「おなかにやさしい」が売り 高付加価値のA2牛乳 取り扱い店舗急増 需要拡大に期待
産経ニュース / 2024年12月15日 11時0分
飲んでもおなかがゴロゴロしない「A2牛乳」が注目されている。一般的な牛乳と比べて価格は高めだが、おなかが緩むので敬遠していたという人らから「飲めるようになった」と喜びの声が上がっている。北海道富良野市に事務局を置く日本A2ミルク協会の藤井雄一郎代表理事(46)は「輸入飼料価格の高騰や消費低迷など経営が厳しい酪農分野で新たな高付加価値商品となる可能性がある」と期待を寄せる。
商品化まで10年
初冬を迎えた北海道富良野市。山あいの道を車で進むとチーズ工房などを併設した藤井牧場が見えてきた。120年前の明治37(1904)年、北海道開拓の初めに入植した歴史を持ち、現在は約2000頭の乳牛を飼養する巨大牧場だ。その事務所内に日本A2ミルク協会の事務局がある。
協会代表理事を務める藤井さんがA2牛乳の存在を知ったのは平成21年ごろ。知人から「ニュージーランドで新しい牛乳が売れているらしい」と聞き、それがA2牛乳だった。欧米などではすでに高付加価値化された牛乳として認知されていたといい、「強い関心があり、勉強を始めた」と振り返る。
藤井さんによると、牛乳に含まれるタンパク質のひとつのベータカゼインには「A1型」と「A2型」の2種類がある。A1型の遺伝子を持つ牛からはA1型の牛乳、同様にA2型の牛からはA2型の牛乳が生産される。A2型のベータカゼインはおなかが緩む原因物質の一つと考えられる「BCM7」をほとんど生成しない特徴があるといい、「今まで飲めなかった人がA2牛乳なら飲めるようになったり、胃腸症状が緩和されたりするケースがある」という。
店頭などで見かける牛乳はほぼA1型とA2型が混合している。生産段階で牛をA1型とA2型に分けていないことや、牧場から出荷された牛乳が乳業メーカーの巨大タンクに混ざった状態で集められて製品化されることが背景にあるからだ。
A2牛乳に着目した藤井さんだが、商品化するまでには約10年かかっている。当時飼養していた牛は約600頭でこのうちA2型は3割。「子牛から大切に育て、牛乳を生産できるようになるまでには数年かかる。そのサイクルの中で1頭ずつ検査をしてA2型の遺伝子を持つ牛を人工授精で増やした。完全移行するにはそれだけの時間が必要だった」という。
飲めなかった層に照準
A2牛乳づくりは生産段階だけでは終わらない。集乳や製品化までの工程は一般的にはすべてA1型とA2型が混合された状態で行われており、A2牛乳だけを扱う新たなルートをつくるのはハードルが高いという現実がある。
現時点では独自の流通・製造ルートが必要。藤井さんの場合、ミルクローリーで北陸の乳業メーカーに輸送し、パック詰めをしてもらった後、全国各地の量販店などに出荷している。北海道でも取引しているスーパーなどがあるものの、いったんは道外に輸送せざるを得ない状況だ。
業界は今、人口減少などで牛乳消費が低迷。円安やロシアのウクライナ侵略の影響で配合飼料価格が高止まりしていて牧場経営はかつてないほど厳しい。その渦中にあって、藤井さんは「飲用牛乳の市場は売上高ベースで年間約10億円といわれる。A2牛乳で〝牛乳が飲めない〟層を掘り起こすことができれば新たな需要となり、高付加価値化による消費拡大が期待できるし、酪農経営の改善にもつながる」と話す。
推定1000牧場が取り組み
藤井さんは令和2年に協会を立ち上げて代表理事に就任。A2牛乳の生産に取り組んでいる牧場は全国で推定100カ所に上り、日本A2ミルク協会には約20牧場が加盟しているが、このうち生産、輸送、加工まで一貫した高い水準を確保したと協会が認める認証牧場はまだ藤井牧場など2牧場にとどまる。認証牧場以外のところでA2牛乳として販売している多くは、牧場に自ら加工場、レストランを併設しているケースとみられる。
認証牧場による「日本A2牛乳」は今年3月に販売開始し、取り扱い店舗は1年足らずで全国1200店に増えた。1リットル1本あたりの希望小売価格は税抜き360円とやや高めだが、消費者の関心を追い風に納品依頼は増えているという。
藤井さんは「関心を持ってもらえるのは本当にうれしい」と喜びを語る一方、供給や物流体制などの課題を挙げて「一過性の人気ではなく、地道に売れ行きが伸びる存在になってほしい」と話している。
(坂本隆浩)
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