑仕事を教えないと』という話をするほど、働き者が多い。何より、長生きが楽しい、長生きしたいという〝欲〟を持っている」とみている。

歩くだけでも、状況の変化や路面確認に頭を使うので、健康には効果があるという。そのうえ筋力や知識を使う畑仕事をするとなればなおさらだ。

ただ栄養面では「長野県の人はすごい量の漬物を食べるので、塩分は取り過ぎている」と指摘する。塩分の取りすぎは脳血管疾患のリスクを高める。

丸子中央病院では、調味料を減らして素材のおいしさ生かす病院食の提供や、レシピを広める取り組みなどを行っている。

人の縁に感謝

失明したことで、患者の状態を自分の目で見て診断することはできなくなった。「めちゃめちゃ不便」(鈴木さん)だが、看護師である妻や同僚らが、患者の状態をみて詳細に説明してくれることで、医師領域の仕事ができる。

「自分自身寝たきりになって栄養管理の対象となり、リハビリ(運動)の大変さも身に染みた。だからこそ患者さんに近い位置で耳を傾けられるようになった。人の縁、つながりに感謝できるようになった」

9月21日には「健康寿命を伸ばすには?」と題した同病院主催の市民公開講座に講師として立つ。「長生きの秘訣は、死に至る病を避ける『食事と運動』。食べることが生きる喜びになるよう、伝えたい」という。(石毛紀行)

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